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ロードテール  作者: ooi
四章 門外漢
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16話 王(剣を創る方)と王(未来予知する方)

前回のあらすじ

・バイクで移動中の飯田&大谷

・戦闘開始した卯月

 卯月が自由派との戦闘を開始したころ。

 ロータリー上空に待機していた完全装備の創剣は、突然商店街の入り口に戻され、大変不機嫌であった。


「……空間魔法の一種か? それとも、黒の門の影響か?」


 考察をしながらも、創剣は無名の剣で空中に留まり続け、創剣は周囲を確認する。浅井は見当たらない。どれだけ門の近くにいたかによって転移させられる距離も異なっているのだろうか。


 創剣は小さく舌打ちをしながら、門の方へと移動する。とにかく、浅井たちの結界は成功していた。

 あの強度の結界なら、二時間やそこいらは内外共に結界を通り抜けることは叶わない。あれほどの魔術なら、創剣とてエクスカリバーなどの銘ありの剣を抜く必要があるほどだ。もちろん、グラディウスを使って結界をすり抜けるなら話は別なのだが。


 地上では、門の前に待機していた自衛隊所属の召喚士たちが真っ青な顔をして、無線に向かって連絡を入れ続けている。創剣は一瞬だけ目を向けたが、すぐに興味を失っていた。


__その通信機に話しかけたとて、何になるというのだ。


 心の中で彼らを嘲笑しながら、創剣は移動する。もちろん、グラディウスを使うという手もあったが、創剣の仕事、後衛の任務を考えると、できれば召喚士たちと距離をとりたくはない。商店街に関しては、卯月がいる以上、さほど気にしなくてもいいことである。


 それなりに卯月を信用している創剣は、無意識のうちに警戒対象を絞り、姿隠しのキーホルダーを手元で遊ばせたまま、比較的ゆっくりと黒の門の方へと向かう。


 そんな中、創剣の遥か下で動き出したものがあった。


「剣聖、とにかく行くぞ!」

「わかっています、木原様!」


 完全装備のまま、全力で駆け出す木原と剣聖。


__まあ、予想通りと言ったところか……


 先んじて動いた木原に続くように、召喚士たちは動き出す。

 馬に似たパートナーに騎乗し、道を駆け抜ける青年、大きな鳥にしがみつき、空を飛ぶ少女。巨大なワニのようなパートナーと地面をかける男性。


 木原には、一種のカリスマ性がある。

 この行動が、軍事的に正しいかと言えば、否である。命令に従い、軍師に従い、作戦を遂行することが軍事であるためだ。だがしかし、この行動に意味がないかと言えば、否である。


 創剣は小さく口元を歪める。

 怒りではない。愉悦ゆえだ。


__あやつもまた、英雄としての才能がある。あの阿呆とは似て非なる、大英雄の才が。


 複数の仲間とともに、道を駆け抜ける木原。彼に付き従う女騎士(剣聖)。その様は、さながら英雄譚(サーガ)のようで。

 しかして、創剣には不思議と、木原の道筋を眺めたいとは思えなかった。


__王道(テンプレート)も面白いが、やはり、あやつにはやや共感できぬところがあるからな……


 創剣とて、木原の歩んできた道が三流の英雄譚とは言わない。むしろ、超一流と言えるだろう。

 訳アリの女騎士とともに世界を救う戦いに身を投じ、死にかけるような怪我をしながらも歩みを止めず、竜殺しを果たした。異国の地に赴き、人々を救った。復讐の呪いに蝕まれた女騎士を、その声で正気に返らせた。

 それらが英雄と言えずして、何と言えばいいのだ。


 結局のところ、創剣の好みの問題である。

 王道にしても王道を突き進む、木原の英雄譚がタイプでなかったのだ。あるいは、英雄たる素質を持ちながらも、あくまで平凡な英雄に過ぎない存在を先に見てしまったがゆえに、面白みを感じなかったのかもしれない。


