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ロードテール  作者: ooi
四章 門外漢
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19話 局地戦と言うべきかチームワークが取れなかったと言うべきか(3)

前回のあらすじ

・大谷戦闘開始

・卯月君の生存確認

 造斧と対峙しながら、創剣は空中に倉庫内の剣を展開した。

 未来を知るすべのある造斧には、基本的に正面からの一対一(タイマン)になったところで、勝つすべはない。何せ、自分の手が割れてしまっているのだから。


 だからこそ、勝つための確立を上げるには、とにかく手数が必要だった。


「エストック!」


 剣の銘を宣言し、創剣は造斧に向かって多種多様な剣を放つ。いくら未来が見えていようとも、降り注ぐ剣の雨を躱すには、少なからず技巧が必要になってくるからだ。

 太陽の光を反射させ、煌めく剣の群れが、造斧を襲う。大小も太さも装飾の量も異なる剣の群れを前にした造斧は、好戦的な笑みを浮かべ、構えていた斧で降り注ぐ剣をさばく。


 斧と剣がぶつかり合い、激しい火花が地面へと零れ落ちる。

 縦横無尽に、しかし、計算しつくした大振りが、まるで雨やあられのように降り注ぐ剣を弾き落とし、そして、最後の一本の大剣を左手で受け止めると、ニッと凶悪に笑って言う。


「創剣の! 落とし物だ!」


 造斧はそう怒鳴ると、装飾の少ない大剣を創剣に投げ返す。すっ飛んできた剣をエストックで打ち払い、虚空の倉庫に消す。うっすらと笑みを浮かべた創剣は、虚空からフランベルジュを取り出すと、地面に降り立った。


「やはり、貴様には千の剣では到底足りぬな」

「当然よ。我を誰だと思っておる。むしろ初手遠距離とは、鈍ったか創剣」


 造斧はそう言うと軽く斧を手元で振るう。金に輝く斧に、自信にあふれた造斧の黒色の瞳。

 創剣は苦笑いするという。


「いや何、ここ半世紀まるでまともに運動していなかったからな。確かに鈍っておる。しかして、()()()()()()()()()


 フランベルジュに炎を宿らせながら言う創剣に、造斧は一瞬驚いたような表情をするも、ニタリと笑顔を返す。

 造斧は肩をすくめると、口を開く。サラサラの金髪が、少しだけ風に揺れた。


「__そうだな、貴様の言う通りよ。我の未来視が、やや不安定になっておる。七武器が見えぬのは想定内とはいえ、小童一人の未来すらずれるとは」

「小童と言うと、あのノアとかいう小僧か?」


 その質問に、造斧は小さく頷いた。

 地に散らばった剣を蹴りはらいながら、造斧はゆっくりと創剣に歩み寄りつつ、その整った唇を開く。


「この世界に来てから、随分荒唐無稽な未来視をしていてな。あの小僧が死ぬ未来はもちろん、貴様が外道に堕ちる未来も見たぞ。世界が滅ぶ未来もあったな。……どれもこれも馬鹿らしくて仕方がない」

「はっ、確かに荒唐無稽よな。ああ、言っておくが、世界が滅ぶ未来に心当たりがないというわけではない。俺様とて、この世界に来た当初は気が立っていたからな。存外、この国程度滅ぼしていたかもしれぬ」


