驚愕の城大工 56
腰を抜かしそうになるグスタフと、唖然としたまま固まる大工や騎士達。それを横目に、魔導操兵を使って木を邪魔にならないところまで運んでおく。
「よし! それじゃあ、スキルを使った方向へ木が倒れそうだから、どこを道にするか決めてからやろうかな? 小川の方は逆に道を作り難いから、それを避けていく? それとも、途中で橋を架けてみる?」
アーベルに意見を求めると、斧を地面に置き、腕を組んで唸った。
「ふむ……いや、難しいことは分からん。ラーシュの指示に従おう」
「りょ」
軽く返事をして、グスタフに向き直る。
「と、いうことで、森から最短で村まで来れる道を作るね」
そう告げると、グスタフ達は動かないまま目を瞬かせたのだった。
それから一週間。僕たちは有言実行の為に頑張った。もう、古代エジプトでピラミッドを作る奴隷のような気持ちで働いた。
ちなみに、グスタフの護衛をする騎士達もいたので、魔獣からの防衛は全て任せることができた。助かる。
歩きやすい平坦な道になるように注意しながら、木々を道の外側へ切り倒し、段差や小さな崖などは魔術師の手によって整地される。
さらに、盗賊の穴掘り、僕の魔導操兵で多少の障害物も除去できた。後は、弓使いや聖職者、商人によって細部が整えられていく。
急拵えの為、なんとか馬車で通行できるかどうかといった感じだが、道は完成した。最後の仕上げとして、森を抜ける際にあった登り坂を魔導操兵によって岩を並べていき、仕上げに魔術師が土の魔術で壁を作り、それを皆で均してなだらかな傾斜に変える。
遠目から見ると森にポッカリと穴が開いたように見えるが、近づけば森の中に幅二メートル半ほどの道が続いていると分かるだろう。
浅い谷のような状態だったので、その部分だけ壁ができたようになってしまった。魔獣が壊さないことを祈るばかりである。
「……よし。とりあえず、こんな感じで村まで来れるかな? どうだろう?」
そう言って振り返ると、一週間作業を手伝ってくれたグスタフ達が呆れたような顔で笑った。
「どうもこうもないわい。これなら村も自分達でどうにかできるんじゃないかのう?」
「いやいや、簡単な土木工事はともかく、皆の家や城壁とかは無理だと思うよ」
「そうかの? まぁ、ワシらにも仕事があるなら良いわい」
グスタフが眉を八の字にしてそう口にし、森から出て周囲を見た。
「……ここまできたら、せっかくだから村でゆっくりしたいのう。一泊しても良いかの?」
「あ、それは良いね。皆で食事して買い物しようか。でも、村に残った二十人が心配だし、一泊はグスタフさん達だけかな?」
答えつつ、アーベルに確認するような視線を向けると、首肯が返ってきた。
「そうだな」
その返事を聞き、グスタフ達に改めて返事をする。
「それじゃあ、村で一泊したらまた来てね? 絶対だからね?」
「おぉ、分かったぞい。しかし、これなら村で働ける者を集めても良いのう。それに、今後は村まで行商人が行き来できるようになるぞい」
「あ、それも良いね! そうしたら一気に村が発展して……」
そこまで呟き、ふと重要なことに気が付く。
「あ! 村までの道を作っちゃったら、僕を狙う暗殺者とか来たら大変なことに……」
そう口にして、暗殺者百人が堂々と村まで歩いてくるシーンを想像し、足を震わせる。想像の中でだが、暗殺者達は森の中にできた道を鼻歌交じりに進み、こんな道を作るなんて馬鹿だな、みたいなことを言って笑っていた。なんだと、馬鹿者め。馬鹿と言う奴が馬鹿なのだ。
自分で想像した暗殺者達を心の中で罵りつつ、森の中に続く道を見て唸る。
これはまずい。とっても歩きやすい。森は天然の防壁になっていたというのに、自らそれを除去してしまったぞ。
そんなことを思っていると、グスタフが笑い声をあげる。
「おお、ようやく子供らしいところが見れたようじゃのう。安心して良いぞい。今後はお主らの村が襲われる可能性は少ないじゃろう」
「え?」
その言葉に驚いて振り返ると、グスタフは髭を撫でながら笑っていた。
「リネア様の取り計らいで、お主らの村がハーベイ王国から狙われる可能性はほぼ無くなったんじゃ。良かったのう」
「……つまり、テオドーラ王国が保護を約束したってこと?」
「まぁ、そんなところじゃと思うぞい。わしも詳しくは知らんのじゃ」
と、グスタフはあっさりと僕の不安を消し去った。どうやら、もうリネアはハーベイ王国に話をつけてくれたらしい。凄い行動力だ。まぁ、それくらいでなければ少数で森を彷徨うようなこともないか。
「これは、反対にこっちが恩返ししなくちゃいけなくなるかもね」
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