 宙に浮かんだまま、創剣は木原と剣聖の行く末を眺める。ああいった手合いは、壮大なハッピーエンドか、もしくは道半ばで死ぬしか道はない。それこそが、彼の持つカリスマ性であるのだが。


「……む?」


 ふと、創剣は人波の中に妙な魔力を感じた。

 この世界のものではなく、また、弱小のパートナーが放てるようなものでもない。


 そして、それを見つけた創剣は、ニタリと口元を歪める。


「造斧……戦いに参加しておったのか……」


 巨大な斧に、軽装ながらも魔術的付与の施された豪華な衣装。腕には、聖銀(オリハルコン)の籠手。そばに控えている少年に何やら話しかけているらしい彼は、造斧その人であった。


 先行していた木原たちをそのままに、創剣は薄く笑みを浮かべたまま地面に降り立ち、姿隠しのキーホルダーを虚空の倉庫に投げ込んだ。


 唐突に表れた創剣に警戒を露わにする少年と、そのパートナーらしきオオカミや青色の鳥。

 それに対し、造斧は冷静そのものであった。


「……ふむ、創剣ではないか。久しいな」

「久しいというほどあっていないわけではなかろう。ざっと五十年ぶり、と言ったところか?」

「そうさな、その程度であったか」


 寿命の縮尺が人間のそれとは異なる彼らは、そんな挨拶をしてから互いに笑いあう。そこに緊張感はかけらも存在しておらず、久々に会った友との再会を喜ぶ友人の顔であり、姿であった。


「ところで我、そんな剣見たことなかったが、創ったのか?」

「む? これか? 倉庫をあさったら見つかってな。そこそこ使い勝手が良いため、この世界で使っているのみよ。で、貴様は? そっちの子供はどうした?」


 創剣の質問に、造斧はいたずらっぽく笑うと言う。


「我の子、って言ったら驚くか?」

「はははははっ! 貴様の妻の人数を考えれば、別に驚きもせんわ」


 フレンドリーな二人の会話に、置いてけぼりにされた少年、ノアは、弓に手をかけながらもひたすら困惑していた。正直、ここまで機嫌のいい造斧は見たことがなかったのだ。

 納得しかけている創剣に、造斧は肩をすくめて言う。


「冗談だ。こやつは我の仮契約者よ」

「わかっておる。噂には聞いておる、そやつが自衛隊所属の召喚士の『ノア』とやらであろう?」

「うむ、知っておったか」


 少しだけがっかりした様子の造斧。どうやら、この少年の自慢がしたかったらしい。

 創剣は軽く肩をすくめると、造斧に問う。


「むしろ俺様は意外であったな。よもや貴様が仮とはいえ召喚士と契約するとは」

「何、つまらん未来は造りなおすまでよ」


 造斧は高笑いをしながら言う。その言葉に納得した創剣は、軽く頷きながらも口元の笑みを引き締める。

 そして、金属製の籠手が、斧の柄を撫でた。


「時に問うが、創剣の。貴様、それなりにこの町を好いているであろう?」

「……まあ、気に入ってはいるな。俺様が直々に統治してやってもいいと思えるくらいには」

「大好きではないか貴様!」


 腹を抱えて大笑いする造斧。しかし、その黒く輝く瞳には愉悦とともに一種の敵意にも似た熱を孕んでいる。

 創剣は、口元に美しい笑みを浮かべたまま、氷のような瞳をさらに冷ややかに細め、問う。


「何だ? 貴様は俺様のお気に入りに手を出すと?」

「まさか。我とて無辜の民が意味もなく死ぬのは夢見が悪い。故にどうだ、貴様確か、結界を作り出せる剣を持っていたであろう?」

「ふむ……まあ、よかろう。しかし良いのか?」

「構わぬ。我とて、軟禁状態が続けば暇なだけだからな。どうせこの調子では観光もできなかろう」


 主語を抜かした会話に、言葉ならび。双方が深い知り合いであるが故の言葉の飛ばし方であった。


 ややピリピリとしてきた空気に、ノアは表情を引きつらせる。パートナーたちも、ノアを守るために警戒をしている。文字通り、空気が変わった。最初の和やかな空気から一転し、突然戦いの直前のような、殺気の満ちた戦場の空気に。


