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こどものあそび  作者: 水乃戸あみ
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第10話 ケイドロ

「さー……」


 体力お馬鹿の空穂も流石に苦しそうだった。今更気付いたが、密閉されているのもあって、かなり蒸し暑い。Tシャツが汗を吸って気持ちが悪い。ベタベタとまとわり付くTシャツの裾をぱたぱたと仰ぎ、少しでも溜まった熱を逃がそうと試みるが焼石に水。

「現状の確認をするぞ空穂特派員。貴殿は、あれが何だと思うね?」

 息を整えて言った。

「ん~、幽霊?」

 だったら、嬉しいなってのが顔に書いてある。

 私は先程得た着想を、頭の中で整理しながら話すことにした。

「ふむ……幽霊かどうかはさて置くとして……まず、私の見解を伝えよう……であれさー、泥棒なんじゃね? そうは思わない?」

 真面目な話はふざけながら喋れないのだ。

「なんで?」

 空穂はポシェットの持ち手を握りしめ、きょとんと首を傾げてみせた。

「だってさ。この家の持ち主とか関係者だったら、逃げずに、怒るか注意すると思うのよ」

「わたしたちにびっくりしたんじゃないの?」

 それが判ってて追い掛けてたのか。

「それでも私たちが入ったのと同じ場所から入ってきたっぽいのはおかしくない? だって、あのときの私たちって正面玄関のすぐ近くに居たじゃん? 空穂は二階の山側の窓にあの女がいたのを目撃した。位置的に正面玄関の真逆。だとして単純に考えると、すぐ下の、あの開いていた窓から入って来たんだろうね。ぐるっと回って他に開いてる場所が無いのは確認済みだった。要は私たちと同じように、窓から屋敷に侵入したんさ。普通、この家の関係者だったら鍵開けて正々堂々正面から入ってくるでしょ?」

「はあ。そっかあ」

 分かったような分かってないような反応。もどかしくなって続ける。

「もちろん関係者でも論理の穴が無いわけではないよ。例えば、何らかの理由で鍵を紛失していた場合。んでもって、そこの窓だけ開いているのを知っていた場合……ちょっと無理やりだけど……この古さだしね。でも」

 気になるのは、あの背負っていたリュックサックだ。私には、あれが、この屋敷から何かを持ち出すための装備としか思えなかった。

 女が現れた時間帯も気になると言えば気になる。

 夏で陽が長いとはいえども夕方である。こんな山裾にある、電気も通ってないお屋敷。暗くなるのも早いだろうに。物を探すにしても何か作業をするにしても不便だろう。見られたくなくってこの時間を選んだって理由がどうしてもしっくり来てしまう。私の中ではね。

「ん……そういえば、空穂、今何時?」

「えっと。あ、もう五時半だー」

「げ。マジか」

「カラスは勝手に帰りましょう~♪ かあかあ♪」

 とかなんとか歌いながらも(歌詞が色々混ざってる)空穂はしっかりと周囲を伺っている。抜け目ない。まだ諦めてない証拠だ。

 私も……やっぱり、このまま帰るのは何とも気持ちが悪い。どうせならすっきり終わらせたい。言い出しっぺは私だし。それに。

 遊びだけど、遊びじゃないのだよ、こっちは。

「……空穂。何時までいける?」

「七時過ぎまでに帰れば大丈夫かなあ。千真ちゃんは?」

「私もその辺りがギリ。それより後ろにズレるとやばい。電話されそう」

 お母さんたち同士の連絡網。私たち四人のお母さんは同じ団地住まいってことで面識があった。七時はかなりギリギリだ。

 迷惑を掛けるのは極力避けたい。だったら――。

「……いける?」

 多くは語らない。私たちの間だ。長い付き合いだ。それで十分だろう。

 その、邪気のない笑みを見るに全部伝わったようだ。

「制限時間一時間半だね~。面白そう」

「正確には、こっから帰る時間も計算に入れないといけないから、いけて一時間だね。よし、やろう!」

 門限が多少厳しい姫は屋敷から出た。恵美寿ならうまいこと言って先に姫を帰してくれそうだけど、姫も頑固だし、状況も状況だからこっちを心配していつまた戻ってくるとも限らない。実質一時間もないかもしれない。けど。

「ミッションスタートだ。制限時間内にあの泥棒を捕まえるぞ」

 空穂がタブレットのタイマーアプリをセットした。

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