第23話 緑は続くよどこまでも
嵐が過ぎても森林は続く──。
“旧街森林”
ロップたち兄弟と別れてから”三日目”の午前──。
薬師のピピを旅の共に加えたナナたち四人は、元の経路である三十二番街道──代わり映えのしない土道を歩んでいた。
そんな道中──。
「え……!? ルナさんって、17歳だったんですか……!?」
「うぇ……!? それは僕も初耳です……!」
ピピの言葉にチロットも驚きの声を上げ、どこか憶えのあるやり取りにナナが耳を傾ける。
その隣で、ルナが僅かに眉を下げながら呟いた。
「なんか……みんなに驚かれるけど、そんなに意外なの……?」
恐らく、これが真っ当な反応だということに気がついていないのは、ルナ本人だけだろう。当初のナナも驚いてしまっていたがゆえに、今回ばかりは味方ができない。
釈然としないのか、ルナが眉を上げて反論材料を絞り出す。
「でもでも! ナナだって20歳なんだよ!」
対したナナが「細かく言えば21歳な」と小さく付け加えながら──。
「だったら、僕が17歳でも、全然おかしくないと思うんだよ!」
必死な様子でルナが述べ、その言葉に、チロットとピピは困ったように首を傾げた。
なぜか引き合いに出されたナナも、困惑したように冷や汗を垂らしながら、全く理由になっていない根拠にチロットが声を漏らす。
「いや……ナナさんは年相応だと思うけど……。」
不可思議な対抗心だ、と誰もが思ったが、しかし、ルナはその言葉に鋭い眼差しを向けると、緊迫のようなものを交えながら言葉を返した。
「そんなことないよ! だって、もし、ナナが18歳だったとしても──僕、驚かないもん!」
「大して変わらねーじゃねーか。」
成人前後の3歳差は誤差の範囲だろ、とナナが抑揚なく指摘したところで、『年齢』の話題をピピへ振る。
「ピピは何歳なの?」
ルナが問いかけ、ピピが答えた。
「えっと、ぼくは11歳です。なので、この中では一番年下になっちゃいますね。」
照れくさそうに笑いながら、年相応の年齢にルナがぽか〜んと口を開ける。
「ふぇ〜、意外〜。」
「そうか……?」
どの辺が『意外』なのか全く分からないナナが冷や汗と共に小さく呟き、全員分の年齢を把握したルナが確認するように纏めた。
「ということは、みんなを年齢順に並べると──。」
──ナナ、21歳。ルナ、17歳。チロット、15歳。ピピ、11歳。
となる。
続けて。
「でもって、今度はみんなを身長順に並べると──。」
──ナナ、チロット、ルナ、ピピの順となり──。
「なんで僕、チロに負けてるの!!?」
「え、今更!? ていうか、二センチくらいしか変わらないんだから、別にいいじゃん!」
途端に驚愕したような声を上げるルナの言葉に、チロットも驚愕を見せ、言葉のみの押し合いへし合い。
「それなら、一センチ貸してよ!」
「貸せるかー!!」
喧嘩にすらならない、ふにゃふにゃとした言い合いもすぐに収束を迎えた。
……………
「目指せ! 牛乳で! 身長、三メートル!」
「牛乳に妙な業を背負わせるな。」
……………
ナナとルナの歩みに、チロットとピピが続く。
「そういえばさ、ピピ。」
「はい。なんでしょう? チロさん。」
ふと、チロットが試すように声をかけたのだが、予想よりも早く聞き出せた言葉に思わず目を逸らすと、気まずそうに、ある真実を呟いた。
「あー……すっかり言いそびれてたんだけど、僕の名前……チロットっていうんだよね……。」
なぜか目を合わせてくれない彼の姿と言葉に、ピピは少し呆けた表情を浮かべる。
その内容を脳へ浸透させるのに時間がかかったのか、しかし、数秒の間を空けた後に恥ずかしそうに目と口を見開くと、勢いよく頭を下げた。
「す、すみません……! ぼく、てっきり……!」
やはり、本当に勘違いをしていたらしく、ピピは、チロットを名前を『チロ』と誤認していたようだ。
心当たりがあり過ぎる原因に、チロットは予感しながらも、予期せぬ大袈裟な謝罪を慌てて宥める。
「ピピが謝る必要はないよ……! 元はといえば、僕がちゃんと言わなかったのが悪いんだし……。それに──。」
不意に、少し声が低くなるチロットに合わせて、前を歩くナナとルナの背後から、ゾゾッ……とするような悪寒が吹き抜けた。
「僕が心からお慕いする、尊敬すべき、とあるお二方がずぅ〜っとそう呼んでましたもん……仕方ないですよね〜……。」
一体、誰に向けて言っているのか、ピピを優しく宥めながらも目線だけは先を行くふたりの背を捉え──じと〜、とした熱くも黒いオーラを感じ取ったナナとルナは振り返ることができず、僅かに項垂れる。
「「スミマセン……。」」
チロットが呆れたように溜め息を吐き──しかし、決して嫌悪はしていない澄み渡った笑みを引き戻すと、これを会話のチャンスと見たのか、ピピが話題を振った。
