幼い日の記憶①(ロイド視点)
ルディ達と別れた後、 私は自分の背後に、ある人物の気配を感じ、後ろも見ずに話しかける。
「おい、気配消してないで出てこいよ」
「ちぇ、バレてたか」
「当たり前だろ?何年一緒にいると思ってるんだ」
見抜かれ、悔しそうにしながら歩いてくる彼は王太子の側近でもあり親友でもあるマルクスだ。2人は話しながら教室へと向かう。
「それはそうと、あんなに簡単に許可してよかったのかよ?」
「まあなー」
「なんでだよ、もし何かあったら…」
「ルディ嬢だから大丈夫さ」
「なんだそれ、理由になってねえよ」
「お前には分かんなくていいんだよ」
「はぁー?」
隣でマルクスが呆れたような声を出している。まあ当たり前か。私がルディ嬢を無条件に信頼を置くきっかけとなった、あの事件にお前は関わっていないからな。
まあ、きっと…ルディ嬢本人さえも覚えていないだろうけど…。
・・・
幼い頃、好奇心旺盛だった私はよく衛兵を撒いて城下に遊びに行っていた。
ある日、いつも通り王城を抜け出して城下へ行くと、裏路地でネコを虐めている同世代くらいの男の子3人を見つけた。当時10歳だった私は、正義感から後先考えずに彼らの前に立ちはだかる。
「おい!それ以上ネコに酷いことをするのはやめろ」
そう言うと3人は手を止めゆっくりと振り返る。
「お前何者だ?俺たちにそんな口聞いていいと思ってるのか?」
「お前たちが誰だろうと構わない。おい衛兵、あいつらを捕らえろ」
そう言ってから…やっと気づいた。今、1人だということに…。
「何言ってんだ?おい、お前たちあいつ捕まえておもちゃにしようぜ」
どうやら彼らは日常的にこういうことをやっているらしい。身近なところにある武器になりそうなものを手に取り、こちらに向かって来た。
ネコは…逃げたしとりあえず安心だ。それより今は自分の身の安全が最優先。衛兵がいない今、自分もネコと同様に逃げることしかできない。
曲がりくねった裏路地を使い、なんとか振り切った。…だが、気がつくと知らない場所に来てしまっていたのだ。
ここはどこだ…。もうすぐ日暮れ。さすがにそろそろ帰らないと大事になってしまう…。でも…帰りたくても帰り道がわからない…。
さっきまで追いかけられていた恐怖から解放されて一気に気が緩んだのと同時に未知の場所に来てしまったことへの不安により私はその場にしゃがみ込んで泣き出してしまった。
そんな時だった。私の視界に突然小さな手が現れたのは。