青銅国領 第三都市ハイルン
ぶふぉっ!? な な な なんでやねーん!
ランキングにのっとったぁあああああああ
昇天しそう\(◎o◎)/チーン
読者様マジ感謝♡ もうみんなにチューしたいっ! いらないかw
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「う~ん~」
春眠は空中睡眠から目を覚ましてた。【青銅国領 第三都市ハイルン】の少し離れた街道の傍で切り株に腰を下ろしす。悩むように首をひねって、唸るような声を洩らしていた。その理由の一つは、寝ている間にとんでもないことになるステータス。もう一つは、こっちの世界で言葉が通じるのか、街にすんなり入れてもらえるのか、という心配ごとだ。
「お空で寝る前はレベル10だったのに、なんでレベル102になってるんだろうぉ~? わかんな~い」
春眠の視界に半透明に映るステータス画面を二度見した。寝ている間に何が起こっているのかは、春眠は一切知らないのだ。
「スキルも いち に さん……」
指を折って数えていたら日が暮れる。辺りはもう夕方模様になっていて、空が橙色に染まっている。
「んー まいっかぁ~ 兎に角、異世界のベットで寝なくちゃいけないから、街に入らなくちゃ!」
何が兎に角なのだか疑問だが、春眠の目的は異世界のベットでぐっすり寝る事だった。異世界に来て意識のある間にしたことと言えば、飛んだだけ、そしてあとは寝てしかいない。
ステータス画面をアイテムボックスへと切り替える。
アイテムボックス
・金貨×3
・銀貨×10
・銅貨×30
・鉄の剣
・鉄の盾
・回復薬(レベル1)×5
・解毒薬(レベル1)×5
・パジャマ(上下セット)
・ハルミの枕
「ロリっ子神様流石! パジャマと枕も用意してくれたんだっ これなら大丈夫そうじゃん! レッツゴーだよ~」
何故、パジャマと枕があれば街に入るのが大丈夫になるのかイマイチ分からない。だが春眠は、気合の入った様子で、門番の立つ【青銅国領 第三都市ハイルン】の入口へと歩みを進めた。
【青銅国領 第三都市ハイルン】は、その名の通りで、青銅国が収めている都市の一つだ。青銅を利用する文化に発達しているから、青銅国とついているのではない。この世界の国の枠組みは、金属によってランクが付けられている。国のランク付けは、格付け会社のような宗教団体が請け負っている。国の格の付け方は、土地の広さ、軍事力、国の産業、等の様々な項目で判断される。ランクは。ミスリル、オリハルコン、白金、金、銀、水銀、鋼、鉄、銅、青銅、の10段階で格を付けられる。
そして、ランクが最下位の青銅国が、治安が悪いとかそう言った理由ではない。この第三都市ハイルンを含む、青銅国は周囲を魔境で囲まれているとこもあり、ランクが青銅と位置付けられてしまった。軍事力という国防の一点のみが、信用できないと言うことだった。
故に、青銅国は軍事に関してはとても敏感だった。遠方から常に監視していた、【闇ノ大森林】の主である巨大なバハムートが消え去ったのだ。第三都市は、北の魔境に何かが起こっていることを察知して、厳戒態勢になっていた。
第三都市ハイルンの駐留する軍隊、騎士団、そして、冒険者たちの代表者が、ハイルン城の一室に集まる。
「何が起こったというのだ! あのバハムートが忽然と姿を消しただと? うそをつけ! 見失っただけだろう! 監視を怠っていたのではないのか!」
青銅国第三騎士団団長ベルンフリートは怒号とともに長机に拳を叩きつける。金色の髪を束ねて肩にかけた、色気のある中年の男が激昂すると、会議室が静まり返った。
だが、怒りの矛先をぶつけられた対面に座る老人は、白く長いひげを弄るだけで怯える様子は無い。むしろ楽しんでいるようにしか見えない。
「なにをそういきり立っておるのじゃ? 儂のギルドの監視体制が緩んでいたと申すのか?」
老人マインツはハイルンのギルドマスターである。政が嫌いでこの場にいる事すら珍しい。ベルンフリートはいつも召集にすら来ないマインツを嫌っていたのだ。故にあらゆる責任を全てギルドマスターであるマインツに押し付けるため怒鳴っている。
「そうだ! 今月の監視はギルドが行うことになっていたではないか! ふんっ どうせ統制のとれない小汚いクズどもが、監視を怠ったのであろう! あのバハムートの巨体を見失うなど、怠慢が過ぎると言っているのだ! リザードマン襲撃の時もそうだった! 貴様らが打ち漏らしたせいで――
「議題から逸れてますわ、騎士団長様。今回、あなた方に集まってもらったのは、バハムートを見失った責任を決めるためではありませんわ。なぜならバハムートは、見失ったのではなく、完全に消滅したのですから」