「チロ……ットさんは、傭兵をしていたんですよね。なんでまた、ナナさんたちと一緒に……?」
唐突な質問に、チロットは意外そうにしつつもすぐに表情を切り替えると、確かな口調を以て答えてくれた。
「少し前──僕も君と同じように、ナナさんたちに助けられたことがあるんだよ。」
予想はしていなかった展開なのか、ピピが「そうなんですか?」と相槌を打ち、チロットが頷き続ける。
「その時に思ったんだ。僕も、この人たちの役に立ちたい……! 助けられたことへの恩返しがしたい……! ってね。」
温かい目を前方へ向けながら語り、ピピがこくこくと小さく頷きを入れる。
「そして、あわよくば、この人たちのように強くなりたい……! ──と。そうすれば、いつか、きっと──。」
「?」
妙な言い回しと僅かな間に、ピピがちらりと不思議そうな目を向けるが、その顔を見た頃には、チロットは強気な笑みと共に語りの締め括りへ至っていた。
「だから、僕はナナさんたち専属の傭兵になることを誓ったんだ。恩を返し切れる、その時まで──。ナナさんたちの邪魔になるものは、全て排除する。どんなものであろうと──絶対に。この命を賭けて。それが、この人たちに付くことを選んだ、僕の責任と覚悟だ。」
誰かに従うということは、決して簡単なことではない。だから、これから先、何が起きても迷うことのないように、チロットは絶対の恭順を心に決めていた。
感心と血気から、言葉を挟む隙を見失っていたピピを見て、チロットが熱を冷ますように苦笑いを浮かべてみせる。
「──って、少し大袈裟過ぎたかな……? 今の僕の実力じゃ、どうせ大したことはできないだろうし……。専属が聞いて呆れるよね。」
少し冷まし過ぎたようで、ナナたちの実力に対して悲観的なことを漏らしてしまうチロットだったが、ピピはその言葉に首を振ると、両拳でガッツポーズのようなものを作り、心よりの否定と肯定を送った。
「そんなことありませんっ! 素敵だと思います!」
なぜか、誰よりも強張った表情で感情移入をしてくれるピピを眺めて、チロットは洗い流される気分で表情を和ませる。
同時に、感謝したような微笑みを浮かべながらも、まだどこか、決意に対して実力が見合っていないことを危ぶんでいた。
「そう言って貰えると嬉しいよ。でも、専属の傭兵を名乗るなら、まだまだ従者として、精進しないと……。」
自身の励ましが足りなかったのか、少し残念そうな顔をするピピ。
だが、そんなやり取りの終止符を悟り、ふとルナが振り返ると、強気な表情でチロットへ詰め寄った。
「そんな寂しいこと言わないで!」
突然のことで呆けた表情を浮かべるチロットとピピを差し置き、ルナはふたりの間へ割って入るように滑り込む。そして、それぞれの手でそれぞれの手を握ると、三人仲良くといったふうに横一列で歩み出した。
「チロが傭兵でもなんでも、僕たちの”友達”であることに変わりはないでしょ? だったら、精進も一緒にすればいいよ!」
共に、「ね?」と微笑み、チロットへ笑顔を向ける。
対してチロットも、その言葉と手の温もりに心と表情を解すと──。
「うん!」
と、笑みを浮かべ、自身からも優しくルナの手を握り返すのであった。
そんな会話を背後に、ナナが思わず呟く。
「仲いいな、お前ら。」
誰かに言うでもなく、口を衝いて出た言葉だったが、ルナが耳聡くその声を感知すると、先を歩くナナの背へ笑顔を向けた。
「何、ナナ。ナナも手、繋ぐ?」
その言葉に、ナナは振り返ることなく、僅かに顔を伏せながら──。
「普通に気恥ずかしいからやめとく。」
素っ気なく返し、それを聞いたチロットが悪戯っぽい笑み浮かべる。
「え〜、手くらい繋いでくれたらいいのに。」
同時に、ルナを挟んだピピにも顔を向け、「ね〜?」と同調を誘う。
それに対してピピも、ふたりのノリへ乗っかるように満面の笑顔で応えると──。
「はい!」
と、いい返事で頷き、三人仲良く手を繋いだまま、ナナの背へ付いていくのであった。
そんな様子を背後に、ナナは少々、呆れたような表情を浮かべて──。
「お前らも、成人を越えれば解るよ……。」
小さく呟くが、どこか、無邪気な心を羨ましくも思っていた。
……………
暫く──一時間弱。
更に土道を歩き進んだナナたちは、いよいよ、スリープ王国の領土内へと足を踏み入れていた。
『──これより先 スリープ・ラランドラ領地──』
古惚けた立札を尻目に、視覚的には代わり映えのしない森林を進む。
ここから先は、スリープ管轄領地。ゆえに、法もスリープの規定に則る。
しかし、根本の法は世界魔導王政が定めているため、本質の大きくは変わらないだろう。
人生初となる国への遠出は、果たして無事に終えられるのか──。或いは、何かを為し、何かを得るのか──。
尤も、当面の目的は『岩石大鷲──その討伐報酬の獲得』だ。
