7話 自己紹介
危なかった。
もう少しで先輩を怪我させるところだった。
暴力的で好きじゃなかった国士無双スキルも、やっぱりもっと使わなくちゃ制御出来ないよね。
制御出来ないから使わないし、使わないから制御出来ない。無限スパイラル。
でも、今後こんな事があるのも嫌だし、ちょっと練習してみようかな?
ふと見ると真っ赤な顔でコッチをジッと見つめる、ちょっとポチャッとしている先輩。
これはあれかな?完全に怒らせてしまったかなぁ?
「ホントにごめんなさい。ちょっと力加減を間違えてしまいまして……」
「あ……はい……」
ジーーーーッ
なんだろう?めっちゃ見られてる(汗)
思わずボクも目が離せなくなってる。
あ!あれかな?睨まれてるのか!?
先輩!大丈夫です!キャッチした時にパンツなんて見てません!
それに、そんな可愛らしい顔で睨まれても恐くないです!
しかし、初対面でこんなに睨まれてるなんて第一印象ガタ落ちだろうなぁ。
『友達たくさん計画』また1歩遠退いたなぁ(涙)
独り落ち込んでると、お尻に衝撃がきた。どうやら小さい同級生部員が蹴ったらしい。
「セクハラ男、シンディちゃん離せ」
え~と、シンディちゃんっていうのは、このぽっちゃり先輩かな?
ハッ!として慌てて先輩を下ろす。
「失礼しました!」
「あ……いえ……」
それにしても国士無双スキルがアクティブ中なのに衝撃が来るって、この小さい身体の何処にそんな力が?
この娘も剛力系のスキルホルダーかな?
「驚いたな、まさか3人掛かりでも跳ね退けるなんて!まぁいいや、改めて自己紹介といこう!」
部長が一瞬ポカンとした顔をしたけど、すぐに笑顔で自己紹介に戻った。
「副部長を任されている。エルフド・グ・サンドラディアナという。」
「名前長いからサンディって呼んでるよ」
背の高そうな、いや実際かなり高い先輩が自己紹介を始めて部長が補足した。
175センチ位かな?細身でスラッとしたモデルみたいな人だ。えらく固い喋り方をするなぁ。
あ!耳が長い!この先輩、エルフだ!
視線に気が付いたのか、サンディ先輩が微笑む。
「お察しの通りエルフだが、この学園ではそんなに珍しくはないであろう?」
確かにうちのクラスメイトにも1人、1学年でも数人はエルフを見掛けたけど、それはこの学園が特殊なだけで街では殆ど見掛けない。
生徒は学生寮に住むから街には出ないからだ。
ボクが編入生でなければ日常的に見ていただろう。
「あ、あの……新田マグナ…です。よろしくお願いします……」
ぽっちゃり先輩は良く見たら耳と尻尾がある!何の獣人だろう?犬…にしてはえらく丸い耳だなぁ。
そして新田でシンディか。
「シンディは狸の獣人のだけど、化かしたりしないから安心してね!」
部長が要らない補足もしたけど補足してくれた。
あ、小さい娘に蹴られて悶絶してる(汗)
それにしても狸かぁ。丸い耳とフカフカ尻尾は狸だったのか。
ちなみに狸の獣人が人を化かすなんてのは、昔話や物語の中には良く出てくるけど、そんなのは大昔の獣人国が鎖国してた時代の作り話だ。比較的人里に近い地域に住んでたからそんな噂が立ったんだろうね。
「次はミンディだね」
「フンッ!」
あちゃ~、これは新田先輩より嫌われたなぁ。そして部長、復活早いなぁ。
「ミンディ……彼が入部しないと廃部だよ?」
「セクハラ男要らない」
「ウチが廃部になったら、特進クラスでトップのミンディは自動的に補習コースに移されるって、顧問の先生が言ってたよ」
「構わない。シンディも補習コースに行くって言ってた」
「そしたらシンディとは学年が違うから教室バラバラだね」
「!?」
学園では学年毎に成績優秀者から1クラス分集めてワンランク高い授業を行う特進クラスというものがある。ミンディ?はどうやらそのクラスで、しかも成績トップの生徒らしい。
部活動もその時間を勉学に充てる補習コースを選ぶ生徒が多く、学力向上に意欲的だ。
ボク?普通クラスですが、何か?
「美並かぐら」
ポツリと渋々告げると、また部長を蹴ってた。
ミナミだからミンディって苦しくない?あぁ、シンディに合わせたかったのかな。
「ミンディはね、ドワーフなんだよ!珍しいでしょ?この学園でも1人だけなんd…グフッ」
部長、復活はっや!そして、また蹴られた!
ドワーフは珍しい。街ではもちろん学園でも見たことなかったが1人だけなんだね。寂しくないのかな?
今は新田先輩にベッタリみたいだけど、寂しいからかも。
部長の和井頭さん、副部長でエルフのエルフド・グ・サンドラディアナさん、狸獣人の新田さんに、美並さんね。
とりあえず向こうの自己紹介は終わったみたいだから、ボクも自己紹介しておいた。