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6.誤魔化しただけじゃん




 ――遠くで、声が聞こえる。


「貴方が手を離すから、勇ちゃんが頭を打ったんでしょう」

「うるさいです。甘南ユズリ、お前が来なければ彼女はボクのお嫁さんになってくれていたのに」

「寝言は寝て言うものだよ、おチビさん」

「そっちこそ、寝言は寝て言うものですよ。おデブさん」

「で……貴方の目は飾りなの?」

「胸に二つもでけえ脂肪ぶら下げてるじゃないですか」


 うん。寝たふりしよ。

 どうやら私は、何処かのベッドへ運ばれたらしい。

 薄目を開けると白いシーツが見えたし、清潔そうなにおいがする。

 校内って事を考えると、多分保健室だろう。

 高校生活初日をトイレで終えるのも嫌だけど、保健室で終えるのも二番目くらいに嫌だ。

 泣きたくなってしまったけれど、起きている事がバレるのは酷く面倒だし。

 此処は寝たふりをして、保健室の先生が追い出してくれるのを待つのが一番良いかもしれない。


「ボクは此処でやりあっても良いんですよ」

「北方の魔女が調子に乗って、わたしに勝てるわけないじゃん」

「南の蛮族に負ける(いわ)れがございません」

「甘くみてもらっちゃ困るよ。わたしのスキル、貴方たちと戦う上でこれ以上無いくらい強いんだから」


 甘南ユズリは強気だった。

 声の調子からして分かる。

 負けるだなんて、露程も思っていないらしく、語気強く言ってのける。


「甘く見ているのはそちらでしょう。ボクの国で、王の子に選ばれるという事の意味を、ご存知ですか?」

「知ってるよ。貴方たちの国は王国とは名ばかりで血を重んじない。ある特定の周期で見て一番魔力の強い子供を王の子にすげるんだってね」

「そうです。つまり、ボク、とっても優秀なんですよ」


 マホちゃんのあの不自然な笑みが、脳裏に浮かぶ。

 一度しか見たことが無いのに。

 きっと口の端を吊り上げて、歪に、不敵に、笑っているんだろう。

 それにしても、話がいやに説明口調だ。


 これ、私が起きている事に気付いて行われている、茶番なんじゃなかろうか。



「貴方がいくら優秀だって、関係無い。わたしのスキルの前ではね」


「そうですか。――そこまで言うのであれば、見せてさしあげましょう。ボクの力を……」



 あ、これ、いよいよ魔法使う流れ?

 それはちょっとどういう風に誤魔化すのか見たいかも。

 布団をぐいと引き上げて、そうっと目を開ける。

 なんだか夢中になっているので、布団に隠れれば気付かれないでしょう。


 ベッドの前で、相対する二人。


 マホちゃんは両の手を大きく広げ、甘南ユズリに向かって威嚇しているらしい。


 その間抜けな事ったらないんだけれど、二人がどんな表情をしているかは、よく見えなかった。


 マホちゃんは立ち位置的に、若干斜めに向いていたせいで、その表情は窺えない。

 対して、甘南ユズリは、下を向いていた。



「命乞いをするなら、今ですよ」



 命取るつもりなんですか、なんて野暮な事を聞ける雰囲気ではない。



「そんなこと、しないよ。だって、貴方じゃわたしに勝てないもの」



 そうして、甘南ユズリは、そんなことしないらしい。

 まあ、きっと魔法なんて出やしない。


 私はその時を今か今かと待っていた。

 スキルなんて無い。魔法なんて無い。

 それを指摘して、転生や勇者なんてバカらしいと吐き捨ててやろうと思ったので、私は今観察している訳だし。



「ふ……っ、行きますよ……!」



 マホちゃんが、右手を大きく天井に向ける。

 この時点で私はもう大分、心が痛かった。

 掲げた右手に左手を添えて、何やら今にも大魔法を顕現させそうな、勢いだけは確かにある。


 勢いだけは。



「スキル発動――」



 対して、甘南ユズリ。

 彼女は声高々にそう宣言して、左手を真っ直ぐ真横へ伸ばす。

 勿論だけれど、特別光ったりだとか、そんな事はしない。

 ただただ勢い良く、手を横へ伸ばしただけだ。


 けれども、それはマホちゃんにとってはとても衝撃的な事だったらしい。



「な……、魔法が……発動しない、だと……」



 魔法使いマホちゃん、魔法使えないそうです。



「ふっ……、魔法無効(アンチ・マジック)



 スキル使いユズリちゃん。あんちまじっく、だそうです。

 ゆっくりゆっくり顔を上げた甘南ユズリは、にっこりと、綺麗に綺麗に微笑んでいる。


 ――ん? つまり、魔法の無力化って事?



「お前……、それは南方の始祖が持っていたという、幻の――」


「そう。わたしは、身体強化や神の御業が使える訳じゃない。けれど、貴方たちにとっては、唯一にして最強の盾と言えるの」


「くそ……ッ、これでは、魔法が使えない……」


「ふふふ、降参しても良いんだよ」


「誰が……ッ、たかが魔法の無力化しか力を持たないお前なんかに……ッ!! ただの人間と、変わらないという事じゃないか……!!」


「そう。でも、貴方だってわたしの前じゃただの人間。同じ人間同士の戦いになれば、身体の大きいわたしの方が圧倒的に有利だよね」


「――いやいやいや、ちょっと待って」



 思わず、口を挟まずにはいられなかった。

 いや、だってさ――



「なんかいい感じに戦ってます感出してるけど、つまり魔法も使えません、スキルも無いですを誤魔化しただけじゃん……!!」






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