「…………。」
不意に、ナナの歩みが止まった。
それを見て、ほかも足を止めながらチロットが問いかける。
「……? どうしたんですか?」
気兼ねなく投げかけられた疑問に、ナナは答えることなく顔を強張らせると、自身の剣の柄へ静かに手を添えた。
同時に、ルナも拳を構え、森を見やる。
突然の警戒模様。何かへの敵対を悟ったチロットが一粒の汗を浮かばせ、ピピは不安げな表情でナナたちへ寄った。
緊迫ゆえの静寂。その中に、ガサゴソと草を掻き分けるような音が聞こえ始める。
音は徐々に、四方から──ナナたちを囲むように近づき──気がつけば、向かうべき経路も、通ってきたはずの道程すらも失われていた。
幻覚か幻惑か。いつの間にか、空は灰色に覆われ、突の雨模様。
どこか重く、瘴気すら感じるような淀んだ空気。
ナナたちを囲み、道を阻んだ草木が風なくゆらゆら……ゆらゆら揺れ動き、森林から手繰った木の葉を撒き散らしながら、それらは既に、間近に居た。
「木が──歩いてる……!!」
驚きに僅かな嬉々を乗せ、ルナの声が響く。
わざわざ言葉にする必要もない。そこには、誰の目にも明らかな──動く樹木が群れを成してナナたちを取り囲んでいた。
形容は、干からびた枯れ木。これでもか、というほどに乾燥し切った枝や根をパキパキと畝らせ、その模様は動く死体や死骸を彷彿とさせる。
パサパサの幹の中心には、真っ赤なガラス状のレンズのような物が埋め込まれており、まるで一つ目の如く、無機質にナナたちを見据えていた。
動物か植物かも分からない謎の存在に、皆が驚きの様子で臨戦態勢へ移行するなか、チロットが警告の声を上げる。
「こいつらは──”古株樹”……!」
“古株樹”
枯れ樹木の形容をした”真核魔性類”の一種。平たく言えば、”歩く樹木”である。魔力を多量に含んだ倒木や朽ち木が魔物となって動き出した姿であり、生物学的にはまだまだ解明されていない点が多い。別名、”ゾンビウッド”。
「見た目は不気味ですが、歴とした魔物です!」
魔物──それすなわち、命を持つ”生物”ということになる。
正直、生き物としての瑞々しさもなければ生気も感じられない無機質な異形は、とても生物を思わせない。しかし、この世界において固定観念とは命取りだ。
──パキ……パキパキ……。
決して鳴き声ではない、湿気った音を発して古株樹たちが近づいてくる。
無数の枝をグネグネと伸ばしながら集団で詰め寄り、表情なくとも敵対的な空気が感じられた。
初めて見る種類の魔物だが、いよいよ、未踏の地へ足を踏み入れているということを実感させてくれる。
──パキ……パキパキパキ──!
ピピを後方へ庇い、ナナたちが構える。
瞬間、古株樹たちが千鳥足を速め、迫ってきた。
攻撃の意志を感じ取ったルナが瞬時に反応し、敵の懐へ飛び込む。
「はぁあ!」と拳を伸ばすたび、煎餅を砕いたかのような爽快な音と共に、古株樹の枝や幹が砕け割れ、呆気なく地面へ散った。
一度の殴り、一度の蹴りで楽々粉砕。見た目どおり脆い異形は、ルナの後に次々沈む。
続くように、チロットも古株樹たちへ走り、その幹の中心へ目掛けて槍を一閃──或いは、突き刺し、容易くいなしていた。
当初の驚異に反し、古株樹は脆く、動きものろく、攻撃力もなく、まるで手応えを感じさせない。
このまま、ルナとチロットだけでも十分に方がつきそうなものだが──。
「な、ナナさん……。」
ふたりの戦いぶりに見惚れていたナナの背後より、ピピの震えたような呼びかけが聞こえた。
その声に諭されるが如く、ナナは落ち着いた動作で正面へ顔を向けると、一体の古株樹が近づいてきているのが見える。
戦えないピピにとっては、蛇も龍も同じこと。
ゆえに、ルナとチロットが自由に戦えるようにするためにも、ナナはピピのそばを離れることなく、後方にて佇んでいたのだが、漏れ出た敵の処理くらいは請け負わなければならない。
怯えるピピを背に感じながら、ゆったりと剣を引き抜き、まずは迫った数本の枝を切り払った。
撫でるように優しく、しかし、素早く──特に構えることのない斬撃でも、易々と砕け散る。
枝という名の腕を失った古株樹は、まるでそれしかできない機械人形のようにナナへ接近するが、呆気なく、大した速度も要らないナナの袈裟斬りにより、二つに分離を果たした。
本当に、ただの枯れ木を切っているかのようで、気合も入らない。死骸を相手にしているかのようで、気持ちも昂らない。
パラパラと地面へ転がった残骸には内臓もなく、血もなく、こうして見るとやはり、ただの朽ちた樹木にしか見えないが──。
──キ……パキ……。
「ナナさん! まだ生きてます!」
「なに……?」
不意に響いたピピの声に、ナナが困惑したように足元へ目を向けた。
見れば、枝の生えていた樹冠を失い、斜めの切り株となった先程の古株樹が、依然、ナナたちのもとへ歩み寄ろうと蠢いていたのだ。
