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第30話 それから

「──……ナちゃん、……マナちゃん。大丈夫?」

「……っ!」


 いつもの温かな布団にまどろむこともなく、私は目覚めたのと同時にいきおいよく体を起こす。心臓が早鐘を打っているのが、さわらずとも分かって。

 先ほどまで私の名前を呼んでいた、凛々しい女騎士さんの表情が緩んだのがみえた。


「よかった。マナちゃん、どこまで覚えているかしら。あなた、山頂で気を失って倒れたのよ。……もうあれから三日経ったの」


 その言葉の後ろに見えるのはシンプルだがすっかり馴染みのある、私がお世話になっている騎士団の一室だった。


「サリアさん……。……あの、リュミエルさんは、ドラゴンは、ヒースさんは……」


 覚えていることはたくさんあるし、聞きたいこともいっぱいあった。

 でもそのどれもまともな言葉にならずに空気に溶けていくのが歯がゆい。私の焦りが伝わったのか、サリアさんがことさら優しい顔を浮かべたのが胸をまたさした。


「落ち着いていいのよ。今スープを持ってくるから。……それを飲みながら、順番に起きたことを話すからね」


 そう言ってサリアさんは立ち上がる。

 部屋を出ていく彼女に追いすがることも出来ず、私はただ、布団の上に置かれていた自分の手を強く握りしめることしかできませんでした。



 * * *



 ──さて、どこから話せばいいかしら。

 とはいっても順番に話すのがいいでしょうね。あの後、ヒースは騎士団が身柄を取り押さえたわ。


 ……ごめんなさい、少し乱暴な言い方だったわね。誰もヒースを傷つけていないし、ヒースも誰も傷つけてはいないわ。

 でも、檎母龍(ロゼリアドラゴン)が復活して、そしてリュミエル中隊長をあれだけ傷つけてすぐの状況。その場でヒースがあの、人ではない姿を見せたでしょう。そのまま見逃すということは出来なかったの、ごめんなさい。

 彼、……まさか魔獣の、それも四大魔族だったなんて。リュミエル中隊長が討伐したって言ってたから、誰もがそれを信じていたわ。黎属(れいぞく)を果たして人の世に紛れていたなんて。それも二年間も。


 リュミエル中隊長? 怪我はひどかったけれど本人は自分で治癒できるからって治癒術師を断ったのよ。実際その後の動きもいつもと変わらなかったから。……今はもう業務に戻られているわ。メッドのやつもついているし、最悪のことにはならないはずよ。

 ヒースを、四大魔族の一柱をかくまって騎士団においていたということで国からは色々と言われていたみたいだけれど。ヒース自身が誰も傷つけていないことと、何より中隊長以外の誰が四大魔族を対処できるかと言われたら誰にもできないもの。ソルディアの人たちだったらあるいはだけど、それだって犠牲がないとは言い切れないわ。だから実質おとがめなし。


 残ったドラゴンたちは、あなたたちが書状(スクロール)黎属(れいぞく)をあらかじめしていてくれた子も多かったじゃない? その子たちが上手くとりなしてくれたらしくて、王都の包囲はすぐに解けたの。だから彼らを滅ぼしつくすというのは免れたわ。……ひとまずはね。

 書状をあなたたちに預けて対処を任せた宮廷魔導師は、王都に残って一連の件について対処をしているらしいけど。私はそこについては詳しく知らないのよね。


 話を最初に戻して、ヒースのことね。

 彼は今、少し離れた別の騎士団の監視房に入っているわ。三食見張りつきでね。

 本当は王都の独房に……って話もあったのだけれど、結局何かがあったら対処できるのはリュミエル中隊長だけだから。だからってお膝元においておくわけにもいかないし。ほど近い別の場所にいるの。うちの隊からも交代で見張りを受け持っている人が何人かいるわ。

 そんな必要もないくらい、見てて苦しくなるくらいに大人しかったってガウスは言っていたけれど。



 ……最後にはいろいろあったけれど、それでも被害は最小限に抑えられた。

 それは、間違いなくマナちゃんたちの力よ。あなたとヒースが、あそこで動いてくれなかったら、母龍を失った眷属のドラゴンたちはもっと凶暴化していたでしょう。

 そうしたらさすがに中隊長一人で何かをするのは無理だったはずよ。人もドラゴンも、多くの血が流れていた。


 そうならないですんだのは、あなたたちがすぐに行動をしてくれたおかげなの。

 どうか忘れないで。……私も、ちゃんとは聞いていないけど宮廷魔導師の彼も、感謝しているから。困ったり悩んだり、辛かったりしたときには言ってちょうだい。


 ヒースのやつにも……そう言ってあげたいんだけど。

 うまくいかないものね。本当に。

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