10.運命の日
見に来て下さりありがとうございます
半年という期間はあっという間に過ぎた
王子妃として相応しいかと問われればリズには分からないと答えるしかない
しかし、その日は刻一刻と迫っていた
ただのリズはもう居ない
デビュタントを15歳にと決められその日を翌日に控えたリズは夜空を眺めていた
髪は肩に着く程度には伸びた
令嬢にしては短いがみっともないほどでは無い
王宮の晩餐会と誕生日が重なりデビュタントが決まった
黄色いドレスはリズのために作られており、見る方向によってキラキラと反射する布を使っていた
デビュタントが無事終われば婚約発表が待っている
イサークへの想いはもう断ち切ったつもりではあったが今でも時折胸が痛む
「明日は準備があるわ……寝ましょう」
可愛く整えられた部屋は立派に令嬢の部屋になっていた
木刀もない、可愛らしいレースのあしらわれたクッションがある部屋
手を見るが綺麗になったものだと思う
マメは消えさり、木刀も今持ったとて綺麗に振れるか分からない
刺繍くらいしかしなくなったものだから荒れようがない
夜空は曇っておりなにかの前触れに思えた
首を振り、考えを否定する
騎士見習いから令嬢
それ以上の何かなどないと部屋の窓を閉めた
ベッドに横になると目を閉じる
ここまで来てしまった
明日など来なければいいのに……
そう思う反面
早く終わってしまえばいいのに
とも思ってしまう
相反する思いがリズを苦しめた
モヤモヤとする思いを抱えたまま夜は更けていった
晩餐会に向かう前に準備に取り掛かる
この日に向けて厳しい家庭教師にも耐えてきた
そのように皆は思っているが実は違う
見習い時代を思い出さないように自分を追い込んでいただけである
綺麗に着飾ったリズを迎えに来たのはイサークである
実はリズには家族が祖母しかいない
そのためエスコート役がいなかった
婚約者である王子をという声もあったが発表前だからと白羽の矢が刺さったのは同年代であり騎士としてすでに活躍しているイサークであった
「オンディビエラ公爵令嬢及びミラモンテ子爵令息の入場です」
オンディビエラ公爵家は公爵家の中でも力ある貴族である
そしてそれはリズの家名であった
リズ、否、リーゼロッテ・オンディビエラと言うのが今の彼女である
晩餐会は軽い舞踏会も並行して開かれた大き催しになっていた
そこでリーゼロッテを紹介、そのまま婚約発表になるという手筈であった
これでリズは死にリーゼロッテが生まれる
心が軋む音がした
音楽に合わせ踊る人
会話に花を咲かせる人
リーゼロッテには全てモノクロに見えていた
「王太子ならびご婚約者オレジャナ公爵令嬢の入場です」
王太子には既に婚約者がいるようで王太子妃という重圧は他の人が請け負ってくれるのねと遠くを見つめ考えていた
その時である
「ぐっ、はぁ、うぁああああ」
王太子べランド殿下が首を抑え倒れた
苦しむ姿に悲鳴が飛び交う
「ランドさま!!」
オレジャナ公爵令嬢が傍で支えようとするが様子がおかしいと離れさせられ医師が駆けつけた
数分後彼はピクリとも動かなくなった
そして
「残念ですが……お亡くなりでございます」
その言葉にオレジャナ公爵令嬢は倒れ、父である王はあまりのことに椅子に深く腰掛け呆然としていた。母である王妃も今にも倒れそうな顔色で医師に脈を測ってもらっていた
晩餐会は中止、貴族たちは来賓館で軟禁されることになった
リーゼロッテのお披露目と婚約発表という話はそれどころではなくなってしまったのである
見て下さりありがとうございました!!




