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頭文字・爺  作者: 綿坊
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その名は“サンバー”

彼の名は安井源次郎。


15年前に赤帽の配達業を引退し、近所のS峠を走ることを日課にしている72歳の爺さんである。


愛車はスバルのサンバートラック(赤帽仕様・4WD・MT・スーパーチャージャー)


走行距離はゆうに500,000Kmを超えており、雨の日も雪の日も配達を続けてきた身体の一部分のような存在だ。


源次郎の趣味で多少弄ってはいるが、タイヤのインチアップとマフラーの交換、サスの取替えとカーナビの装着程度のものである。


最近歳を取って早く起きるような習慣がついてしまい、二時になると顔を洗い日課のドライブに出かける。


人馬一体ならぬ人機一体のその走りは、地元の老人会では「現代の神風」やら、ぽるしぇよりも早いと噂されている。



ある日、老人会で近所のローリング族に困っているという噂を聞き、日課のドライブがてらパトロールを行うことにした。


しばらく走ると、近所のハツゑさんとこによく止まっている黄色い車が爆音で走っているのが見えた。



「悪さしちょんのはあいつけ。ガキのころから何もかわっちょらんのう……


どれ、ちょっかいかけてみるかい」



ライトをハイビームにし、煽る。


黄色いスイフトは、猛然と加速していく。



「……」


ガコガコ……


ギアを五速から四速に落とし、吸気が始まる6000回転~へと持っていく。

ターボのかかった660CC・750Kgの車体は、コーナー手前で黄色い車の背後につけていた。


「相変わらず凄い加速じゃ。逝ってしまうとおもたわい」



コーナー入り口でスイフトがブレーキランプを点灯させる。


源次郎もブレーキをかけ、三速へギアチェンジ。


フロントとリアのトラクションを均一にし、車体をスライドさせる。



「あんまり内側空けんのはよくないんじゃがのう……」


スイフトがアウトインアウトのコーナリングをしたのに対し、源次郎は車体の向きを変えたようなコーナリング。


源次郎は長年の配達経験と感性で四輪ドリフトを完成させていたのである。



「右ががら空きじゃ」



思いっきりアクセルを踏み込み、トラクションをリアへと集中させる。



RRリアエンジン・リアドライブ


ポルシェと同じ駆動方式。


これがサンバーを農道のポルシェと言わしめる所以であった。



三速7000回転で猛烈な加速をし、スイフトを抜き去る。


スイフトが追ってこないのを見て、源次郎は日課を終えたのだった。

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