Sタイヤ
「いくら踏み込んでもピッタリくっ付いて来やがる!!クソがぁ!!!」
後ろにピッタリとついてくるサンバーに痺れを切らした省吾は限界まで減速を抑えた。
フルブレーキングによるコーナリングをすることでコーナーを少しでも速く曲がろうとしていたのである。
「こちとらグリップ重視のSタイヤまで履いてんだ!ただの軽トラに負けてたまるかよ!!」
コーナー入り口で渾身のフルブレーキング。車は出口方向へと向きをかえた
ように思われた。
「くっ、前輪の挙動がおかしい!アンダーが出る!」
※アンダーとは
アンダーステアリングのこと。曲がりきれずカーブで外側にいってしまう現象をさす。
Sタイヤの弱点は二つある。
一つは劣化・消耗が早いということ。
もう一つは、雨天ではただのスリップしやすいタイヤになってしまうということ。
路面状況が良い時に道路に喰いつくように作られているため、それ以外の天候では普通のタイヤ以下の性能となってしまうのだ。
「くそがぁぁあああ!!」
省吾は更なる減速を行い、何とか体勢を立て直した。
「ほれ、内側ががら空きじゃて。様子見して正解だったのう。」
内側から猛烈な加速でバランスを崩したエボⅧを抜き去るサンバー。
雨天にも関わらず、タイヤが地面に喰いつくよう、源次郎は細工を行っていた。
荷台に積んだ茣蓙が水を吸い、膨張。荷台が水を重石として保持するようにしていたのだ。
「これに懲りたらまた悪させんようにな」
スイフトを抜き去った時のように、サンバーと源次郎は闇に消えていった。