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頭文字・爺  作者: 綿坊
5/6

アンダー・アンダー

「うん、離されていきよるのぅ……」


源次郎は前を走る赤い車(エボⅧ)が遠ざかっていくのを神妙な面持ちで見ていた。


「あの車、やったらカーブでグイグイまわりよる。わしが昔見に行ったグループBのランチアぐらいキビキビまわっとるように見えるわい」


源次郎の趣味はラリー観戦。30歳の時に見たWRCをきっかけに様々なものを見てきたのだ。


「公道でこんだけまわるってことは、なんかかわったタイヤつけとりそうやの……さて」



源次郎は不敵な笑みを浮かべギアを落としサンバーを加速させた。



前にはヘアピンカーブ。雨の影響か道路の端には浅い水溜りが出来ていた。


省吾のエボⅧがブレーキングでスピードを殺しヘアピンに突入する。



「結構差が開いたな。コーナーが互角ならこの先追いつくことも無いだろうぜ!!」



二速でインベタコーナリング、出口付近で4WDの制動力により鋭い加速を行う。


省吾のモットーはグリップ走行。路面に喰い付きパワーを無駄なく活かす事こそが最強であると考えていた。


そのため、タイヤはグリップ重視のSタイヤを用い減速は欠かさない。



「さて、次のコーナーまでフルスロットルだぜ!!」



省吾がアクセルを踏もうとしたその時、



ガフォ!!ゴァァァァァァアア!!



「な、なんで後ろにピッタリくっ付いてんだ……?」



エボⅧの後ろにピッタリとくっ付くサンバー。


省吾は焦りを隠せなかった。


「畜生!立ち上がりは互角だった筈だろ!?」


またエボⅧが加速をしてサンバーを引き離す。


次のコーナー、そのまた次のコーナーでも引き離しては追いつくという現象が起こっていた。



180-SXに乗り後ろから追跡していたアキラは、サンバーの挙動の違和感に気付いていた。


「突っ込みと立ち上がりの両方が恐ろしく鋭い。通常なら突っ込み重視のドリフトでは立ち上がりがもたつく筈なのに一体なぜ……」



源次郎はコーナーに侵入後、ほぼ減速をせずスピンするような形で方向転換を行っていた。


通常であれば速度0からの加速。明らかに遅い。


しかし、軽トラならば、いや、源次郎とサンバーだから出来る恐ろしい方法で突っ込みと立ち上がりを両立させていた。



源次郎はコーナー侵入後、車をスライドさせリアを流す。


車が出口を向いた瞬間に4WDの切り替えスイッチをON、方向舵の役目を負っていた前輪は猛烈に車体を引っ張る。


さらに、ここで源次郎は軽トラでしか成し得ない更なる秘策を用いた。



ローのロー(1速のさらに下)



軽トラや森林作業車などが泥濘にはまった際に用いるギアで、トルク重視の超低回転用ギアである。


これと4WDスイッチの合わせ技がこのコーナリングを可能にしていたのだ。



「まだまだヒョッコには負けんよ。年季が違うんじゃ。」



サンバーとエボⅧは次のコーナーに差し掛かろうとしていた。

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