赤いレンズのような物を鈍く光らせ、どことなく目が合ったような気がしたナナは不気味に思い、まるで虫を殺すかのように、這い寄ってくる古株樹へ目掛けて剣を突き刺した。
刃は古株樹の幹を貫通し、背面より刃先が飛び出る。
「…………!」
しかし、それでも、古株樹は動きを止めなかった。
そもそも、血も内臓も存在しないのだ。そんな相手を切ったり千切ったり刺したりしたところで、奴らが生命活動を停止させる道理にはならない。
白銀に刺された状態の古株樹がパキパキと根っこを畝らせ、ナナとピピへ伸ばしてくる。
それを見たナナは嫌悪感に歯を食いしばると──。
「こんの……化け物め!」
自身の剣を捻りながら、乱雑に横へ切り裂いた。
それにより、古株樹の幹が大きく裂け、バランスを崩して地面へ倒れる。
だが、歩行力を失っただけで、現実には、まだ動いていた。
昆虫並みの──いや、昆虫を凌ぐほどの生命力は、もはや生きる力ではなく、死の力にすら思えてくる。
そもそも、こいつらに痛覚なんてものがあるのだろうか──。
不意に目を向ければ、ルナも古株樹の特性に踊らされていた。
「この木……! バラバラになってるのに動いてるよ……!」
拳を構えながら、驚きと警戒の冷や汗を垂らす。
一方で、同じように古株樹を切り伏せているチロットは、目の前の敵をまた沈めると、ナナたちへ顔を向けながら声を上げた。
「普通に砕くだけじゃダメです! 幹の真ん中にある赤いレンズのような部分を狙ってください! そこが、奴らの動力源──所謂、弱点です!」
ここでも活躍する、チロットの知識。耳を傾けたナナが、無表情ながらも僅かに確信めいた様子で正面へ目を向け、迫りくる二体の古株樹の中心部──赤いレンズのような部分を視野に入れて、二回の斬撃を放つ。
攻撃はそれぞれに命中。見事に打ち砕かれた赤いレンズは色を失って宙へ分散し、地面に付くことなく黒い霧となって消える。
それに伴って、先程まで散々、生とも死ともつかない、しぶとい進行を見せていた歩く樹木たちは、呆気なく、ただの木片となって動きを止めた。
確かな無力化の成功に、ルナも続けて古株樹へ向かっていき、枝を掻い潜りながら赤いレンズの眼前へ。
瞳孔も瞬きも存在しない、ガラス玉のような謎の部位へ拳を伸ばした。
鈍い衝突音と共に、古株樹の幹が後ろへ撓り、お互いに動きを止める。
しかし──。
「…………!」
驚いたルナの眼前にて、拳に捉えられた赤いレンズは、綺麗な赤色を保っていた。
あのルナが砕けなかったのか、情報とは違う結果に戸惑いを見せながら、己を抱き寄せるかのように迫る無数の枝と本体から飛び退き、距離を取る。
一連の流れを横目で見ていたチロットが冷や汗を垂らしながら──。
「こいつらの核は外からの圧力に強いから、拳じゃ厳しいかも……!」
「早く言ってよ!!」
ショックを受けたように目を丸くさせながら、珍しくツッコミを入れる側に回ったルナ。
気を取り直し──改めて、古株樹へ目を向け考える。
「でも、そっか……。う〜ん……僕じゃ、剣は使えないし……。」
得意の格闘が今ひとつと言われても、ルナにこれ以上の戦法はない。かといって、何かコピーできそうな物が周りにあるかと訊かれれば、首を捻るのが現状である。
或いは、ナナかチロットに”炎”を出してもらう、ということも、考えつかないわけではないが──。
「あ! そうだ!」
しかし、ここでふと、ルナが何かを閃く。
と、同時に、敵ではなく、なぜかナナのほうへ駆け戻ると、笑顔で見上げながら、とある質問を加えてきた。
「ねぇねぇ、ナナ! 何か……ほかにも剣みたいな物、持ってないかなぁ?」
「剣みたいな物って……ナイフとか、そういう刃物類のことか……?」
「うん!」
刃物を求めているにしては、純粋過ぎる笑顔だが──今はそういうことではない。
ルナの問いかけに、ナナは申し訳なさそうに答えた。
「悪いけど、持っているのは、この剣一本だけなんだ。」
ナナは基本的に、ほかの刃物は持たない。今回も、それは例外ではない。
意外にも少ない、ルナの願い出を聞いてやれなかったことを残念に思いながら、当人もやはり、眉を下げていた。
「そっか……。」
なんだか、物凄く申し訳ない気持ちになる。
何ゆえ、刃物を欲しているのかは分からないが、敵が周囲を蠢いている以上、これよりの問答はできない。
刃物であるならば──そう、刃物でさえあれば、特に型を問わないというのなら──。
「──剣を使いたいのなら、俺の剣を貸してやろうか?」
「え……!? いいの?」
さすがに、彼の愛刀を貸してもらえるとは思っていなかったのか、まさかの提案に、ルナ自身、驚く。
ナナが剣の刃を自身の手のひらへ添え、柄をルナのほうへ向けながら──。
