村改造計画 53
ラーシュ君暗殺未遂事件から三ヶ月。なんと、全員の武器が揃った。レベリングとスキル習得についても順調で、今では五人編成であれば戦術を意識して戦うこともできるようになっている。
特に成長したのは、なんと元々強かったアーベルとミケル、ロルフの三強だ。アーベルは攻防ともにスキルで強化され、ミケルとロルフはそれぞれに向いたスキル構成で、より特化した強さに変わった。
他のメンバーも大きく成長している。特に、武器が揃っていなかった弓使いの人達は武器も強化された為、狩りに行くのを楽しみにしているくらいだ。盗賊や魔術師も戦闘に適したスキルを覚えたので、順調に成長し始めた。
残りは聖職者と商人だが、こちらは少しずつ強くなっている。仕方ないよね。魔獣にとどめを刺すのが難しいから。
「ラーシュ! 中型の魔獣も楽勝だったぞ!」
「貫通矢は強いな。しかし、鉄の矢が折れてしまった」
ミケルとロルフが魔獣討伐をして帰ってきた。他の魔獣が寄ってこないように、川の近くで切り分けて素材を持って帰るという流れにしたのだが、二人は仲間と一緒に持ちきれないくらいの素材を持って帰っていた。
さらにその後、アーベルが仲間と一緒に別の中型魔獣を討伐したと報告してくる。なんと、防御スキルの練習の為に、魔獣の攻撃を一人で防ぎ続けたらしい。
これなら村にドラゴンが攻めてきても撃退だけなら問題なく可能だ。
そう判断し、村の設備を整えられないかと考えるようになった。
「アーベルさん。村に川の水を引けないかな?」
「川の水か……まぁ、できるだろうが、かなり時間がかかるぞ?」
「え? 多分、土の魔術とか、盗賊のスキルとか、あと戦士のスキルでも簡単にできると思うけど……」
「なに?」
僕の言葉を聞き、驚くアーベル。知らなかったのなら仕方がない。教えてやろうではないか。
「さぁ、始まりました! 各職業適性のスキル応用講座!」
村の端っこで生徒に向き直り、笑顔で講座の開始を宣言する。
「おお」
「また変なことを始めたぞ」
「なんだ、なんだ」
すると、何かイベントがあるのかと暇な人たちが集まり始めた。揃って尻尾を左右に振っている辺り、好奇心だけで遊びにきているに違いない。
「何をするんだ?」
ついでに狩りから帰ってきたミケルとロルフまで寄ってきた。気が付けば、周りには二十人くらい集まっている。まぁ、せっかくだから皆にも教育をしておこうか。
「えー、今後はアーベル村長の意向により、村を強化していこうと思います」
「俺は何も……」
「お静かに」
何か言おうとする生徒を黙らせ、授業を続けた。
「まず、重要なのは水です。水を飲まないと何日で死ぬでしょうか?」
「い、一ヶ月?」
「いえ、最短三日です」
即興クイズを出して回答を伝えると、住民は驚きの声を上げた。
「み、三日!?」
「本当か?」
「ラーシュが言ってるから、本当じゃないか」
良いリアクションである。この村の特産物はリアクションといって宣伝したいくらいだ。
「さて、そんなこんなで水路を作ろうと思いますが、ここで各スキルの応用についてお教えしましょう!」
「おお!」
「おうようってなんだ」
「すごいスキルだよ」
ざわざわと騒がしい皆を放置して、アーベルに声を掛ける。
「それじゃ、この前購入した大きな斧をアーベルさんに持ってもらいます。はい、どうぞ」
「お、おお」
戸惑いつつ、アーベルは人の胴体ほどの刃を持つ斧を片手で持った。どんな筋力やねん。
「……おほん。それでは、アーベルさん。その斧を持った状態で地面に向かって三段斬りをお願いします」
「三段斬り。分かった」
そう口にして、アーベルは斧を構えた。軽く呼吸を整え、覚えたばかりの三段斬りを発動する。
「三段斬り!」
スキル名を口にしたと思った瞬間、アーベルの斧は地面に向かってほぼ同時に三連続の斬撃を放った。手に持っているのは見るからに重量級の代物の為、その迫力はもの凄い。
斧は鋭く最短、最適な動作を選択し、地面に大きな穴を開けた。周囲に斬り飛ばされた土は飛んでしまったが、効果としては十分である。
「おお!」
「すごい技だ!」
「流石は村長!」
アーベルのスキルを見て、やんややんやとお褒めの言葉が聞こえてきた。しかし、今は見てほしいのはそこではない。この穴である。
「はい! 注目! 今見たように、スキルの使い方次第では別のことに応用することができます! ちなみに、応用というのは自分が持っている知識を他のことで使うこととかだったりします。分かりましたか?」
「ほほう」
「勉強になった」
「なるほどー」
まるで学校の先生になったような気持ちになりながら、皆にスキルの応用について教える。これで村を手早く改造できるぞ。うむ、ちょっと楽しい。




