同情じゃない
テオバルト目線
テオバルトの指導が始まるのは昼からだがリズの事情(女であることを隠してるいること)を考え着替えなどの時間には部屋を開けるようにした
ショートでボサボサの髪をしているが綺麗な茶色の髪は赤みがかっていて日に当たれば少しピンクに見える
日に焼けた肌で誤魔化してはいるがパッチリな目に小さな鼻、ぷくりとしている唇はよく見ると可憐な少女である
つまりリズが女に戻れば美少女なのは間違いなかった
(俺以外と同室だったらどうするつもりだったんだ……ちょっと無防備すぎだろうが!)
声にできない愚痴を頭の中で響かせつつ朝の散歩をするのが日課になってからは夜に遊びに出ることもなくなった
同室になった翌日、着替えを持って悩んだ挙句テオバルトの前で着替えようとしたリズを思い出し頭を抱えた
寝ていたベッドを飛び起きて、散歩行くとだけ言って飛び出た
目を覚ましたら服に手をかけている女がいて、女遊びはした事あるのに何故か妙にいけないものを見た気になったから飛び出てしまった
なぜかは自分でも分からない
リズが素直だからかもしれない
そんなふたりの同室生活も1週間がすぎた
テオバルトの目に映るリズはとにかく一生懸命だった
そして騎士が好きなのだと、誇りなのだと分かった
素直に胸を張って騎士だと言えるほどではないがテオバルトにもそんな時期があった
見習いや騎士の大半は金銭目的であった
だからテオバルトは忘れていた
『騎士』に憧れていた自分を
まだ立ち直るには時間がかかるがそれでも1歩を踏み出したいと思えるようになった
見習いに剣術指南するのがテオバルトの仕事である
とは言っても数人の騎士がその職につき、メインで指南しているのはベテランだ
あくまでも補佐であるテオバルトの仕事は少ない
「補佐の俺がリズを見ましょうか、どうせ伸び代は少ないですからね」
テオバルトの提案にバレリオは少し悩んだ
バレリオは指南役として選ばれたベテラン騎士であり責任者でもあった
バレリオも足を引っ張っているリズを補佐の誰かに見させようとは思っていた
しかしテオバルトはそう言ってサボるつもりでは無いか
ならばリズが少し可哀想ではないか
そう思うと悩むが、『どうせ辞める見習い』である
1番『損をしない選択』を選ぶ必要があった
「わかった、明日からお前に任せる」
右手を左の胸の前で拳を作り敬礼の仕草をするとテオバルトは頭を下げた
翌日からテオバルトはリズに向いた練習を取り入れた
一回り小さな木刀を提案前から用意していたようでイタズラが成功した幼子のようにニッと笑った
「リズは俺が育ててやる! 遠慮はいらねー、ただお前はお前らしくやれ」
リズは拳を目の前に出されおずおずとそれに拳を合わせる
テオバルトはまた嬉しそうにニカッと笑った
その日の夜テオバルトは数人の指南役に呼ばれた
リズはどうせいつか辞める
同情をしても仕方ない
バレリオの姿こそないが彼もどうせ同意見だろう
だからこう言い捨てた
「リズは俺のお気に入りだ、気に入らねーなら俺に勝ってから言うんだな」
確かにテオバルト以上の天才はいる
けれどもこの辺境の地においてテオバルトは追随を許さないほどの剣の使い手であった
手練と言う人達にはまだ及ばないだろうが見習いの指南役に飛ばされるような『そこそこ』な人間には勝てる相手ではなかった
またテオバルトもその自覚はあった
ブツブツと文句を言いつつも彼らが引き下がるのを見てテオバルトは息を着く
「同情ねぇ……そんなんじゃねぇけど」
それに続く言葉はテオバルトすらまだわからなかった
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