 肩をすくめて言う創剣に、造斧は高笑いを返す。

 ふと、創剣が造斧に質問した。


「よもや、貴様が自衛隊とやらを蹂躙しなかったのは、俺様がこの世界を滅ぼすと思ったからか?」

「……否定はせぬ。友が魔王になり下がるのを見届けられるほど、我はできた王ではないからな」

「なるほど、魔王か。それもまた面白そうだったな」


 フッと笑みを浮かべて言う創剣。結局のところ、創剣は退屈さえ感じなければ、何でもよかったのだ。

 真顔に変わる造斧。彼自身、創剣がかつてのころと異なってきていることは感じていた。だからこそ、同じく七武器の一柱である造斧は、この世界に残ることを決めたのだ。


 だがしかし、今の創剣は、もう違う。未来に絶望し、流れるときの残酷さに喘ぐあの時とは。

 静かな怒気を発する造斧に、創剣は笑って言う。


「しかして、今は気に入った街があり、書類上とはいえ娘を持ち、この国に根を下ろしている。わざわざ気に入ったものを地に叩きつけようとは思わんな」


 すがすがしい笑顔を浮かべる創剣に、造斧はあっけにとられる。

 その表情は、王としての責務を果たしているときの創剣と言うよりかは、『己』を見出すために七人で旅をしていた頃の、あの無邪気な笑顔に似ていた。


「……フハハハハ、何だ創剣。一番最後に会ったとき、今にも死にそうな顔をしておったが、調子が戻ったか」

「ああ、今は実にすがすがしい気分よ。自由とは、ここまで気が楽になるものだったのだな」


 まさに、見たことも無い地を旅できたからな、と付け加える創剣。その表情は、実に楽しそうだった。

 造斧は、少しだけ安堵したような表情を浮かべ、そして、斧を構えた。


「なら、話はこれで終わりでよかろう」

「そうさな、造斧よ」


 創剣はそう言うと、無造作にフランベルジュを振るう。

 横一文字に飛んできた炎の刃を斧の一振りでかき消し、追撃のため一歩踏み込む造斧。そんな彼に、創剣もまた間合いを詰め、一部の隙も無く剣を振るう。


「__千の剣で倒せぬなら、万の打ち合いで競り勝てばいい、そうだろう?」

「フハハハ! 貴様、剣の扱いが下手なくせによく吠える!」

「阿呆、基準を匠拳(武術バカ)形槍(女たらし)に合わせるでないわ!」


 斧と剣を打ち合いながら、創剣は怒鳴り返す。

 しかし、造斧の言う通り、実のところ創剣は剣の性能に頼りきりであるため、技術的な問題は常に抱えているのだ。


「【ストーンブラスト】改め、【ソードブラスト】!」


 懐に忍ばせていた剣のキーホルダーを起動し、地面に散らばっていた剣を造斧の背後から操る。同時にフランベルジュを片手持ちに切り替え、開いた左手にエストックを呼び出す。


「エストック!」

「ぬっ?!」


 背面と前面の両方から剣の射撃が飛んでくる。造斧は少しだけ目を見開き、そして落ち着き払って斧の柄でアスファルトの地面を突き、呪文を詠唱する。


「【ファストバリア】」


 次の瞬間、造斧を守るように現れた半球の結界。

 すさまじい衝撃と土煙の後、残ったのはまばらに剣が突き刺さり、大きくヒビの入った結界と、少しだけ冷や汗をかいた造斧の姿だった。


「そんなのアリか、創剣の!」


 斧で邪魔になった結界を払いながら怒鳴る造斧。

 そんな彼に、創剣は高笑いをした。


「ふはははは、見たか、俺様の新作の剣……剣? だぞ!」

「悩むでないわ!」


 額に青筋を浮かべてそう怒鳴る造斧。一瞬先の未来を見ていなければ、今頃あの剣の群れによって粗挽き肉に変えられていたはずである。

 軽く舌打ちをしてから、今度は造斧が仕掛けた。


「【バイタリティ】、【魔力強化】」


 短い詠唱の後、金の光が造斧の斧と全身を覆う。そして、そのまま創剣の方へと間合いを一気に詰める。


 即座に近距離まで詰められた創剣は、一瞬目を見開くも、即座に両手に持っていた剣を虚空に消し、ただ固いだけの二本の剣を両手に持ち、交差してその振り下ろしを受け止める。


 次の瞬間、凄まじい金属音とともに、創剣の腕がへし折れる音が響いた。


「ぐぅっ!!」


 小さく悲鳴を上げる創剣。力が入らなくなった右腕に、両手の剣を地面に捨てると、虚空の倉庫から無名の剣を取り出し、一気に空中に逃げる。


 振り下ろしの勢いに従い、地面に叩き下ろされた金の斧は、アスファルトを大きくえぐり取る。あの場にいれば、薪の如く真っ二つにされていたはずだ。創剣の背に冷や汗が伝う。


