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断罪の舞台

 6月10日の朝。


「ルディー!!」


 向こうから大きく手を振りながら叫ぶサリーの姿がある。流石に大声で返すことは恥ずかしいので近くまで歩いてから、おはようと言った。


「昨日メイド長に頼んでおいたよ。喜んでお手伝い致します、だって」

「まあ、嬉しい。今度お礼をさせていただきましょう」


 私の周りの人はみんな心優しい人ばかりですわ。その人柄に触れるたびに胸が温かくなります。


「そういえばさ、リザード様、どうやって婚約解消するつもりなんだろうね。ルディとの関係は良好だし、家同士の揉め事もないのに」

「私もそこが気になっていたのよね。破棄を言い渡した後にでも聞いてみるわ」

「ねぇ、その瞬間、私もそばにいていい?」

「ええ。でも、まだ舞台は決まってないの。どうせなら、思いっきり恥をかかせてあげたいのよね」


 昨日、ルディは眠らずにずっと考えていた。

 正直に好きな人ができたから婚約解消してほしい、そう言ってくれるなら許したかもしれない、と。

 でも、婚約者がいながらも逢引きを続けて、なおかつ慰謝料を払いたくないからと無理矢理な理由をつけて婚約解消を目論んでいる。

 その事実が彼女の心をどれだけ傷つけたか。


「そうねぇ、あ!来週に王太子主催のパーティーがあるじゃない?そこはどう?」

「いや、それはロイド殿下に迷惑がかかってしまうわ…」


 王太子であるロイド殿下は私たちと同級生で隣のクラスに在籍している。そのロイド殿下が主催するパーティーが来週の6月15日に開催されるのだ。


「いいと思ったんだけどなぁ…。ね、ダメ元でロイド殿下にお時間いただけるか聞いてみようよ。こんなチャンス滅多にないよ」

「いや…でも…」

「私がどうしたんだ?」


 声がする隣を見るとサリーではなく、ロイド殿下の顔があった。


「「ロ…ロイド殿下」」


 2人はいるはずのない人物の登場に声を揃えて驚く。


「やあ、私の名前が聞こえたからつい、ね」

「「し、失礼いたしました」」

「いや、いいんだ。ところでなんの話をしていたのだ?」


 本当にこんな私事に巻き込んでいいのか、お願いしていいのか悩んでいると、サリーが口を開いた。


「実は、殿下に一つお願いしたいことがございまして…来週のパーティーで少しお時間いただけないでしょうか」

「ほう?理由を聞いてもよいか?」

「実は、ここにいる私の友人、ルディが婚約者の逢引きを目にしまして。浮気の証拠を手に婚約破棄をしたいのです」

「サ…サリー!」


 サリーの口を塞ごうにも殿下の前でそんな無粋な真似はできない。ルディが止める前に全て言い切ってしまった。

 すると、ロイド殿下は一瞬驚いた様子で目を見開き、その後笑い始めた。


「あははは、なるほどね。おもしろい。いいよ」


 え、そんなあっさり…。


「ちなみに、なんでパーティーで…大勢が集まるところでやりたいかは聞いても良いいか?」

「それは…ずっと隠れて逢引きをしていたうえに、慰謝料を払いたくないと婚約解消を企む彼に最悪の結果を叩きつけて差し上げたいのですわ」


 つまり、貴族社会から追い出してやりたいのです。と、さすがにここまでは言えませんでしたが、汲み取っていただけたでしょうか。


「なるほどね。いいよ、好きにやりな。当日は楽しみにしてるね」


 そこまで言うと、片手を振りながらロイド殿下は去っていった。あっという間の出来事に頭の処理が追いつかない。


「びっくりしたー!でも、よかったね、許可が貰えて」

「もう!サリーってば1人で突っ走るんだもん」

「ごめんて。後にも先にもこんなチャンス2度とないと思ってね」

「うん…。ありがとう、私のために。おかげで断罪の舞台が決まったわ」


 さぁ、舞台は整いましたわ。あとは証拠のみ。うまくいけばいいのですけど…。


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