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11.風が吹く

見に来て下さりありがとうございました

ベランドの死後数日が過ぎた

王家に新しく採用された侍女が運んだ紅茶の中に毒物が検出され背後には第2王子の母で現王の側室の実家が浮かび上がってきた


呆気なく黒幕がわかり事件は収束へ向かった


しかし問題が起きたのである

婚約するはずだった第2王子を廃嫡する声が大きくなりオンディビエラ家としては婚約するメリットが無くなったのだ

そのため婚約は白紙になりリーゼロッテはまたも目標が無くなったのである


騎士がだめだったけれど令嬢としてちゃんと過ごそう

そんなささやかな願いすらも消え去ったのである


第2王子にしても寝耳に水だったようだが、王位を狙ったと思われても仕方ないと臣下に下る決断をしたそうだ

今は謹慎中のため発表はされてないが近く公表されるだろう


それで空席になった王太子の椅子が私生児である第3王子に転がることとなった


王都に戻される事になる第3王子を思うとまるで自分のようだと思った

きっと自由があったはずなのに転がり込んできた大きな権力に翻弄され、飲み込まれていく

自分の意思など小さなもの


同情ではなくきっとこれは共感だろう

だからその話が出た時反発する気は起きなかった


『第3王子の婚約者候補になるように』


その通達が王家から来た時に祖母はリーゼロッテに意志を聞いた

断ってもいいとも言っていた

第2王子の婚約を白紙に戻したのは王家の失態であったし、第3王子は私生児である

しかしリーゼロッテは受けるといった

候補という事は他にもいるのだろうがきっと彼を知る事を出来るのは自分であると奇妙な自信があった


婚約者候補にオレジャナ公爵令嬢の名を見つけた時心配になったと同時に婚約者が居なくなったという立場は一緒なのだと思った

彼女は婚約者の体調の急変に取り乱し支えようとしていた

きっと愛情を育まれていたのだと思う


同じとは語れないが、騎士の道を絶たれた自分の気持ちと似た喪失感があるのではないかと思った



改めてデビュタントの日が決まった

第3王子の顔見せで舞踏会が開かれることになったのだ

その日に改めようということになった


顔すら見たことの無い婚約者候補はいきなりの歓迎を喜んだのか悲しんだのか……今更と思っただろうか


新たにドレスを仕立てる事になり、普段なら仕立て屋を呼ぶのだがどうしても時間が取れないとの事でリーゼロッテは王都のブティックに行くことにした

護衛と侍女数人を連れて歩くのは慣れないが仕方の無いことだと割り切っている


大きな通りを馬車で通り過ぎブティックの近くに停める

ブティックは女性専用だが隣の店には男性物も置いてあった

ただ目に付いただけで他意はなかった


だけども見てしまったらそれから目を離せなかった

騎士の紋様が入ったサーコート

刺繍には王家のシンボルが施されいた


ふわっと風が通り抜けた

気のせいだったかもしれない

ただ惹かれた


だから護衛や侍女から離れたのも故意では無かった

グイッと女性ブティックと男性ブティックの建物の間の隙間に引っ張られた


バランスを崩しかけたが訓練で培った身体能力は健在ですぐに応戦の構えをとる

しかし相手の方が上手だったのか背後を取られ口を手で塞がれ、拘束された



ただひと目見たかった

憧れた夢だったその欠片を

ただそれだけも叶わないのだと思った

見て下さりありがとうございます

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