 体内の小刀が勝手に腕を治していくのを感じ取りながら、創剣は虚空の倉庫からエクスカリバーを取り出す。

 このまま双方が全力で戦い続ければ、この地が滅ぶと判断した創剣が、短期決戦を判断したのだ。


 無名の剣で加速をしながら、創剣はエクスカリバーで造斧に切りかかる。


「ッフハハハハハ! 見切っておるぞ!」

「知っておるわ、阿呆め!」


 エクスカリバーの振り下ろしからカウンターの起点を作ろうとした造斧。しかし、先の先を考えていた創剣は、当然のようにそれを回避すると、連撃に持ち込んだ。


 腕を狙った切り払いを斧でかち上げ、浮いた腕を切り落とそうと横なぎに振り払われた斧をステップで回避し、振り上げた格好のままだった腕を振り下ろして首筋に振り下ろされた剣は、斧の柄で防がれる。

 一息の間の攻防。双方、もはや勘と本能で動き、頭はあとからついてきていた。


 縦横無尽に斧を操る造斧に対し、創剣の剣遣いは拙いと言わざるを得ない。

 造斧は凶悪な笑みを浮かべると、創剣を煽る。


「どうした、創剣の! 万の打ち合いに競り勝つのではないのか?!」


 一手先を読むことのできる造斧は、打ち合いに関しては敵なしである。それこそ、己の実力を軽く凌駕するような圧倒的な差がなければ。


 造斧に煽られた創剣は、一瞬表情を歪めるも、即座に次の手を模索する。

 閃く斧を回避し、創剣は再度エストックをその手に持つ。そして、エクスカリバーとエストックの二刀流で造斧の次の叩き切りを受け流す。


「【ソードブラスト】、いい加減倒れんか!」

「【ファストバリア】! 我は我が勝つ未来を見た! その未来をなぞるのみよ!」


 まるで石礫の如く飛来する剣を背後だけ魔力の盾で防御し、エクスカリバーでの刺突を斧の腹で受け止める造斧。

 そんな造斧に、創剣は煽り返す。


「貴様もついに耄碌したか?! 勝つのは俺様だ……!」

「……っむぅっ!!」


 エストックの導きで虚空の倉庫から射出された剣。

 躱そうとした造斧だが、背後には自分が先ほど作り出した魔力の盾。見えた己の未来に、造斧は急所だけを斧で守る。


「ぐぅっ……!」

「……っふう、勝負、あったな?」


 酷い疲労を感じながらも、創剣は造斧に言う。


 虚空の倉庫から射出された剣によって、造斧の足はアスファルトに縫い留められていた。肉を貫通しているため、造斧の靴からは赤い液体がこぼれ、地を濡らしていた。


 しかし、造斧は不敵な笑みを崩さずに言う。


「たわけ! 言っただろうが、()()()()()()!」

「……?」


 妙な自信を持つ造斧。

 理解できずに眉をひそめる創剣。


 そして次の瞬間、創剣は造斧の言葉を身をもって理解した。


 風を切る、小さな音。

 背中から胸を貫通した、一本の矢。


「__ガフッ!」


 肺が裂かれ、苦しそうに血反吐を吐く創剣。後ろを見れば、そこには、次の矢をつがえていたノアが立っていた。


__結界は……!


 見てみると、結界を維持するために使用していた短剣が一本、倒れて転がっていた。どうも、戦いの余波の地震で抜けてしまったらしい。

 

 いくら不死身の体とはいえ、痛いものは痛い上、苦しいものは苦しい。いくら呼吸しようとも空気を逃がしてしまう肺に、痛覚と呼吸困難の地獄の苦しみを味わう羽目となった創剣は、盛大に舌打ちをする。


 そして、エクスカリバーとエストックを虚空に消すと、装飾華美な剣、グラディウスを手元に呼び出し、そのまま姿を消した。


 創剣の撤退、つまり、造斧の勝利である。


「造斧様!」

「よくやった、少年! 後で何か褒美でもくれてやろう!」


 機嫌よさそうな造斧は、ノアの頭を撫でようと足を踏み出そうとして、剣が足を縫い留めていることを思い出す。


 造斧の不死性は、不老であることと運命が己を守ることに起因している。つまり、肉体的な損傷は創剣のように勝手に治るということはない。

 造斧は軽くため息をつくと、足を縫い留めていた剣を引き抜き、回復魔法を唱えた。

【現在の戦況】

・創剣:造斧との戦いに敗れる(敗因、ノアのバックアタック)→戦線離脱


・卯月:自由派と戦闘中

・大谷:創剣&木原と戦闘中

・浅井&メフィストフェレス:形槍&ローブの男と戦闘中

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