「別に、貸してやるくらいなら全然、構わないが──お前……剣を使えるのか……?」
同時に問いかけると、ルナは笑顔のまま、それに答えた。
「分かんない!」
屈託のない回答。正直過ぎて眩しいくらいだ。
しかし、だからこそ、借りた剣をどう使うのかが気になるところだが、そこは敢えて訊かず、ナナはルナの判断に委ねるように、剣の柄部分を差し出す。
だが、ルナは両手のひらを見せて、その行為を制止した。
「あ、剣はそのまま、ナナが持ってて!」
普通に受け取るわけではないのか、不思議な指定に首を傾げながらも、ナナはルナに従い、自身の両手を剣置きにするかのように、彼女の眼前で固定する。
対して、軽く気持ちを整えたルナは、ナナの剣へ翳すように両手のひらを向けると、白く輝く魔法陣を展開した。
「”コピー&テイク”……!」
瞬間、そんな呟きと共に、ナナの手の中の剣が光の粒子状となって魔法陣へ吸い込まれていくと、ルナの服装に変化が現れ始める。
どこかで見たことのある光景──。
しかし、その服装は、今までに見た、どれとも違うものに変わりつつあった。
まず、服の両脇腹にある桃色の三日月模様が紺色に変化。後、腰に巻いていた黄色い縞々模様のブランケットが紺色のケープへと変形すると、ルナの上衣を覆うように包み込んだ。
丁寧に折った首元の襟と白い線が三本。同様に、ケープをとめるために結ばれた顎下のリボンが愛らしく揺れる。
ケープの両脇腹辺りには、桜色の三日月模様が対称に描かれ、同じく背にも、中を満月のように塗り潰した桜色の大きな二重円と、それを基点とした五枚の花びらにより星桜が描かれる。
そして──何より目を惹く変化は、両手に携えた中刀ほどの両刃の長剣。コピーする前のナナの愛刀と似てはいるが、柄は淡い桜色。
ご丁寧に、左腰には鞘まで付属され、まさにそれは、丈の小さきナナを彷彿とさせた。
「「おー。」」
コピーが完了したルナの姿に、ナナとピピが呆けたように声を漏らし、どこか凛々しさが乗ったルナの空色の瞳に、多量の古株樹が映る。
服装が変化したルナに臆する様子もなく、無感情に枝を伸ばしながら迫る古株樹。
対してルナも、特に感情や言葉を発することなく、白銀に光る剣を構えると、古株樹の群れへ目掛けて跳ぶように駆け、枝や幹を掻い潜りながら刃を複数回、走らせた。
「はあぁあ!」
瞬間──白い軌跡と共に、ルナの眼前、左右、すれ違った後方の古株樹が一遍に切られる。
枝の残骸や幹の破片を辺りに散らし、もちろん、切られた全ての古株樹の赤いレンズ──俗にいう核も、斬撃により綺麗に割られ、大気へ溶けるように色を失っていった。
地面へ立つルナの後方で、五、六体の古株樹がただの倒木となる。
「…………。」
そんなルナの背を見て、ナナは感心と共に思考していた。
まず、『剣』という人工物でもコピーが可能だったことが一番の驚きだ。
曖昧な物や複雑な物質はコピーができない、というのが制約だと認識していたのだが、『剣』は、その限りではないというのか──それとも、認識していた制約自体に、そもそもの齟齬があるのか。
どちらにしろ、まだまだ謎に包まれた能力であることに違いはない。
だが、ひとつ考察を落とすなら、今の彼女の姿は『剣』をコピーしたというより──どちらかといえば、『ナナの姿』をコピーした、というような風貌を思わせた。
剣が、ナナの戦い方や気配を憶えているとでも言いたいのだろうか──。
しかし、こういう話もある。
年月をかけて、人が武器や道具の扱いに慣れていくように、武器や道具もまた、主人の魔力や癖を憶えていくという。
どこか突拍子のない話に聞こえるかもしれないが、一番、身近な物では、『衣服』がそれを語るのに最も近しいだろう。
着始めは、なんとなく違和感を感じながらも、着続けることでいつの間にか、体に馴染んでいる。
衣服が、着用者の体格に合わせて伸び縮みを繰り返したり、人間の体臭や汗を吸収するように、武器や道具もまた、主人の魔力を徐々に浸透させ、記憶することで、いつの間にか、体の一部のように馴染んでいくのだ。
自身の生み出した炎で自身の衣服が焼け爛れないのも、己の生み出した陣旋風で己の衣服が切り裂かれないのも、衣服が主人の魔力に浸り、馴染み、記憶し、主人の魔力に適応しているからなのだろう。
つまり、ルナがコピーしたナナの剣は、ナナを”記憶”している剣──。
彼女の奥底にあるコピー魔法という力は、剣が記憶している『ナナ』を模倣したのかもしれない。
「ナナさん! 魔物が……!」
ふと、背中より聞こえてきたピピの声に、ナナが自身の思考から帰ってくる。
気がついたナナが前方へ意識を向けると、無数の古株樹が近づいてきているのが見えた。
微動だにしないナナの横顔に、ピピが落ち着かない様子で見上げる。
彼が不安を抱いている理由は、言わずもがな。現在ナナは、自身の剣をルナへ貸しているがために、武器を持っていない。
