断罪前夜
6月14日の放課後。
「ついに明日が本番よ、心の準備はいい?」
「ええ。これだけ決定的な証拠があるんですもの。恐れることはないわ」
「それなら良かった」
パーティーを明日に控え、口では誤魔化しているが、私の緊張は極限まで高まっている。
「それにしても、サリー本当にありがとう。私だけだったら、あんな作戦思いつかなかったし、証拠入手の助っ人もいなかった。本当に恵まれてたわ」
「ルディが頼ってくれて嬉しかったわ。いつも私が頼ってばっかりなんだから」
「そんなことないわよ?」
「あるのー!」
嬉しそうにするサリーを見て、私も笑顔になる。
「そうだ、前夜祭ってことで前に言ってたタルト食べに行かない?今日は時間が早いし」
「もちろんいいけど…サリー?それ前夜祭関係なくタルト食べたいだけでしょ?」
「あ、バレた?」
「バレバレよ」
サリーのおかげで緊張もほぐれ、肩の力を抜く事ができた。きっとサリーの狙いはこれだったんだろう…。城下に移動し、様々がな店が立ち並ぶ一角に目的の店を見つけた。
「ここよ」
「素敵ね!早く入りましょう」
「慌てなくてもタルトは逃げないわよ」
タルトにはしゃぐサリーはまるで子供のように目を輝かせている。席に着くと店で一番人気のタルトを2つと紅茶を頼んだ。
「お待たせいたしました」
「すごい!美味しそう!!」
店員が運んできたタルトに乗せられた果実がまるで宝石のように光っている。ごクリと唾を飲む2人。
「いただきましょう」
「そうしよ!」
一口食べると果実の仄かな酸味と生クリームの甘さが口の中で広がり、口で幸せを感じる。
「おいひい」
「でしょ?私も一度来て虜になったんだから」
リスのように頬張るサリーを微笑ましく見ながら、私もタルトを口へ運ぶ。あっという間に食べ終わってしまった私たちは家にお土産用として数切れ購入し、帰路につく。
・・・
「ただいま帰りました」
家の玄関を開けると、お母様がちょうど通りかかったところだった。
「おかえりなさい、ルディちゃん。あら、その荷物どうしたの?」
スイーツに目がないお母様が早速お土産に目をつけてきた。
「帰りにサリーと寄ったお店で食べたタルトを買ってきましたの。とても美味しくてぜひお母様達にも食べていただきたいなと」
「まあ嬉しい!食後にいただきましょう」
そう言うと、お母様はお土産を冷蔵庫で冷やしておくように近くのメイドに指示を出した。
「ほら、もうすぐ夕食の時間だから着替えていらっしゃい」
「分かりました」
部屋に戻り、いつも通りミサとお喋りを楽しみながら髪をほどき、室内用ドレスに着替える。そしてダイニングルームへ行くともう2人とも席に着いていた。食事を始めると、お父様が私に話しかける。
「明日の準備は大丈夫なのか」
「もちろんです、完璧に用意してありますわ」
「それならいい、頑張れよ」
「はい、頑張ります」
それ以上お父様は何も聞いてこなかった。お父様なりに余計なプレッシャーを与えないように心配りをしてくださったのだろう。
そして、食後にタルトが出てきた。本日2度目なのに飽きない美味しさだ。お母様もお父様もお口にあったようで、美味しいと笑顔で食べていた。
そして、入浴を済ませ、早めにベッドに入る。
「あなたと婚約破棄をしたい…か」
誰もいない空間で1人で呟く。浮気現場を目撃してからたった4日でここまできた。あっという間すぎて実感が湧かない。
ついに明日、私はリザード様に婚約破棄を告げる。




