6話 スキルが強スギル
スキル使うか……
う~ん。
正直、スキルは使いたくない。
力が強くなるスキルは豪腕とか鉄腕とか、丈夫になるスキルも鉄壁とか要塞とか色々ある。
その中でも国士無双は比較的上位スキルに当たるらしく非常に強力で、扱いもピーキーだ。ボクは未だ制御出来ていない。先日も寝惚けて自宅トイレのドアノブを壊したばかりだ……
スキルは多ければ良いってもんでもない。とさっき言った理由のもう1つがソレ……
扱い切れなければスキルの暴走で怪我や事故の元になる。
シングルスキルホルダーの人も、むしろ1つのスキルの扱いに集中するために熟練度が上がりやすく暴走しにくい為、決して劣っているというわけではない。
スキルが進化や変化するのは殆どシングルの人だし。
ボクはトリプルだけど実質ダブルスキルホルダーにも関わらず国士無双を制御出来ていない(汗)
だから使いたくはないが、部長も部員も退く気がないなら仕方無い……
(スキルアクティブ!国士無双!)
心の中で念じる様に発動すると、身体の芯が熱くなるような感覚がして力が湧いてくる。耐久力も上がる為、腕や背中の痛みも無くなる。
ここから腕立て伏せの要領でソ~ッと立ち上がろう。部員の皆を怪我させたくはないしね。女の子だし。
ボクが立ち上がりかければ皆も諦めて退くだろう。
ソ~ッと、ソ~ッと…ぐいッ!!
バッ!!
「「「えっ!?」」」
「きゃあっ!!!」
ダメでした!(汗)
国士無双による身体強化は時に反応速度にも影響する。
緊張していたボクはソ~ッと起きるつもりが、相当な速度で起き上がってしまった……
両腕の女生徒は腕を離してしまっただけで済んだが、背中の女生徒はそうはいかない。ボクが起き上がった勢いで天井近くまで放り出されて悲鳴をあげている!
幸い、跳ね上げられたのがほぼ真上だったので、スキル発動のままキャッチに向かう!
今の握力だと危ないので、握らない様にお姫様抱きでソッと受け止める。
「ごめんなさい!怪我はありませんか?」
「あ……はい……」
吹奏楽部の部室がある部室棟は旧校舎にあたる。校舎を新設した際に堅牢なこの校舎は部室として残されたのだ。
長い歴史の中で何度か建て替えられた校舎で、現存する中でも比較的古く学園が栄えていた頃に立てられたこの校舎は新設された教室よりも広く天井も高い。
これがさっきまで居た校舎だったら、背中の先輩は天井にぶつかって怪我していた可能性もある。本当に良かった。
ふと見ると腕の中で先輩の顔が真っ赤だ。そりゃいきなり空中に跳ね飛ばされれば吃驚もするよね。
申し訳ないです。