この、複数にも迫る樹木の大群と、大量の枝をどう切り抜けるつもりなのか。
武器を持っていないと分かっていても、ほかに頼る相手の居ないピピは、目の前の裾をきゅっ、と握るほかなかった。
その状況を見兼ねて、チロットが思わず顔を向けるが、直後、ナナは冷静な瞳で手のひらを前方へ伸ばすと、無数のガラスの槍を生成させながら──。
「”ガラスピア”──!」
宣言と共に放ち、迫りくる古株樹たちを残らず粉砕した。
枝や幹はもちろん、赤いレンズをも撃ち砕き、全ての古株樹がバラバラと地面へ散る。
核が無事であった古株樹でさえ、枝や幹が無残に砕かれ、蠢きながらも歩行力を奪うことで、簡易的に無力化させていた。
僅かな間の制圧に、ピピは呆気に取られたように驚きを見せ、改めて、この男が正規ギルドのギルド長である、グリルニードを仕留めた男なのだと、再認識させられる。
同様に、それを見ていたチロットも肩から力を抜かすと──。
「もう……あの人にかかれば、弱点とか関係ないんですね……。」
驚きと感心を飛び越し、どこか呆れと諦めを込めた表情で冷や汗を垂らすのであった。
……………
弱点を知ってからは、特に苦戦を強いることなく、全ての古株樹を無力化していた。
最初こそ、不気味で奇妙な魔物だと思ってはいたのだが、いざ終えてみれば、大した敵ではなかったことが分かる。
赤いレンズこと、核以外の部位にはダメージが入らないという特性だけは、いささか厄介ではあったが、逆を言えば、核さえ砕くことができれば簡単に無力化することができる、と言い換えることも可能だろう。
加えて、攻撃手段も枝を伸ばすだけ。動きも単調であった。
「はい、ナナ! 剣、ありがとうね!」
元の姿へ戻ったルナが、ナナへ剣を返す。
それを見て、ナナは剣を受け取ると、感心した様子で声をかけた。
「まさか、剣までコピーできるとはな。」
「うん! 初めてだったけど、上手くいって良かったよ!」
笑顔で返された意外な返答に、ナナは自身の剣を鞘へ仕舞いながら、不思議そうな表情を浮かべる。
「初めてだったのか?」
「うん。初めてだった。」
なぜか、両者共に不思議そうに互いを見詰め合い、特に話題を締め括るでもなく、チロットが現状を纏めた。
「それにしても、なんで古株樹は襲ってきたんでしょう……?」
唐突な疑問に、ナナとルナが同時に顔を向け──チロットが続ける。
「考えてもみてください。そもそも、古株樹は捕食を必要としない生き物です。加えて、本来はとても繊細且つ、臆病な魔物だと聞きます。」
その言葉で、皆が神妙な顔つきをするなか、ナナが簡単な憶測を漏らす。
「……魔力に釣られてきた、とかな。」
しかし、チロットはナナの発言に対して僅かに眉をひそめると、試すような口調で問いかけた。
「でも、ナナさん。臆病な生き物が、もし、自分よりも大きな魔力を持っている存在に気がついたとき──ナナさんなら、どうしますか?」
自身を魔物へ投影させるかのような質問に、ナナは軽く瞼を伏せる。そして、間を空けることなく口を開くと、小さく呟いた。
「……逃げるだろうな。」
臆病な生き物が、自分よりも大きな存在を感知したのだ。魔物であれ、動物ならば逃げるのが道理。
ナナの答えに、チロットも強い眼差しで頷くと、同感の意を示してくれた。
「はい……! 僕もそう思います……!」
しかし、相手は魔物だ。絶対に襲ってこないとは言い切れない。
加えて、仮に人間の持つ魔力の質が、ほか生物に対して異例なものであったとしても、それを古株樹が、『自身よりも強大な存在』と認識するかどうかは、正直、判断のしようがない。
ナナが目を開きながら、行く先の土道へ体を向けた。
「なんにしろ、ここで考えていても仕方がない。先を急ごう。」
ルナとピピが首を傾げている手前、ずっと留まっているわけにもいかない。
「何かあるなら、そのうち判るだろうし、何もないなら、それに越したことはない。」
土道を進む。
……………
それから、三十分ほど歩いた頃。
不意にルナが、自身の鼻を摘みながら妙なことを呟いた。
「ねぇ、ナナ。なんか、変な匂いしない……?」
僅かに顔を顰めさせ、確かに感じるという違和感に、ナナたちは疑問符を浮かべて、ルナへ顔を向ける。
「匂い……?」
ナナが訊きながら、呼吸の合間に嗅覚を研ぎ澄ませる。
すると、空気の空気の隙間に、何やら鼻をつくような……刺激臭のようなものがあるのを感じ取った。
「確かに……何か匂うな……。なんの匂いだ……?」
ささやかな匂いのため、今はそれほど気にはならないが、五分──。
十分──。
二十分──。
と進むにつれて、その匂いは段々と強くなっているように思える。
そうして、再び三十分──遂には、全員が思わず鼻を摘んでしまうほどの濃い異臭へと、それは変わっていた。