 創剣はまるで蛇のように目を細めると、虚空からエストックを取り出し、軽く振るう。


「さて、そこな小童。疾く逃げておけ。結界も所詮は気休めでしかないからな」

「……っ!」


 造斧に声をかけられたノアは、ピクリと体を震わせ、一礼してから走って本部へと向かった。こうなった造斧は、止めることができないのだ。


「そうそう、先に行っておくが、俺様も仮契約で現在契約を結んでおる人間がいる__腹立たしいことにな」

「ふむ、ならば、双方気をかけずに全力で戦ったとて、国を亡ぼすほどの暴挙はできなかろう」


 仮契約の縛り、契約者の信じる法律の順守を持ち出し、そう言う造斧。創剣も首を軽く回すと、ノアが離れたことを確認し、エストックで空を切り裂いた。


 虚空の倉庫から現れたのは、六本の短剣。それらはエストックの操作によって等間隔に地面へと突き刺さり、正六角形の平面を描いた。


 広さは、おおよそ一片30メートル前後と言ったところだろうか。

 その範囲に、造斧は首をかしげると言う。


「いいのか? それほど狭ければ、貴様はそこまで暴れられなかろう」

「口惜しいことに、建物の損傷も法に引っ掛かるからな。あまり広くとることができぬのだ」

「なるほど、貴様も難儀しているな」


 黒の瞳を同情に細め言う造斧。創剣は長い白銀の髪を小さく横に振った。


「なに、それなりにこの世界を楽しんでおる。貴様のところでは確か食べない魚だろうが、蛸の刺身はなかなかによかったぞ?」

「うわ貴様、あんなよくわからんモノ、良く食えるな。ないわー」


 ドン引きする造斧。砂漠の国である造斧の国土には、海がないわけではないが基本的には内陸のオアシスで育てられる淡水魚がメインであるため、蛸や烏賊、ナマコなどのひれのない魚は敬遠されがちなのだ。


「やかましい! 貴様とてサボテンやらサソリやらよくわからんものを食うだろうが!」

「阿呆、サボテンは品種改良してあるし、サソリは薬用だ! 目的もなく意味の分からんものを食らうとか、どんな精神しておるのだ!」

「はっ! チャレンジ精神だ!」

「ちょっと面白かったではないか!」


 脱線しまくった二人は、結界が成立したことを確認してから、互いの武器に手をかける。


 口元に堂々たる笑みを浮かべた創剣は、一つ咳き込んでから口を開く。


「何、俺様もここ最近、歯ごたえのある敵と戦えておらんのでな。たまには全力で友と遊ぶのもまた一興」

「左様。我とて時々は体を動かさねば、目も曇るというものよ」


 黒と、青がかち合う。二人の発する気迫に押され、その場に留まっていた自衛隊員たちが数名、その場で気絶した。


 低い声が、響く。

「エストック!」

 空の元、そびえるようにして輝かしい剣の群れが一斉に整列する。


 一拍の後、堂々たる声が、空気を揺らす。

「我の勝利を宣言する!」

 地を踏みしめ、斧を構え、まっすぐと立つ造斧。




 そして、白銀と金が交差した。

【現在の戦況】

創剣:造斧と交戦開始

木原&剣聖:門に向かって移動中



卯月:自衛隊と協力し、自由派と交戦中

大谷&飯田:バイクで移動中

浅井&メフィストフェレス:現在行方不明(黒の門の強制転移に巻き込まれた?)


???:門の前で避難誘導中

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