少しぐらいは助けてくれよな
天国に行きかけた?桜と一緒に伏見稲荷をゆっくりと
登っていく俺達。
本来、俺だけなら休憩を入れずに一気に登るが
桜もいるため途中途中休みながら登っている。
「ごめんね吉晴」
「ん? 何かしたのか?」
「いや、私がいるから登るのに時間かかっている……」
と言いながらやや暗い顔をする桜。
「それなら別に構わない」
「でも……」
「桜と一緒に登ると決めたんだからいくら時間かかっても
大丈夫だ。2人で登りきろう」
俺がそう言うと、桜は少し笑いながら
「吉晴は優しいね」
と言ってきた。
(やっぱり桜は笑っているのが似合う)
「これぐらい普通」
俺は少し照れくさくなり、素っ気なく返事をした。
「吉晴、あともう少しだよね?」
「あぁ地図ではその予定だ。いけるか?」
「私なら大丈夫だよ。あと一息頑張るぞ〜!!」
「よし、じゃあ行くか!!」
俺自身も改めて元気を出して登りだした。
「登りきったら吉晴のおごりでスイーツだ〜!!」
……聞かなかった事にしておこうか。
(と、言いながらも多分奢っているんだろうな、俺)
この後の光景を苦笑しながら想像していた俺だった。
あの後2人で休憩しながら登る事、1時間……
「やった〜頂上だ〜!!」
「ふぅ、どうやら着いたみたいだな」
「吉晴!!」
と桜が手を掲げてくる。
「ん? あぁそういう事か」
俺も同じように手を掲げてて
「いぇい!!」
「いぇい」
パチン
俺達はハイタッチをした。
こんな無邪気な桜を見れるなら、いくらでも
ハイタッチぐらいしてやろうと思う。
「よ〜し、お参りに行くよ〜!!」
「そうだな。せっかく登ったんだしな」
俺達は登山をしに来たのではなく、お参りのためだ。
お参りをせずに降りるのは本末転倒だ。
「さてさてお参りお参り〜」
「待て待て、そんなに急がなくても大丈夫だろう?」
「いいのいいの〜ほら吉晴も行くよ!!」
桜が俺の手を引き、一緒に走る俺。
さっきまで疲れていたのに頂上に着いた途端
体力全快ぐらい元気になっている。
桜に引かれるまま、俺達はお参りをする場所に来た。
そして財布から小銭を出して、賽銭箱に入れた。
「吉晴は何をお願いする?」
「俺は秘密だ」
「えぇ〜教えてよ」
「桜が教えてくれたらな」
「私は教えないよ。吉晴言わないし」
「ならお互い秘密でいいんじゃね?」
「……なんか吉晴に言いくるめられるのが
癪に触るけどいいかな」
「そんなにか……」
と俺達は無言で手を合わした。
(俺の願いは……桜と一緒に穏やかな日常を
ずっと過ごしたい)
ありきたりな願いだと思うが、俺にとって一番の願いだ。
この隣にいる大好きな彼女とずっと死ぬまで
一緒にいたいと思う。最近改めて強く思う様になった。
(そりゃ努力はする。だけど神様。
少しぐらいは助けてくれよな)
なんて思いながら願うのだった。
一緒にお参りした後、頂上で少し休憩した俺達は
下山し始めた。
「よっ、ほっ、とっ」
リズミカルに階段を降りる桜。
俺から見て危なっかしくてハラハラする。
「足元気をつけろよ」
一応、桜に向かって注意を促す。
「大丈夫〜大丈夫〜!!」
「桜の場合は逆に心配なんだよな……そのセリフ」
「あれ? 私ってそんなに信頼無い?」
「……桜が大丈夫大丈夫って言う時の信頼は
俺の中で皆無に等しい」
「酷いな〜私だってこれぐ
ーーわ、わぁ!!」
桜が階段でバランスを崩した。
「桜!?」
俺は自分が出せり最大のスピードを出して
桜の手を掴み、こちら側な引き寄せた。
「ふぅ……だから言わんこっちゃない」
「はぁ〜い……でところで吉晴さんや」
「なんだ桜さん?」
「こ、この腰にま、まわされた手はいつどかして
くれますかね……あ、あと顔が近いです、はい」
「あっ……」
右手で桜の手を引き寄せ、左手で腰を抱き寄せて
気がついたら目の前に桜の綺麗な顔があった。
何も考えずに行動していたため反応に困った。
「すまん……すぐ離すから」
桜を安全な場所まで移動させて手を離そうとすると
「……何もしないの?」
桜が俺に手をまわしてきた。
「い、いやだな……」
(ここ観光地だからなどこで見られているか分からん)
いくら今人が少ないといえ、いつ人が来るか分からない。
だけど……
「一回だけなら」
なんやかんやで桜に甘い俺だった。
今まで桜の頼みを断ったのはわずか数回ぐらいだ。
「うん、一回でもいいよ」
と言うと桜は目を閉じて綺麗な唇をこちらに出してきた。
そしてそのままキスをした。
「……これでいいか?」
「うん、いいよ。さっ、降りよう!!」
「待て待て」
「ん〜? 何?」
「手を出せ」
「えっ? はい」
桜は不思議そうな顔をしながら手を出してきた。
その手に俺は自分の手を合わせて指を絡ませた。
「そのだな……
桜は目を離すと危ないからさ、俺が監視する」
「う、うん……吉晴ならいくらでも監視されても
大丈夫かな。なんなら他の男性と話すなぐらいまで……」
「そこまでしないからな!?」
さっきまでの甘い雰囲気はどこにいったのやら
一気にいつものふざけたムードになった。
「えぇ〜しないの〜?」
「俺そこまで心狭くないからな!?」
(本音を言うと似たような事言いたいです!!
だって桜可愛いし!!)
なんて思いながら俺達は手を繋ぎながら
また登りと同じようにゆっくりと降りていった。
まぁ降りた後、財布の中身が宿を出る前の
2割まで減ったのだが……
「うん!! 美味しい〜!!」
この笑顔の為ならしょうがないと思うのであった。
次回からは森と凛子の話です