「うぅ……。」
鼻腔にへばり付く悪臭に、涙目になりながら露骨にテンションを下げるルナとチロット。
孫娘と別れた老婆のように、どこか陰鬱にトボトボと歩くふたりの背へ続きながら、ナナとピピが冷静に考察する。
「腐敗臭……って感じの匂いではないな。どこからか、有毒ガスでも発生しているのか……?」
「いえ……それにしては、匂いが複雑過ぎる気がします。それに、ぼく……この匂い、どこかで嗅いだことのあるような気がするんです。」
鼻へ手を当てながら、ナナがピピへ顔を向ける。
「憶えがあるのか……?」
その言葉に、ピピは顔を向けず、考え込むように頷いた。
「はい。ぼくが扱ったことのある薬品に、これと似たような匂いがあったような……。」
思考へ溶けていくかのように、言葉を止める。
ここ最近で扱った物ではないのか、或いは、ど忘れしてしまったのか、その名称や性質までは思い出せないといったふうに頭を悩ませていた。
思い出せないことは仕方がないとしても、正体不明の悪臭を嗅ぎ続けることがいいこととは思えない。
まだ我慢できているうちに、切り抜けてしまいたいところなのだが、果たして、この異臭はどこまで続くのだろう。
……………
できるだけ悪臭を吸わないためにか、会話が少なくなる森林道。
ふと、そんな四人の行く手に、別れ道が見えた。
「…………。」
ペースを乱すことなく、別れ道へ近づく。
Yの字に別れた道は、西方へ一方。北西へ一方。
その間には、立札が行く先を示している。
ナナたちから見て、左手直進が”スリープ”行き──。僅かに右折した道が、『モンブランタウン』行きと書かれていた。
その文字列を見たルナが目を輝かせる。
「見て見て、ナナ! モンブランだって!」
ルナの食い意地が発動か、匂いのことも忘れた様子で、分かりやすく期待の表情でナナを見上げている。
決して、「行きたい!」とは言わないことが逆に効く。ゆえに、ナナは少し気まずそうに目を逸らすと、独り言のように呟いた。
「ここから真っ直ぐに行けば、スリープへ辿り着けるみたいだな。」
露骨に逸らされた視線と内容に、ルナが目を丸くさせながら驚いたような声を上げる。
「えー!? 寄っていかないのー!?」
「寄ってどうするんだよ……。」
困ったように指摘するナナに対して、ルナは当然とばかりに答えた。
「そんなの決まってるじゃん! モンブランを食べに行くんだよ!」
「名前がそうってだけで、あるかどうかも分からないのに……?」
言い合い……というには、だいぶ柔らかな戦いだが、そのやり取りに、ふとピピが小さく片手を挙げると、おずおずと口を挟んだ。
「あのー……言い忘れていたのですが、実はぼく、モンブランタウンからの依頼を受けようと、この森まで来ていたんです……。」
突然の告白に、顔を合わせていたナナとルナ、そして、チロットもピピへ顔を向ける。
「フォレストハントに襲われたのは、丁度、その道中でして……。」
本人は、どこか申し訳なさそうに説明してはいるが、正直、特に驚くようなことではない。
寧ろ、こんな森の中で一人、フォレストハントに襲われていたことへの辻褄が合うというものだ。
ゆえに、ナナが至って自然体に提案を施す。
「そうだったのか。それなら、俺たちがモンブランタウンまで送っていこうか?」
その言葉に、なぜか目を輝かせているルナはさて置き、ピピが表情を綻ばせて笑みを浮かべた。
「はい……! そうしていただけると助かります……!」
ピピの表情と明るい声を聞き、ナナも頷く。
そして、確認の意味を込めて、ルナとチロットへ目を向けると同時に──。
「僕は、お二人に付いていくだけです! それに、ピピを最後まで送っていく、っていうのが約束でしたからね! 異論はありません!」
チロットが強気な表情で応え、ルナは言うまでもなく頷いている。
口の端から垂れる唾液は気になるものの、ふたりとも、寄り道へ賛同を示してくれた。
自身たちの目的とは別の道──。しかし、少しばかりの道草も悪くはないという心持ちのもと、ナナたちは右に逸れる土道へと体を向けた。
「それじゃ、行ってみるか。モンブランタウンへ。」
「モンブラン、楽しみだなぁ〜。」
ルナも期待に胸を高鳴らせて、道しるべの標識を左に、ナナたちは”モンブランタウン”なる場所を目指し、歩みを進めるのであった。
……………
「ところで、モンブランってなんだっけ?」
「「えっ、知らずに言ってたのかよ!!」」
………to be continued………
───hidden world story───
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☆HIDDEN WORLD用語紹介のコーナー★[魔物編]
〈-グリーンリザード-〉
