社畜さんは働く
とりあえずの設定的なお話です。
社畜さんは働く
VRシステム【AOI】(アオイ)とそれと付随する形で作られたVRWORLDである【LIFE】(ライフ)は、そのどちらもが今後様々な面で再現するのは不可能であろうと言われるシステムであった。
構想から着手までに40年、実際の開発に30年、そして認可がおりるまでに15年、更に安全性の確認に2年と長い歳月を費やし、そして関わる幾多の企業を食い潰し、ようやく完成にこぎつけたのは開発者の代でいえば四代にも渡る偉業であった。
五感を再現し意識をVRに誘う為のVRシステム【AOI】、そしてそれを使う為のソフト【LIFE】には二つの世界がある。
一つは地球とほぼ同じ環境であり様々な研究、実験が行われている【GAIA】。そしてもう一つが開発者の寵愛を受けて誕生した地、【CHAOS】であった。【CHAOS】はその名の示す通り地球とは違う人外が闊歩し、様々な生き物の暮らす混沌とした世界。そしてもう一人の自分として自由に生きる世界でもあった。
【AOI】の名は開発者の名であるとか、最大の投資家の名であるとか、研究者が雰囲気で名付けたとか、風水であるとかこっくりさんであるとかシステム自らのが名付けたなどの様々な説があるが、それははっきりとしていない。
そして【AOI】の販売が始まってから早三年、まだまだ一般的に広まっているとまでは言えない状況であった。
ネックはやはりその価格であろう。徐々に値下がりをしてはいるものの、未だその価格は一般的に手の届く価格からは掛け離れていた。
それでも【AOI】は世界で発売されており、全くペイは出来ていないものの好調な売れ行きを見せている。
それでもVRというものに興味のない人々にとっては関係のないものであり、予算がない人にとっても同様のものであった。
米谷 伸司はスーパー鳩山で働く、勤続六年目の従業員である。地域に愛され、地域を愛する社長の方針により24時間営業の貴重なスーパーとして、その地域に数十年君臨し続けていた。
ブラック企業と呼ぶに語弊があるが、ホワイトと呼ぶには余りにも忙しすぎる環境であった。
今日も伸司は朝6時上がりの所を9時過ぎても、未だ忙しく仕事に勤しんでいる。
「そろそろ上がっていいぞー。」
恰幅と威勢のいい初老の店長である鳩山 敬三が伸司に声を掛けるが、今している作業の手を止めることは無い。
「分かりましたっ店長、ここ済ませてから帰ります。」
それでもその作業は11時頃まで続き仕事を終え、そして昼ご飯をスーパー内で購入して食べ、充実した気持ちでそこから徒歩2分のアパートに帰宅し眠る。
伸司はすでに立派に調教された良い仕上がりの社畜さんであった。
どこか矛盾などがありそうな気もしますが、とりあえずの投稿です。