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プロローグ


 現在、ガゼフ帝国とジサベル王国が交戦中のクリエスタ平原、その王国側上空、そこに朱色のマントをまとい、腰に分厚い魔導書を携えたクロムウェル・クロワがいた。クロムウェルは自軍と敵軍が離れたころを見計らって、両手を前に突き出した。なにやら言葉を放つと、指輪やネックレスの宝石から青白いオーラのようなものが体ににまとわりつき始めた。

「『変数指定、対象:前方敵軍、目標:実体の時間情報、命令:巻き戻せ』」

 言葉に合わせて、クロムウェルにまとわりついていたオーラのようなものが、魔法式を形作っていく。

「『時間逆行』!」

 魔法式は蒼い衝撃はとなり、敵軍へと向かっていく。魔力を限界まで使ったクロムウェルは、会心の出来だ、と口元を綻ばせながらマントを翻した。

 唐突に、巨大な魔法の兆候を感じ取り、急いで確認すると敵魔法師が20人ほどの集団を作り、その頭上の巨大な魔方式が不吉な香りを醸し出していた。


***


 クロムウェルは魔方式を読み取ろう目を凝らした。しかし、読み取る前に魔法は発動し、その効果を知らしめた。

 なんと、クロムウェルの魔法をそっくりそのまま反転させたのだ!

反射リフレクション!?」

 反射リフレクションは言葉通り、来たものを跳ね返す魔法だ。

(うそぉ、やばいって……。てか、魔法は跳ね返せないはずじゃ……)

 なんとか打開策を考える。堂々巡りの脳内で導き出された一つの答え。

(ははっ、未知の魔法に対しての打開策なんて知るわけがないよな)

 諦めの末には、確実に死しかまっていない。

(嫌だ、こんなとこで死ぬのはまっぴらごめんだ)

 一周回って冷静になった脳内で「命だけ」でも助かる道を探す。その間にも、死の魔法はだんだんと距離を詰めている。

(何かないか、何かないか、何かないか)

 こんな時、頭に浮かんだのは、一番思い出したくない王立学院時代の思い出。教室に居場所はなく、安息の地を求めて図書館に逃げ込んでいた日々。一番読んだのは、ケルスの「魔法師」。自分はなぜ魔法を使えないのか、自分と魔法師はどこがどう違うのかを書いた本だ。この本には、魔法師を知るうえで欠かせないことが記述してあった。

(なんだったかなぁ、え~と、あっ、魔力回路!)

 魔法師の全身をめぐる血管の魔力版のようなもの。この魔力回路の丈夫さで魔法師としての強さが決まるのだ。

(そうだ、魔力回路だ。“生き残る道”だ!)

 見つけたのは自分が生き残れるおそらくただ一つの道。しかし、魔法師としては死ぬ道。大好きな生活魔法の研究ができなくなるのは嫌だった。でも、戦場ここで死ぬのはもっと嫌だった。

(背に腹は代えられない!)

 クロムウェルは向かってくる魔法に対して両腕をクロスさせた。

「ふぅ」

 息を整える。そして、胸の中で魔法師人生に別れを告げる。

着弾の瞬間――

「『崩壊コラップス』!」

 学院生時代に図書館で読んだ禁術の一つで、己の魔力回路を自壊させて、その際に生じる魔力嵐まりょくらんによって付近一帯の魔力を対消滅させる魔法。

 両腕に体の内側から焼き尽くされるような激痛が走る。ぎゅっと目を瞑り、ひたすら痛みに耐える。

 強大な魔力嵐は、実体を持つ風を呼び、暴風となり、竜巻となってクロムウェルを飲み込んだ。

 

***

 この日、平原に竜が生まれ、一人の魔法師とともに天へと昇った。人々は神の怒りに触れたのだと戦争忌避の感情が高まり、両国は不可侵協定を結ぶに至った。

 クロムウェルの開発した「時間逆行」の魔法式は、彼の研究施設にはなく幻の魔法とされる一方で、クロムウェルが生前肌身離さず持っていた魔導書が一獲千金のネタとして冒険者の間で広まっていった。


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