閑話 少女は闇に染まる
閑話です。鴉のアワタール レイの物語です。
白金国第一都市プラチナ、人が多く集まりこの都市は栄えていた。都市には港があり貿易で栄えた国である。王城まで続く大通りには忙しそうに人々が行き交っていた。その忙しさのどこかに皆笑みを浮かべている。働けば働くほど金を得られる。第一都市プラチナは近年ではミスリルにランクアップするのではないかという噂が広まり、より多くの人々が集まっていたのだ。
しかし、呼び寄せたのは良い面だけでは無い。事業を始めても競争の激しいこのプラチナでは、店を構えるのと比例して、事業に失敗し身を落とすものが多く存在した。大通りの一歩外にある裏路地へ足を運べば、そこはスラムと化していた。
だが、そのスラムでさえも第一都市プラチナにとっては金の成る木であった。白金国では借金で身を落としたものの奴隷化が認可されていた。それには事情を失敗した当人だけでは無く、その家族を借金の担保にすることを許されていた。第一都市プラチナは別名『奴隷生産都市』とも呼ばれていたのである。
そんな光も影もある都市のスラムに一人の少女がいた。名前はレイ。のちに彼女はこの世界が震撼するアワタールへと昇華する。
レイは事業に失敗した両親が奴隷となり連れて行かれてから、スラムで命を繋いでいた。まだ年齢は10歳だった。その容姿はとても10歳の子供とは思えないほどに整っていた。母譲りの艶のある銀色の髪を腰まで伸ばし、父譲りの高身長のお蔭かスタイルも抜群だった。
当然のようにそんな美少女が一人でスラムにいるといいことなど何もなかった。両親が奴隷となり離れ離れになった翌日には、レイはその悲しみなど忘れ去った。スラムに足を運んだその瞬間に、待っていましたと言わんばかりに汚い男たちによって、その美しい体を汚されてしまったのだった。
それでもレイは生き抜くことを諦めなかった。スラムの一角、娼婦あつまる所へその身をゆだねたのだ。レイはどんな方法でもお金を稼いで、両親を自分の手で買って再び家族を取り戻すのだと心に決めていた。その決意があれば自分の身がどれだけの男に汚されたとしても耐えきれると思っていた。
スラムでの娼婦として過ごし数年が経ったある日の事だった。15歳となったレイはますます美しくなっていた。スラムにいる筈なのに、レイからはその小汚さが欠片もなかった。幼さが消え、メリハリのあるその艶めかしい身体はあらゆる男を虜にしていった。
そして、初めて訪れた男の相手をしていた男に、劇団で踊り子をやらないかと誘われた。正直に言えばレイはウンザリしていた。商売の誘いは良く受けていたし、なかにはプロポーズしてくる男までいた。全てやんわりとお断りしていた。だが劇団を誘ってきた男は諦めなかった。何度もレイの元を訪れては、踊り子をやって欲しいと頼み込まれた。押しに弱かったわけではないが、レイは一度だけ、その男の劇団を見に行くことを約束した。
そしてレイは劇団の人の心を掴むような素晴らしい公演に心を奪われたのだった。これほどに多くの人の心を魅了するそのパフォーマンスに心を打たれたのだった。
レイは男の誘いを受け入れることにした。踊り子として見に来た客を魅了したい。そう楽しみで仕方なかった。娼婦として身をゆだねて一人一人を虜にするよりもよっぽど面白そうだし、なにより給料がよかったのだ。現金かもしれないが、両親を買うためにお金が必要だった。
すぐには踊り子として舞台に立つことは無かったが、17歳の誕生日のその日に、レイは第一都市プラチナの住民の全てを魅了するような絶世の美女踊り子としてデビューしたのだった。