25.クッキー(ベルドリオ目線)
見て下さりありがとうございます
何故あんな風に責めたのか
自分でも自分が分からない
ただ無性に腹立たしかったのだ
リーゼロッテとイサークが一緒にいるだけでモヤモヤする
リーゼロッテの屋敷で2人を見かけた
屋敷に着くとリーゼロッテは庭だと聞かされ少し驚かせたいと思った
きっと無作法ではあるがリーゼロッテなら許してくれると思った
そこに2人がいると思っていなかった
イサークをいっくんと優しく呼ぶリーゼロッテ
逃げてくるようにいうイサーク
手を取り合う2人
金槌で頭を殴られた気分だった
そうだ、リーゼロッテは公爵の出というだけではなく正当な後継者だったはずだ
王家からの打診で婚約したのはリーゼロッテが公爵家を出たあとだと聞いた
王太子の発表があった後にリーゼロッテの性別が公表されたのは王位に興味が無いという彼らなりの意思表示だろう
それでも貴族で1番の有力者が平民を母に持つ第3王子と婚姻を結ぶのを避けたくて当時まだ婚約者候補さえいなかった第2王子の婚約者になった
(それが平民の子と婚約するとは思わなかったよな……リジーなら受け止めてくれるなんて勝手だよな)
すぐに客間に戻った
本当なら屋敷から出たいくらいだったがさすがに無責任すぎると部屋に入るとすぐあとにノックの音がした
(どんな顔で合えばいいんだよ、リジーは俺との婚約を望んでねーのに)
胸がジクジク痛む
数秒後またノックされた
乾いた唇を開くと上手く返事ができたようだった
庭に誘われた時はあの光景を思い出し否定しかけた
だがリーゼロッテの好意を無駄にはできなかった
(なんで婚約を了承した? 王家の命だからか?)
それにイサークとの仲も気になった
気がつくと彼との間を探るような発言をしてハッとしたが、誤魔化されいらだちが募る
(なんで隠すんだ? 恋仲……だからか?)
モヤモヤする気持ちが晴れたと言えば嘘になるが沈んだ表情のリーゼロッテが見たくなくて普通を振る舞う
母の好きだった菓子が運ばれてきて懐かしさから沢山食べてしまったが、リーゼロッテが嬉しそうだったので良しとした
ベルドリオも甘いものは嫌いではない
むしろ好きな方だが、表だって言うこともそう思わせることもなかった
男らしくないと思われたくなかったからである
だが母は美味しそうに食べるベルドリオを嬉しそうに見るから隠せなかった
母の好物の菓子はいつも半分にして食べた
料理人にお菓子好きと思われたくなくてベルドリオはデザートをいつも断っていたからだ
母が床に伏せる前に1度だけ手作りクッキーを作ってくれた
その時に美味しく食べていたら母は優しく微笑んでいた
少しだけリーゼロッテは母に似ていると思った
顔の作りや体型ではなく雰囲気がである
だから余計に怖かった……
父が訪れなくなっても何も言わなかった母のように彼女も自分が居なくなっても変わらず暮らすのではないかと思うことが……
それどころか自分がいない方がリーゼロッテは幸せかもしれない
イサークという男は子爵家らしいが、跡取りではないから養子に出すことも可能だろう
実績のある子爵の子であるイサークを養子にと、伯爵か侯爵あたりに声をかければリーゼロッテの婚約者になるとなれば首を縦に振るものは多いはずだ
公爵家としてもその方が婿養子にしやすいだろう
反対に自分はというと王家の縛りから抜け出せず、抜け出した所で後ろ盾のない平民の子だ
それに王位継承を破棄したいとも思っている
王家も匙を投げるだろう
そんな男が養子になれるとも思えない
リーゼロッテにふさわしくないのだ
セレスティアとの面会の日も上の空だった
彼女の話題は役に立つものが多いが、リーゼロッテといる時のような穏やかな時間は訪れない
リーゼロッテの話題は避けていても何故かセレスティアが投げかけてくるから考えないようにするのも無理な相談でベルドリオは次回のリーゼロッテの訪問までずっとモヤモヤした気持ちを抱えていた
リーゼロッテの訪問の日
たまたま馬車を見つけ、階段を降りていた所にリーゼロッテがいた
声をかけようとした時、リーゼロッテが差し入れを護衛に渡していた
その時、イサークの愛おしそうな視線がリーゼロッテに向かっているのを見なければ微笑ましく見れたかもしれない
カッとなった
自分に会いに来たのでは無いのか
やはりこの婚約は彼女にとって重荷でしかないのか
気がつくと部屋で彼女に暴言を吐いていた
目の前にはラッピングされたものがあり丁寧に開けると中にはクッキーがあった
ポリっとひと口かじる
「……甘いな」
だけど少ししょっぱい気がした
それはベルドリオの心の在処のせいだ
「まさか母さんの作ってたクッキーと同じ味なんて」
そういえば部屋に入ってからのリーゼロッテはソワソワしていた
これを渡そうとしてくれていたのか
そう思うと優しい気持ちになった
同時に自己嫌悪に陥る
次回には彼女の名をきちんと呼んで、優しくしよう
そう誓った
のんびりペースですが読みに着てくだって感謝しております