怒り狂って話題がそれ始めたベルンフリートを咎め、静まらせたのは、青銅王国第二王女のリリアーデだ。いわば騎士団が忠誠を誓う王族で、ベルンフリートは頭が上がらない。さらにリリアーデは、ハインツの駐留軍の指揮権を持っており、ハインツで最も偉い存在でもある。
齢にして17歳の少女だが、周りが認めひれ伏すほどの才の持ち主でもあった。才色兼備ということばがまさにリリアーデのための言葉であり、腰まで伸ばした艶のある銀髪、豊潤な胸、モデルのような体形…外見の美しさも見るものすべてを虜にするほどであった。
「も 申し訳ございません」
「ギルド長様から報告と共に渡されたはずの映像記録水晶をご覧にならなかったのですか? バハムートが消息を絶ったのは、黒い何か、蛇のような濁流に包まれていなくなったのですわ。残念ながら映像はかなり遠くであるので、その黒い何かの正体は掴めませんでしたけれど」
ベルンフリートは水晶など見ていなかった。見る価値も無いと放り投げたほどだった。マインツはニヤリと口元を歪めてベルンフリートを一瞥する。
「監視うんぬんはもうどうでもよいのじゃよ。怒鳴られた返しは、貸し一つでいいじゃろう。そんなことよりも、水晶に写っとった黒い何かを突き止める必要があると思わんかね?」
苦虫を噛み締めたように悔しがるベルンフリート。ギリギリと歯ぎしりしてマインツに貸し一つを与えたことに憤る。机の下で握った拳がプルプルと震えていた
「ギルド長様は、あの魔境に踏み込むとおっしゃるのですか?」
「その通りでございます。バハムートが居なくなった【闇ノ大森林】は、もう魔境ですらありません。危険であることには変わりませんのですが、もしも黒い何かがバハムートを超えるようなモンスターであった時のことを考えると、調査しておいた方がいいと思ったのですじゃ」
「魔境に踏み込むだと!? 死にに行けというのか!」
「確かに、相手を知っておく必要がありますわ。 ですが騎士団長様が危惧していることは分かりますわ。みすみす死にに行けなどと、命令できません」
「ご安心を、殿下。 調査は、小汚いクズどものギルドで行いますじゃ。ちょうど今、リザードマン襲撃を聞きつけて遅れてやってきた、Sランク冒険者パーティーが居りますゆえ。そこでなのですが、殿下からの依頼という形にしていただければ……」
マインツに揶揄されたベルンフリートはぐうの音も出なかった。何枚もマインツの方が上手だった。小声で「老害がっ」とつぶやいたのが聞こえたマインツは、ほめ言葉をありがとうと、言わんばかりの笑みを浮かべる。
「【冷徹姫】のパティーでしたわね? それならだいじょうですわね。 分かりました。この件はギルドに依頼するという形でよろしいですか?」
「はい。もちろんですじゃ」
会議がお開きとなり、ベルンフリートは憤りを隠さぬまま会議室を後にした。残ったリリアーデとマインツは嘆息する。ベルンフリートがまた暴走しないかヒヤヒヤしていたのだ。半年前のリザードマン襲撃時のときも、ギルドに押し付けようとしたりと面倒だったのだ。
「殿下、もう一つご報告があるのじゃが」
「なんでしょうか?」
「それが……」
マインツにしては珍しく言いよどむ。【老獪】と恐れられる爺さんには見えない。
「バハムートに関することですか?」
「たぶんそうであると、儂は疑っております。 つい先ほど、会議の場に訪れる前なのですじゃ。 【闇ノ大森林】側の街門に流浪者が流れてきたと報告があったんですじゃ」
「北ですの? どんな方ですか?」
「……猫の獣人の少女ですじゃ。 門番の報告だと、北の街道から歩いて来て、武器も持っていなかったと」
「武器を持っていない!? ……入れたのですか?」
「それが……取り調べをしている途中に、寝てしまったと。ぷ…… わははは! 揺らしても全く起きなくてすやすやと眠りこけているんじゃとっ わははははっ」
神妙に話していたのは笑いを堪えるためだった。我慢できずにマインツはリリアーデの前で吹き出してしまった。取り調べ中に爆睡したのは、言うまでもない春眠だった。いろいろと調べる前に眠ってしまったので、名前も性別も何もわかっていない。外見だけで少女だと誤認したようだ。
「ギルド長はその獣人の少女が、この件とかかわりがあるというのですか?」
「ぷくくく 可能性は無きにしも非ずじゃろう。 なんせ凶悪なモンスターしかおらん北から手ぶらでやってきたと聞いたからの」
「そうですね。その子はお任せしてもいいですか?」
「いきなり殿下に合わすわけにもいきませんしの。 まあ冒険者になりたいと言った後に眠り始めたらしいから、儂が面倒を見ましょう」
「お願いします」
リリアーデが若干呆れたようにマインツに春眠のことは預けた。マインツは最後だけ楽しかったわいと会議室を後にした。
10/19 PV961 ホントに読んでいただけて幸せです。