エピローグ
多面百手巨人が討伐されてから一週間。青銅国第三都市ハイルンでは、街のみんなが復興に力を尽くしていた。モンスターの残党は冒険者たちが片づけ、多面百手巨人が本体を現した際の地割れはハイルンの民が修復していた。青銅国第三王女リリアーデは、騎士団並びに軍の奇行を民の前で頭を下げて謝罪した。リリアーデの事を良く思わない者は誰もいなかったのが幸いだっただろう。リリアーデは自分だけ逃げたことを咎められると思い、罵倒や石を投げられることは覚悟していたが、そんなことは無かった。ハイルンの民は騎士団を前から良く思っていなかったのだ。民はリリアーデを笑顔で受け入れたのだった。ハイルンの街はモンスター災害に短期間で二度も怒ったのだが、今ハイルンは復興のやる気で満ち溢れていた。
そんな街中の日差しの温かい公園のベンチでマイ枕を片手に一人、猫の獣人がやってきた。ある人物から逃げてきたのだ。
「やっと寝れるっ なんて復興の手伝いなんて面倒なことしなきゃいけないんだよ! 関係ないじゃん!」
大いに関係のある、いや……多面百手巨人が蘇る元凶の人物である春眠は、あの後、目が覚めるとすぐに復興の手伝いをさせられてしまいお昼寝ができていなかったのだ。寝ている間に街がボロボロになっていてびっくりして眠気が増したのは黙っていた。なぜかあれからSランクパーティーの『ブリザード』に目を付けられて、睡眠時間を管理されていたのだ。特にマイアがすごかった。ミーアと同じように春眠にゲンコツをかまして仕事をさせるのだ。
春眠は寝ていたので詳しいことは分からなかったが、睡眠時間を管理するのはクリスタの二重人格であるイロリが、マイアとミーアに伝えたのだ。最優先事項であると……たとえ多面百手巨人がクラスのモンスターが現れたとしても、春眠の睡眠時間を管理するのを優先するように言われたのだ。
「ゲンコツおねーさんもいないし、今日は昼寝日和だよ~ おやす――
ゴン! 「あぅ!? ……痛い」
「私から逃げられると思ってるのかしら?」
「アンタを探すウチらのみにもなれってーの!」
「……かわいい」
ゲンコツおねーさん事、マイアの拳が春眠の頭にタンコブ量産していく。まだ一週間しかたっていないのに春眠の頭には常にタンコブができていた。美人の笑顔は怖い。この時春眠いろいろと思い知ったのだった。そしてペッタンコのミーアが小うるさく、クリスタは無害だ……そう認識していた。
「いたいー 耳引っ張らないでよ~」
「問答無用です。 しっかり一日10時間も寝さしてあげているのに、まだ寝る気なんですか! そんあの許しません。さぁ! ギルドのお手伝いにいきますよ!」
「いや~」
ネコミミを引っ張られて幽閉されていく春眠は、街ではもう見慣れた姿だった。復興に力を注いでいる街のみんなが、そんな春眠を見て笑顔になっていった。
そして、ギルドではマインツに変わり、ギンが復興の指示を出していた。いままでギンを受け入れてなくいけ好かない存在だと思っていた冒険者たちは、今回のリリアーデ救出の際に、ギンを認めるようになったのだった。ギンの指示には文句を言わず、足りないところはアドバイスをして手を取り合っていた。
「お! 帰ってきたかハルミ。 仕事の前に渡したいものがあったんだよ」
ネコミミを引っ張られている春眠にギンが声をかける。
「んー? 枕でもくれるの?」
気の抜けた声で見上げてくる春眠に、ギンは呆れてずっこけそうになったが、渡したいモノをポケットから取り出した。ビー玉ぐらいの銅色の球の付いたネックレスだった。
「はいよギルド証だ。 お前まだ登録してなかっただろ?」
「え!? 登録してなかったんですか!? どうしよう……」とマイアが一番驚いていた。マイアもミーアもてっきり春眠のことをSランクには届かないが、Aランク程度の冒険者だと思っていたのだ。それにこんなに世話をするのにも理由はあった。春眠を『ブリザード』に入れようとしていたのだ。だが、Sランクパーティーに入れるのは、Aランク以上でなければならなかった。
「そうなんですよ。コイツ、此処に来たとき身分証もなにも持って無かったんすよ。しかもパジャマッだったし」
「……なんかハルミちゃんらしいわね。」
「ほんっとダメ猫!」
「……かわいい」
嘆息するマイアとギンなど視界にも入らず、春眠はさっそくもらったギルド証の小さな銅色の球の付いたネックレスを首につけてほくほくしていた。
「これでこの世界のあらゆるベットでねれる」
「ハルミ。よーく聞けよ、ギルドっていうのは―—
いろいろベットで妄想していて春眠は、ギンの話を全く聞いていなかった。相変わらずの春眠だった。
マインツのアワタールとしての事後処理も終わり、鴉のアワタールが欠けた。知った者の死、知られたものの死という絶対の掟のほかに、もう一つ掟があった。アワタールは常に十人の災厄を揃いていなければならないのだ。
マインツは現在第一都市へ足を運んでいた。表の名目上は、第三都市ハイルンのギルド長として本部に今回の被害の報告をしにいき。本当の目的は、他のアワタールと密会する事だった。
真夜中にマインツはとあるさびれたバーに入っていく。立てつけが悪いのか、バーの扉がギシギシと嫌な音を立てる。隣の人間の顔も見えないほどに店の中は暗い。そこにはすでに3人のアワタールが集結していた。
「レイの馬鹿に止めを指したのは正解だったな。風の爺さん」
「あの馬鹿女はトラブルメーカーだったし、排除して正解!」
「久しぶりじゃのう。 羊に若人よ」
羊のアワタールは先に話しかけた中年の男で、若人のアワタールの声は少女のものだった。どちらも姿や顔は確認できない。ただもっとも古株のアワタールと言っていいだろう。
「これで全員あつまりましたね。話を始めましょう」
そして、白馬のアワタールが立ち上がり話を始める。騎士のように真面目な男である。現アワタール最強なのがこの白馬のアワタールである。
「他の者はどうしたのじゃ?」
マインツが集まりの悪さに疑問を洩らす。いつもの事だがアワタールは己が強者故に縛られるのを嫌い。集まりがとても悪い。
「牛と駱駝と鹿はある仕事をしているために、来られません。猪と黄金は行方不明です。どこで何をしているのかでしょうか…… 欠員が出たというのに……」
「まあ落ち着けって白馬の騎士さんよ。あいつらが話を聞かねえのは初めからだろうに。話を聞かない代わりに、あいつらは俺らの決定に文句を言わない掟があるだろうが。ほっとけ」
「あいつらを化身にしたのは失敗」
「そうじゃったか。では仕方あるまい。儂らで話を進めてしまおう。まずは、鴉がについてじゃが――
マインツそして、羊、若人、白馬のアワタールは今後、世界を揺るがすであろう話し合いを、闇の中で進めていった。
第一章 完
第一章おわりますた! 投稿おそくなってすんませんでした!!!
テストが悪くて遅くなったんじゃないので安心してくださいw
青春を謳歌していたのですよぐふぇふぇっ! MJ勝ち組! イエイ♡
という冗談は置いておいて(泣)
次回からは第二章の始まりです。
春眠のほのぼのがやっと始まりますっ ながかったやっとベットシーンを書けるぜ! ※注※エロくは無いですw 異世界のベットとはいったいどんなものなのか! 乞うご期待!