《生物分類》魔物(魔力循環動物)
《魔物分類》竜下爬虫魔性類(竜下爬虫魔瘴類)
《正式名称》緑地蒼色蜥蜴(Colorum Varanus jade sauria Roz ; Miic)
特徴: トカゲに酷似、青草色の鱗、赤い眼、長く頑丈な尻尾
弱点: 大型の猛禽獣(全長、20m超えの魔物等)、寒波(変温動物の傾向あり)
分布: 世界各地の森林や平原(これといった固有地なし・種別あり)(特に、ノア地方に多く分布)
概要:
全長、10m-12mで成るトカゲ型の魔物。頭胴長が6m-7m。尾長が4m-5mと、長い尻尾を持つ。牙、爪共に鋭く、非常に鋭利。加えて、尻尾は頭部や胴に対して四倍ほどの強度があり、これで肢体のバランスを取っているものと思われる。嗅覚と視覚が優れており、姿形で獲物の種類を判別できる。四足歩行。肉食性。
生態:
比較的温暖な広葉樹林や平原に生息する。日陰を嫌い、日向を好む。昼行性。決まった巣を持たず、活動時間は常に獲物を探して地表を闊歩している。非常に獰猛で、生物でさえあれば、なんでも捕食対象にしてしまうが、勝ち目がないと分かった相手には、すぐに尻尾を巻く利口さも兼ね備えている。天敵に対しては臆病である。遠くの獲物は嗅覚で捉え、間近の獲物は視覚で捉える。主に、群れで行動する”社会性リザード”と、単独で行動する”単独性リザード”に分かれる。
・社会性リザード
十匹から二十匹で成る統制が執れたリザードの称。ほとんどのリザードがこれに含まれる。一匹のボスを頭目に、群れで狩りを行う。単独性より知能が優れた傾向にあり、いたずらに獲物を追い回すことはせず、待ち伏せや囲い込みで獲物を狩る。加えて、警戒心も高く、人間に敗北した経験のある個体は、人間を恐れる傾向にある。稀に、”レッドリザード”が群れの統率を執っている例が確認されているが、これは、グリーンリザードが『赤色を判別できない』ためではないかといわれている。単独性より睡眠時間が長い。
・単独性リザード
文字どおり、単独で行動する個体。気性が荒く、目が合うだけでも同種同士で争うことがある。主に、群れに馴染めなかった若い個体や、外敵や人間によって仲間を狩られ、孤立した個体がこれになることが多いとされる。待ち伏せもするが、ほとんどは追跡して捕食する。よって、社会性より運動神経や攻撃力が高い傾向にある。しかし、同時に危機管理が浅く、人里に降りてくることもしばしば確認されているため、討伐対象となることが多い。社会性より睡眠時間が短い。
人間との関係:
世界各地に分布しているが、天敵が少ないことで知られている。魔物界全体で見れば、決して強い魔物ではないのだが、彼らが生息する地域には、天敵が異様に少ないという結果が報告されている。これは、種の生存戦略として、天敵のいない地域へ逃げたという見方が強いが、詳細な部分は判明していない。そのうえ、繁殖力が高く大食漢であるため、彼らの生息する地域では生態系の維持が強く求められてくる。現在は人間が天敵となることで、種の増殖を抑えている。
用途:
肉は食用。爪や牙は武器などの加工品。眼や骨は装飾品。鱗と皮は防具や衣服、革製品などに使われる。その余すことのない需要と用途から、企業の商標にグリーンリザードが用いられることも多い。
対処法:
一匹を見つけたら、必ず周りを警戒すること。基本的に、グリーンリザードは群れで行動する魔物であるため、一匹居たら複数匹居る可能性を考えたほうが良い。既に、周囲を取り囲まれていると感じたら、無理をせず、仲間内と背を預け合いながら慎重に歩を進める。その場で立ち止まってはいけない(獲物が止まることで狩りの合図となるため)。交戦時は、常に距離を取り、遮蔽物を活用する。加えて、相手の攻撃手段が集まる正面や背後に回るのは危険である。近接で攻めるなら、必ず、側面から攻撃を仕掛けること。重ねて、最も多い事故は、尻尾による返り打ちである。尻尾は、ほかの部位よりも頑丈であるため、弱点になり得ない。尻尾への接近は避けること。弓や銃などの遠距離攻撃、魔法であれば炎や冷気での攻撃が有効。群れとの交戦の際、群れのボスを先に仕留めることで、グリーンリザードたちの統率力と士気を下げることができる。これにより、魔物狩りの成功率と生存率が大きく上昇する。遭遇率を下げたい場合は、魔物避けの鈴などの音が鳴る物を備え、人間がここに居るということを伝えてあげる。並の魔物であれば、あちら側から距離を取ってくれるだろう(ただし、魔物によっては音に引き寄せられてくる種も居るため、事前に、現地に生息している魔物の種類と特徴を把握しておくこと)。
※モチーフ: コモドオオトカゲ、ミドリカナヘビ、イグアナ等
著者引用: ロズ・ローブ(Roz Loed)
襲いかかる樹木。異臭。そして、”モンブランタウン”とは──。




