バレンタイン～森と凛子 中編～
約２か月振りの投稿となってしまいました。
お待ちになられていた方々に大変申し訳ございません……！！
「ふぅ……美味しかった。ありがとうな凛子」
「喜んでいただけたようで嬉しいです」
とホッとした様子の俺の可愛い彼女である凛子。
さっきまでいつもの様に暴走していた姿から一転し、大人しくなった。
「ホワイトデーは俺も頑張らないとな……」
そうなのであるバレンタインの約１ヶ月後にはホワイトデーが待っている。今までこの様なイベントは縁もなく考えた事も無かったが今年は違うのである。なんせ今回人生で初めて彼女からチョコをもらえたのだからそのお返しを考えないといけない。
「いえいえ……私はただ送りたかっただけなのでそこまで良いですって……」
「でもこんな旨いチョコもらったし何か返さないと俺の気が済まない」
この様に凛子は謙遜しているが俺個人はせっかく今日わざわざ俺の家まで来てチョコをくれた彼女に何かをしたいと思ってしまう。
今回は国木田先輩に頭下げて簡単なチョコの作り方を教えてもらおうか。
……いや先輩にはいつも頭を下げている気がする。
「……じ、じゃあ先輩」
「待ってくれ……もう少しでいい案が思いつきそうな気がしなくもない」
凛子が何かを言いかけたのを手で止めてもう少し自分で考えてみることにした。
「それってほぼ思いついていないのと同じじゃないですか……？」
「だよな、うん。考えるのやめた！！ 放棄するか！！」
「……それは流石にダメなのでは？」
と後輩に冷静なツッコミをもらった。
自分でもよく自覚しているのだが俺は考えることが苦手である。
それも含めて国木田先輩を心から凄いと思う。
……その割にいつも先輩をおちょくってすみません。
「よし考えるの終わり！！ で、凛子はさっき何を言いかけたんだ？」
「あっ……それはですね……えっと……」
と急にごもごもと喋る凛子。
何か俺に対して言いにくいことなのだろうか？
……まぁとりあえずこの状況で言えるのは変に刺激すると再び暴走するので慎重に対処しないといけないということだけだ。
「遠慮しなくていいぞ？ 凛子の頼みなら大体どんなものでも引き受けるからな」
「……本当ですか？」
「あぁ、空を飛べとか海を歩いて渡れとかじゃなければ」
「そ、そんなことは言いませんって！！」
「そうなのか……」
「……何故そこで残念そうな表情をするんですか先輩は」
「いやなんとなくで
ーー第一さ、俺が考えて動く訳ないじゃん」
まぁそのせいで先輩や織田には結構面倒を増やしている。
……一番迷惑をかけているのは多分先輩にだろうけど。
「自分で言いますか、それ……
ーーで、先輩、話なんですが少し時間軸が遡ります」
「ん、時間軸が遡る？ まぁいいけど……」
さっき言いかけた事を話す際に時間を戻る事が必要なのだろうか？
一体どのような話が始まるのだろうかと思っていると凛子は話し始めた。
「数日前、私は母と近くのショッピングモールに出かけました」
「ふむふむ……それで」
「そして買い物を済ましたあと、敷地内で福引をしているのを見つけました」
「へぇ……福引かぁ」
なお俺は今までそういうので毎回一番下のしか当たらない。
当てる奴をとても羨ましく思う。
「それでその日は結構買い物をしていたので３回引けました」
「で、３回ともポケットティッシュだったーー」
「１等、２等、３等を引きました」
予想をの遥か上をいく回答が返ってきた。
「嘘だろ！？」
まさかわずか３回というチャンスで１等から３等をそれぞれ当てるとかどれだけ運がいいんだ俺の彼女は！？というか運が良いのレベルを超えている気がする。
「い、いえ本当なんです……結城先輩と同じ表情を福引の担当の方もしてました……」
「そりゃ普通そんな表情するだろ……で、何が当たったんだ？」
ま、まぁ多分１等って言ってもそこまでのもんじゃないだろうと思っていたのだが……。
「３等が最新型のテレビです」
「俺が今、この部屋で一番欲しい奴じゃん！！」
アニメを見るのが好きな俺からすればそれは喉から手が出るほど欲しいものであった。てか３等でテレビっていったら１等はどんな商品になるのだろうか？
「ちなみに今そのテレビはリビングにおいてあって、元々リビングにあったテレビは私の部屋に移動してきました。やっぱり画面が大きいっていいですね」
「心から羨ましいな……で、２等は？」
既に３等の時点でショックが大きいのだが俺はあえて自分から尋ねてみた。
「２等は最新のパソコンでした」
「はい、それまた俺が欲しいやつ～！！」
「これで私のパソコンも最新型に変わりました。やっぱ最新のって早いですね」
「だよな……羨ましいぜ……」
「ゆ、結城先輩……？ なんか疲れてませんか？」
「は、ははん……大丈夫だ……ただ久しぶりに心が折れかけているだけだ」
なんせ俺が今欲しいものをどっちとも福引で当てたんだから泣きたくもなるさ。
「で、１等はなんなんだ？ もう俺は折れないぞ・・・！！」
「……何故そこでかっこつけるんですか。
１等なんですけど、それが今回の話の元なんですけど……」
「そうなのか……で１等は？」
俺がそう聞くと凛子は若干顔を赤らめながら恥ずかしそうにこう言った。
「１等はですね……
ーー１泊２日温泉旅行です……」
