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ロードテール  作者: ooi
四章 門外漢
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15話 マジで? そんなのアリ?

前回のあらすじ

・相模ちゃんがヒロインし始めた

・浅井ちゃんが結界をはった

 バイクで移動していた大谷と飯田は、スピードを落とさずに細い路地に入り込んだ。理由は簡単、後ろから追いかけられているからである。


「くっそ、こんなの免許の実技試験でやったら一発不合格だ!」

「ごめん、助かる」


 追いかけてきているのは、複数体のオオカミ。体の大きさからしても、召喚士のパートナーであることは十分に理解できていた。

 姿を隠す魔法を使っていたとしても、排気音と匂いはごまかしようがない。二人はそこを付け込まれて追いかけられていた。


 一応、大谷は五匹以上はいると思えるオオカミたちを倒しきれないわけではない。だがしかし、己の役割としては、魔力の無駄遣いをするわけにはいかないのだ。


「後、百メートルで大和町。この路地は、ナビだと駅前商店街につながっている」

「わかった! しっかり掴まっておけよ、大谷! ただでさえ遅刻気味なんだ!」


 飯田はそう言うと、荒っぽくバイクのアクセルを限界まで回しこむ。

 愛車の黒色のバイク。飯田は時々、このバイクで峠をかっ飛ばしたりもしている程度には運転技術があった。一応、車にひかれた一件を除けば、飯田はこれまで無事故である。


 なお、余談ではあるが、飯田がモテない原因として、趣味がバイクだから、ということもある。バイトしたお金も生活費と学費を除いた自由に使えるお金は、ほとんどバイクにつぎ込んでいるため、金遣いが荒いと敬遠されがちだったのだ。

 もちろん、愛車ということもあって、この黒色のバイクにも名前を付けているが、これはまた別の話だろう。


 強烈な遠心力とともに、飯田はフルスピードで角を曲がり、そのまま商店街を目指す。風を切る音と、タイヤとアスファルトが擦れる音が響く。むせかえるような排気ガスのにおいに、飯田は脳内のアドレナリンが沸き立つのを感じた。


「っははは! ツーリングとか彼女とやりたかった!!」


 極度の集中に感情が揺さぶられ、飯田は大爆笑しながら叫ぶ。


「……彼女、つくるの、がんばって」

「純粋に応援してくるのやめてくれない?!」


 路地に転がった空っぽなスプレー缶を躱しつつ、飯田は言い返す。

 最後のコーナーを一息に曲がり切り、そして、最後の直線に入り込む。


「?!」


 次の瞬間、大谷は思わず目を丸くした。

 そこにいたのは、道を塞ぎ、侵入者を警戒する自衛隊だった。


「……不味いなぁ……!!」


 飯田はそう言う。

 しかし、その口元には笑みが浮かんでいた。


 道を完全に封鎖し、おまけにかなりの人数が密集しているため、人並みを縫って運転するのは不可能である。そして、此方はバイクとはいえ、引けば人が死ぬ可能性もある。


 だが、ここで止まるという選択肢はない。止まって待っているのは、オオカミどもの襲撃と、自衛隊からの挟み撃ちの攻撃のみ。さらに言えば、ここまで来るのに使った燃料の無駄だ。


 一瞬の逡巡。

 そして、飯田は道なき道の行く末を見つけた。


「捕まれ、ファイター! ()()()()()()!」

「……!」


 二つ名を呼ばれ、驚く大谷をよそに、飯田はさらにエンジンをふかし、加速する。バイクの排気音が路地に響き、見えない敵に自衛隊たちはいっせいに警戒を深めた。


 一瞬の空白の後、一気に加速した黒色のバイク。

 飯田は少しでも下手に傾けようものなら転倒しかねないハンドルを、集中して握り締める。


「……うっし、行くぞ!」

「……」


 大谷は最早黙っていることしかできない。頭の中では回復魔術の展開の準備を繰り返しては、防御魔法の展開をすべきかどうかで悩み、思考はループする。


 そんな大谷に気が付かず、飯田は一気に壁の方にすり寄り、そして、路傍にひっそりとたたずんでいた、もともとは何かが植えてあったのだろうプランターに乗り上げると、そのまま前輪を持ち上げる。


