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部活の後輩と付き合ってみた  作者: きりんのつばさ
冬休みにて
319/327

バレンタイン~国木田と七海 後編~

「じゃあ食べるね」


「さぁさぁどうぞ~!!」


僕は丁寧にラッピングされた梱包を開けて、中にあるチョコを取り出した。

……うん、()()()は普通のチョコだ。

そしてそのチョコは表面に細かいチョコが散らばっている様子から想像するとクランチチョコであろう。


「センパイどうですか~? 私の渾身の出来であるトリュフチョコは?」


「……」


……うん、僕の予想見事に外れる。

いやだってさ、トリュフチョコって普通表面に凹凸が無いのを想像するじゃん。


「あれ、どうしたんですかセンパイ? 表情が固まっていますよ」


「い、いやなんでもないよ。じゃあ食べるね」


「それって先も言ってましたよね? はいどうぞ」


ま、まぁ見た目は僕の予想を超えたけど、味は大丈夫……いやなんか妙に心配になってきた。

いや与謝野さんや凛子さんが一緒に隣で作っているから変なものは入れてないだろう。


「あっ、そういえばセンパイ」


「な、なんだい七海」


「実は与謝野先輩や凛子には秘密で隠し味を入れたんですよ~」


といたずらっ子のような笑顔をしながら言う七海。

……勝手に人の不安のフラグの伏線を張らないで欲しい。

というかなんでそんなことしちゃうかな……。

多分この子は分かってないと思うけど料理初心者が一番やってはいけないことってレシピにない調味料や具材を自分の判断だけで入れることなんだと僕は思うんだよね。


「へ、へぇ……ちなみに何を入れたのか教えてもらえる?」


「それはヒ・ミ・ツですよっ!!」


……ここでその答えはやめて欲しいかな。

余計に僕の不安を煽るだけだから。


「さぁさぁ食べてください!!」


「う、うん……」


と言われても七海が作ったという事実+あの2人が知らない物を入れたというダブルの不安要素がチョコを口に近づけるのをためらわせる。果たしてチョコを食べて僕は無事にいれるのだろうか。というか何故チョコを食べるという普段なら何も気にしない動作に僕はここまで悩むのだろうか。


「あれセンパイ食べないんですか?」


「い、いや食べるよ?」


僕が中々チョコを口に運ばないことを疑問に思った七海が不思議そうに聞いてきた。


「あっ、センパイ。まさか私が作ったから心配しているんですか?」


……まさしくそうだよ。

だがそんなことを本人を目の前に言えるはずがないのでどうやって言おうかと悩んでいたら


「センパイ大丈夫ですよ!!

ーー物は試しってことでファイトです!!」


とサムズアップをこちらに向けてやってきた。

……絶対使い方間違っているからね、今この現状でその言葉はね。

というかチョコを食べるのにファイトってなんだ。


「……よし食べるか」


まぁどんなに悩んで躊躇っても結局食べるしか僕に選択肢がないので覚悟を決めて食べることにした。


「ファイトですよセンパイ!!」


「……」


だからチョコを食べるのにファイトってなんだ。

僕はそう思いながらチョコを口の中に入れた。


「どうですか?」


「……」


「さぁさぁセンパイ感想をどうぞ!!」


「……」


「もう躊躇わないでいいんですよ~」


「……」


「あ、あれセンパイ……」


「……」


「ちょっとセンパイ~?」


「ーーあれ、意外と食べれた」


「ちょっと!? 意外ってなんなんですか!!」


「いやまさか意外と普通に食べれたと思って、つい……」


見た目こそ若干いびつだったが食べてみると普通に美味しかった。


「だって与謝野先輩、凛子監修のチョコですからね!! 食べれない訳がないですよ!!」


「まぁそれもそうか……ふぅよかった」


「ちょっとセンパイ……私のチョコどんな風に思っていたんですか」


「正直な感想を言っていいなら言うけど?」


「いややめておきましょう。なんか聞いたら私がなんかとっても傷つきそうなので!!」


「そう、分かった」


まぁ実際にそれに近い感情を抱いていたので。


「にしても七海が食べれる物を作ってくるなんて驚きだよ」


「ふふん、私も成長したんですよ~」


「そうだね」


「センパイの料理の腕を超す日が意外と早く来そうですね」


「サクラダ・ファミリアとどっちが先かな」


「……ちょっとセンパイ、それって大分先ってことですよね? そうですよね?」


「さぁどうだろうか。ところで七海」


「はい、なんですか?」


「さっき七海が言っていた隠し味って何なの?」


ふとさっき七海が言っていた事が気になった。食べている感じだと特に変わった感じはせず多分変なものは入れてないと思うが、では今度は何を入れたのか気になってくる。


「気になりますか? 気になりますかぁ~?」


「じゃあいいや」


「ちょっと聞いてよ~!? なんで聞いてくれないの!?」


「だって面倒なんだもん」


「そこはほら可愛い彼女に免じてさっ!!」


「……聞かなくていいかな?」


「マジトーン怖いからやめて!? センパイがそのトーンで話し始めたら本当に怖いってみんな言っていましたよ!?」


「それは僕を怒らせる七海を含めた輩が悪いからね?」


「それは可愛ーー」


「ーー本当に聞かなくていいかな?」


「ごめんなさい、許してください。聞いてほしかっただけなんです。

ーーだから聞いてくださいって!? ちょっとさりげなく私から逃げないで!?」


「はぁ……分かった聞くよ。で何が入っているの?」


「それはですね~ズバリ!!

ーーセンパイへの愛ですよ!!」


「……」


「私がセンパイに対して思っている愛をこのチョコにたっくさん入れました!!」


「はぁ……」


まぁ確かに実際にモノとして無いものは入れるタイミングを見ることは不可能だろう。

そりゃあの2人も気づかないはずだ。


「まぁセンパイが私の大きな愛を受けきれるかどうか……」


「あ、あれ……」


「どうしましたセンパイ?」


「いや……何故かいきなりお腹がいたくなって……」

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