【序章】異世界での戦い2
今作はお気楽領主のヴァン君がバリバリ戦える版の主人公です・:*+.\(( °ω° ))/.:+
ただ、制限が多くあるので、無双感は少し物足りなかったら申し訳ありません_:(´ཀ`」 ∠):
「ラーシュ様……? き、危険です! お下がりください!」
慌ててラーシュの手を取って後ろに退こうとするイリーニャ。それに苦笑しつつ、ラーシュは片手を挙げて制した。
「ありがとう、イリーニャ。でも、僕はもう事実上伯爵家から追放された身なんだ。だから、僕よりも自分の身を最優先にして良いんだよ」
その言葉に、イリーニャは手を放すことなく首を左右に振った。目の端から涙が零れ落ちる。
「そんなこと言わないでください! ミケルとロルフが時間を稼いでくれています! ラーシュ様まで犠牲になる必要はありません!」
イリーニャは悲鳴にも近い声でラーシュを必死に引き留めた。それに、地竜の攻撃を避け続けているロルフが文句を言う。
「俺たちだって生き残るつもりだぞ!」
「まごまごしてないでさっさと逃げろ! ラーシュがきたところで状況は変わらない!」
ロルフに続き、ミケルも怒鳴るようにそう口にした。確かに、圧倒的な地竜という脅威を前にして、小さな少年は頼りなく見えるだろう。
だが、ラーシュは真剣な顔でドラゴンを睨み、口を開いた。
「……大丈夫だよ、イリーニャ。僕を信じてくれないのかな?」
眉根を下げ、困ったような表情を作って笑い、ラーシュが振り返る。すると、イリーニャは涙目のまま固まった。その後、ようやく手を放す。
「い、いえ、私は……ラーシュ様を信じております」
不安そうながらも、イリーニャは信じると口にした。それに、ラーシュは年齢に見合った笑顔を浮かべて頷き返す。
そして、意を決した表情をして地竜の方向へ振り返り、地を蹴って走り出した。
「ミケル! ロルフ! 一度離れて!」
ラーシュが大きな声で叫んだ。その言葉に反射的に従い、ミケルとロルフは左右に大きく跳躍して地竜から距離を取る。そして、走ってくる小さな少年の姿を見て、揃って目を見開いた。
「な……!?」
「ラーシュ! お前が何を……」
驚愕する二人の声には答えず、少年はドラゴンの正面に立ち、口を開く。
「……魔導操兵、創造!」
ラーシュがそう口にした瞬間、地面に青白い光が走った。青白い光は巨大な魔法陣を描き、僅かに大地が揺れる。
地竜も何かが起きていることを察し、動きを止めた。警戒するように姿勢を低くして臨戦態勢を整えている。対して、青白い光で描かれた魔法陣からは巨大な人影が出現する。フルプレートアーマーにも似た姿だが、僅かな隙間からは青白い光が漏れている。鎧や四肢には文字が彫り込まれており、それがただの鎧ではないと分かった。
大きさは地竜の体高にも迫る約四メートルの巨体であり、地竜と相対する形で向かい合う。
「な、なんだ!?」
「これは、いったい……」
ミケルとロルフが驚く声が響く中、巨大な鎧兵は重量感のある動きで足を踏み出した。地竜が唸りながら後ろ脚に力を込め、臨戦態勢を整える。
「操兵!」
ラーシュが指示らしき言葉を口にした瞬間、魔導操兵と呼ばれた鎧兵は更に地竜に向けて動き出す。その動きに反応し、地竜が口を開いた。耳を劈くような地竜の咆哮と同時に、驚くような速度での突進。全長十メートルを超える巨体が、大きな口を広げて迫る。無数の牙が鋭く光り、魔導操兵をかみ砕こうと襲い掛かった。
その口目掛けて、魔導操兵が腕を振る。激しい衝撃と轟音が鳴り響き、地竜の方が顔を跳ね上げてよろめいた。体積は地竜が上でも重量では負けていないようだ。
怯んだ隙を見逃さず、魔導操兵は腕を二度三度と振り、轟音を鳴り響かせて地竜の頭、首を連続で殴りつける。地竜も反撃はするが、突進ほどの破壊力がない限り魔導操兵を後退させることはできない。
地竜は苦し紛れに前脚を振って爪による攻撃を行い、そのままの勢いで半回転して尾の中ほどを魔導操兵に向けて振る。その動きは信じられない速度であり、重量も相まって尋常ではない破壊力であると推測できる。魔導操兵も爪は腕で防いだが、尾の攻撃は胴体に直撃してしまう。
だが、腰を落として受けの姿勢を作っていた魔導操兵は一メートルほど横にズレただけで耐えてみせた。そして、胴に叩きつけられた尾を両手で掴み、持ち上げる。
「操兵! 投げろ!」
ラーシュが簡単な命令を発すると、魔導操兵は全力で地竜の尾を抱き込み、体を回転させる。尾を掴んだ状態で反対側に転ぶように回転したことで、地竜の体が勢いよく引っ張られる。地竜の巨体が浮かび、勢いよく空中を舞うと、そのまま頭から地面へと叩きつけられた。
大地が地震のように激しく揺れ、衝撃が大気を伝って周囲へ広がる。地竜の質量が大きい分、地竜が受けた衝撃は大きい。頭部に受けた衝撃は地竜を行動不能にするだけの威力があった。
しかし、その地竜の状態を確認する余裕もなく、ラーシュはその場に崩れ落ちた。それを見て、イリーニャがラーシュの名を叫びながら駆けよっていく。