「ハハハハハハハハハハハッ!」

「___!」


 高笑いを上げる飯田。声なき悲鳴を上げる大谷。

 次の瞬間、重力と言う名前の足かせによって地面に縛り付けられていたバイクは、宙を舞い上がる。


 吹き抜ける風に、目の前から突撃してきたオオカミ。パニックになっている自衛隊の頭上を文字通り飛び越え、大谷と飯田は自衛隊の封鎖を抜けた。


 危なげなく地面に着地したバイクが転倒しないよう、細心の注意を払う飯田。

 そして、飯田にしがみつきながら、大谷は心の中で誓う。


__二度と魔法以外で空を飛ぶ行為をしないでもらおう……


 排気ガスとガソリンの残り香がほんの少し、路地裏に残された。





__どういうことだ……?


 卯月は、誰もいない商店街の中心で、ただひたすら困惑していた。


 後ろには浅井が張ったであろう結界と、黒い門がそびえたっている。しかし、いるはずの自衛隊も、自由派の召喚士も、パートナーも、浅井たちすらもいない。


 今回の作戦用のスマホを見てみれば、現状が異常事態であることは歴然であった。まず、事前の連絡があったものの、大谷と飯田が遅刻している。創剣は現状音信不通であり、浅井とメフィストフェレスはついさっき消失した。


 現状、封鎖されているはずの商店街にいるのは、招かざる廃棄物か、不埒な召喚士、そして、その召喚士たちに付き従うパートナーのみである。


 卯月は、思考する。


__どうすればいい? 作戦続行は実質不可能……かといって、あの黒の波に単身で乗りこむのは、自殺行為……せめて創剣がどこにいるか分かればいいが……


 素早く浅井と創剣にチャットを送りつつ、卯月はその場に待機する。


 ここから先には、通さない。そして、ここの商店街に不埒な行為を働くものは、許しはしない。


 それが、廃棄物だろうが、人間だろうが。


 バットを握り締め、卯月は商店街の入り口を睨む。動乱と混乱の悲鳴の上がるそこには、暴れているパートナーと、パートナーに指示を下す召喚士たちの姿があった。


「行くぞ【自由派】! 自衛隊による願いの権利の独占を許すな!」

__願いの権利、自衛隊はほぼ手に入れてないけど、知らないのかな……?


 首をかしげたくなるような内容を、安っぽい拡声器で怒鳴るのは、狐面を付けた男。確か、『マサ』とかいう名前だったか。彼が従えているのは、見覚えのあるゴリラにも似たパートナー。確か、銀行強盗の時に見たパートナーではないのだろうか?


 発砲音と怒号、破壊音が響く。

 自由派の召喚士たちは、己が黒い門を破壊するため、自衛隊による完全防備を乗り越えんとその力を振るっている。対する自衛隊も負けず、強化プラスチックのシールドと警棒、非殺傷性のその他武器と言う、あまりにも心もとない装備で対抗する。


 一部隊員は魔法による回復や強化で味方を応援しているが、多数に無勢と言ったところだろうか。戦局はやや自衛隊不利と言ったところだった。


 正直なところ、双方の共倒れを望みたかったが、しかしてそれは叶いそうにも見えない。と言うよりかは、少々胸糞が悪い。


__自由派の連中、自衛隊が召喚士を殺せないと分かって、パートナーを前衛に出しているな……。


 見ていて、血を流しているのは自衛隊員とパートナーのみで、召喚士たちは命令を下しているのみ。時折拳銃や何やらで攻撃している者もいるが、あくまでも後方の比較的安全地帯での攻撃にとどめている。


 確かに、召喚士として正しいのは、ああいった行動だろう。強力な前衛に戦線を維持させ、後方からの援護に徹する。

 だがしかし、その対象が自衛隊……人間であるなら、話は別である。


 卯月は、ゆっくりと足を踏み出す。そして、空を飛んで門へと専攻しようとしていたパートナーらしき紫色の怪鳥をバットを投げて撃ち落とす。

 墜落した怪鳥は、耳障りな絶叫を上げ、卯月の後方に落下する。


__足のコンディションは、良好。少しなら全力疾走できそうだ。


 手元に少しだけ凹んだ金属バットを呼び戻し、卯月は目の前の戦場を睨みつける。

 自由派の人数を削る。自衛隊にはせめて、不埒物の捕縛をしてもらえればそれでいいだろう。


 卯月はバットを振りかぶり、先んじて自衛隊の防備から抜け出し駆け出そうとしてきた召喚士の側頭部を殴打した。


 戦いは、各地で始まっていた。

【現在の戦況】

卯月(トップバッター):駅前商店街入り口で自衛隊の応援、自由派と対峙

大谷&飯田:現在バイクで爆走中(大和町に向かっている)


創剣:行方不明

浅井&メフィストフェレス:行方不明

相模:小学校の避難所にて、松里に話しかけられてタジタジている

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