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動き出す恐怖 ①

マイアとミーアは、もぬけの殻となっていた騎士団の詰所に入った。


「誰もいないわね」


「はぁ? 呼び出しといていないとかふざけんじゃないわよっ」


見張りの一人もいない詰所の中を歩き回ったが、騎士どころか武器や馬も空になっていた。ミーアは完全にご機嫌斜めになって不貞腐れていた。一方でマイアは何が合ったのか思考していた。二人は半年前のリザードマンの一件で、騎士団がリリアーデを城に閉じ込めたという強行に走ったことは知らなかった。二人は当然、騎士団もモンスターの襲撃に備えて防衛ラインで戦うと思っていた。


「そう思えば。 騎士の姿を防衛ラインでも、街の中でも見なかったわね。 どういうことかしら?」


「ふんっ! ビビって逃げたんじゃないの?」


ミーアのテキトーな返事は近くも無く遠くも無い。実際に騎士団は第三王女リリアーデを強引に連れ去って、この街から逃げ出している。


「その可能性が高そうね。 ミーア、あなたはギルドへ行きなさい。 私は城に行ってみるわ」


「えー 面倒くさい~」


不満そうなミーアの返事にマイアの拳がふってきた。


ゴン!  「ぎゃーーー! いたいー 何すんのよマイアー!」


頭を押さえてのた打ち回るミーアを見下ろすマイアは怖かった。ニコリと顔は確かに笑顔だが、怒りのオーラが立ち上がっていた。


「今はふざけてる場合じゃないのよ? わかった?」


半泣きになりながらもコクコクと頷いたミーアは、ギルドへと駆け足で向かっていった。


マイアもすぐに城へとやってくると、騎士団の詰所と同じく城ももぬけの殻となっていた。


「……コレはほんとに拙いわね 騎士団も軍も王女も街を見捨てて逃げ出したなんて、街のみんなが知ったらどうなっちゃうかしら」


マイアは嫌な予感がして仕方なかった。空っぽになった城を見上げると、夕日が差し込みオレンジ色の幻想的な光景となっていた。いつもなら感動していただろうが、今のマイアにはため息しか出なかった。





マイアにゲンコツされてミーアが半泣きでギルドに駆け込むと、ギルドでは冒険者たちの宴が始まっていた。陽気な音楽と笑顔のおっさんたち。泣いているミーアに酒を飲むように進めてくる冒険者をぶん殴る。ミーアは心の中でそれどころじゃないのよ!と悪態付きながら職員へギルドマスターに掛け合うようにSランクパーティーの証であるミスリルのギルド証を見せる。


「早く呼んでよ!」


「かしこまりました」と受付嬢はギルドの奥へと飛んで行った。しばらく待っていると、出てきたのはギンだけだった。


「ギルマスは?」


「行方不明みたいなんだよね。ごめんねミーアちゃん」


「はぁ? てかなんであんたが出てくんのよ!」


「あれ? 言ってなかったっけ俺は、ギルマスの孫なんだよ?」


「……ぼんぼんね!」


「よく言われます」


孫ならいいかと思ったミーアは騎士団の詰所に誰も無かったことを報告した。そしてマイアが今城に向かっていることも伝えると――


「またかアイツら!」とギンや、話を聞いていた冒険者たちが、怒鳴った。何があったのかを知らないミーアは自分が怒られたのかと思って半泣きしていた。


すると城の様子を見てきたマイアがギルドへ駆けこんでくる。役に立たなさそうなミーアを一瞥して、ギンへと話しかけた。


「ギンさん! ギルマスは?」


「不在です。 たぶん街の復興に顔を出しているんだと思います」


「何処か分かるかしら?」


「すいません でも、要件があるなら俺が伝えます」


マイアが騎士団の詰所、そして城に人っ子一人いなかったことを話す。


「そんな!」


ギンは完全に前回のリザードマン襲撃の時のように、騎士団は防衛に参加せず城でリリアーデの守りを固めているとばかり思っていた。聞き耳を立てていた冒険者たちも城に騎士団が居なかったことに動揺する。


「私の推測ですけど、たぶん姫殿下とともにこの街を逃げ出したのではないかって……」


「そんなことないです! リリは、民を見捨てて逃げ出すようなことはしません! リザードマンのときだって閉じ込められたことをずっと悔やんでたんです!」


ギンの叫ぶ声にギルドは静まり返った。一部の冒険者はニヤニヤとしていたり、殺すなどとつぶやいていたり、マイアとミーアは唖然としていた。




その時だった―― 街が、大地が、何かに恐怖するように震えだしたのは――










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