刀身のように細く煌めく三日月の夜
討ち入りの日は月がでていた。
果して・・・三日月だったかはさておき、お話を書いてみました。
刀身のように細く煌めく三日月の夜。
しんしんと雪が舞い散る中、吉良邸の前に立つ赤穂浪士四十七士たち。
次々と白い息が闇夜に浮かんでは消える。
月明かりが積もる雪に照らされ、夜とはいえ、はっきりと皆の表情が見える。
強い決意に満ちた、覚悟を決めた顔々。
大石内蔵助は、凛とした張り詰めた冷たい空気を吸い込むと告げた。
「各々方、決して油断召さるな」
応と頷く一同。
内蔵助は吉良邸の門へ、静かに采配を示した。
「狙うは吉良の首ただひとつ・・・太鼓鳴らせいっ」
ドンドンドン。
ドンドンドン。
澄んだ漆黒の世界に、静穏を打ち破る不協和音が吸い込まれた。
時は今。
我らの悲願を果たす時。
「鬨の声をあげよ」
「うぉーっ!」
皆の魂が震える。
「討ち入りじゃあ!」
解き放たれた志士たちの、怒りと悲願果たす月夜の舞台。
・・・・・・。
・・・・・・。
(すげぇ、臨場感。これが「激!赤穂浪士2023」かっ!)
俺は心の中で、そう呟きメモリーセーブをしてVRゴーグルを外そうとした。
(・・・外れないっ!)
「行け行け行け行けぇい!」
俺は大石の怒号に後押され、仲間たちと共に吉良邸へ猛然と突っ込んでいく。
(・・・なんで)
・・・・・・。
・・・・・・。
(いやいやいや)
(そうだった!)
そう、俺は殿の御無念をはらす赤穂浪士の一人なのだ。
彼の運命や如何に。