朝
「おはよう、舞春、よく眠れた?」
「おはよう、お母さん」
「舞春、おはよう」
「おはようございます。お父さん」
「「おはよー、お父さん、お母さん‼」」
「おはよう。千秋。おはよう。千冬」
朝の挨拶が、繰り広げられる。
母親らしき女性がそれぞれに声をかける。
新聞に目を通して、一足先に朝食を済ませたらしい、父親らしき男性も声をかける。
四宮家の朝は、こうして大体始まる。
ごく普通の一般家庭。
一般生活。
朝ごはんの良い匂いが食卓のある部屋に流れるなか、そこに面した和室から、ラベンダーの「線香」の香りが一筋流れてきた。
千明と千冬が突然「「あ!」」と顔を見合わせると、和室に駆け込んで行った。
「「おはよー、千夏姉ちゃん」」
双子の元気な声に、舞春は母親の手伝いの手を止めた。
ゆっくりと顔を上げると、まだその背の高さを越せない、隣の母の優しい視線と目が合った。
「舞春も行っておいで」
「はい……」
双子の妹と弟が居る時点で、普通の家族構成にはなかなかないと思うが、四宮家には、もう一つだけそれがあった。
舞春は、またゆっくりとした動きで和室に向かった。
六畳の和室にその小さな仏壇は在った。
位牌の隣に、小さな女の子の写真が飾ってある。
仏壇の前で、双子が熱心に手を合わせ、何かお互いにぶつぶつ言っている。
そんな光景を微笑ましく見守り、舞春も、隣に座り写真に挨拶をする。
「おはよう、千夏」
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