モンスター蹂躙でもおねんね
「どんどんいこー」
春眠はスキル【雷属性魔獣魔法】で雷撃を乱打しまくる。スキル【魔力回復】のお蔭で常に魔力が回復している春眠にとって、この程度の魔法なら際限なく乱射可能だった。大地を揺るがすほどの爆発のような雷の塊が放たれるとモンスターを飲み込んでいく。雷撃に飲み込まれたモンスターは断末魔をあげながら、焼き爛れ、最後には炭化してその命を消していった。
一方的にモンスターを蹂躙する小さな獣人を見て奮い立った冒険者たちも次々と攻撃を始めた。春眠の雷撃に巻き込まれずに接近してきたモンスターを倒し、春眠の邪魔を指せない様に剣を振るっていた。
「この子は俺らの勝利の女神だ!」
「嬢ちゃんには近づけるな!」
春眠の登場で怖気づいていた冒険者たちの心に再び火がともったのだ。半年前のリザードマン襲撃を経験しているだけあって、冒険者たちは一度やる気を出すと強かった。その戦い方は統制などないが、各個撃破で一対一なら負けている冒険者はいなかった。
しかし――
いくら士気が上がったところで数の暴力には勝てない。春眠が放った電撃は多くのモンスターを飲み込み消し炭にするが、それはほんの一部。モンスターはゴキブリのように湧いてくる。
皆殺しにしようと思っていた春眠ですら、だんだん嫌気がさしてきていた。
「これじゃキリがないなー」
もっと効率良い駆除方法はないものか春眠はステータスを覗き込んだ。【雷属性魔獣魔法】をたくさん撃った所為か、レベルが102から105に上がっていた。他の冒険者からすれば熟練でもない子供がレベル100に到達している時点で驚愕物だ。レベル100には誰もが到達できる訳ではない。限られた才能を持つ者だけがそのレベルへとなれるのだ。
しかし、春眠はあれだけブレスをしたのに3しかレベルアップしていないことに少し不満だった。なにしろ起きている春眠にとっては初戦闘だった。もっとサクサクレベルが上がると思っていたのだ。ただし普通の冒険者からすればこの上がり方は十分異常である。
「むぅ? この【限界突破】ってもしかして!」
春眠はなんとなく【限界突破】がどういったスキルか分かった。体力か魔力かなにかを代償にして一気に強くなる的ななにかだと当ててみせた。時間制限ありで、その間だけ無敵になるスキルである。
これは、春眠は知るはずもないが、魔境【闇ノ大森林】の主であるグランカッソの特殊なスキルの一つだった。勇者に飼われていたただの金魚だったバハムートが、勇者と肩を並べて戦えるようになったきっかけのスキルである。勇者と共に成長して認められなければ習得するはずのないスキルなのだ。
「んじゃさっそく! スキル【限界突破】発動!」
両手をあげてかっこよく発動したつもりだった。春眠のイメージでは超サ○ヤ人のようにカッコイイ黄金のオーラがシュウシュウと音を立て、春眠自慢の枕代わりになる黒髪のロングヘアが、金髪になって逆立つんじゃないかなーっとか思っていた。
「……」
しかし、見た目は何も起こらなかったが、春眠自身は各段に強くなっていた。いままでの身体の感覚とはどこか違う、全身が軽くなったようだった。
「あの嬢ちゃんなにしてんだ?」
「魔力が尽きちまったのか!?」
残酷にも冒険者たちには心配されてしまった。春眠は恥ずかしさで悶え死にそうになる心を切り捨てて、そのやるせない気持ちを怒りに変えてモンスターにぶつけることにした。
「俺は怒ったぞフ○ーザー!」
大きく深呼吸して肺に吸い込んだ空気に、【限界突破】で上がった力の全てを注ぎ込むようなイメージをする。力尽きてもいいから【魔獣魔法】のブレスにとにかく全てを注ぎ込んだ。パンパンに膨らんだ肺にエネルギーの重量を感じる。
さらにイメージしたのはただのブレスではない。さっきまでの電撃のブレスだと上下左右に広がったモンスターを一層できない。今度放つブレスは放射状で数秒間口から放ち続けられるタイプをインプットした。
そして、春眠は一気に肺の中の溜まった力を空気と一緒に吐き出した。
【限界突破】で強化されたブレスは、爆音とも轟音とも言えない雷が落ちた時のような大音量の放電音が遠く離れた地にまで鳴り響いた。薄い青の混ざったような雷撃が、春眠から遠くなるにつれて拡散して大きくなる。モンスターをかき消していった。迫りくる放射状の電撃から、逃げる間も、悲鳴を上げる間も無く一瞬で、焼き殺されて灰となっていった。
時間としてはほんの数秒。たったその短い間で第三都市ハインツから見える北の景色が変わってしまった。
モンスターが大挙していた景色ではない。空を埋め浮くしていた飛行系のモンスターが居なくなり、透き通った青色の空以外は、まるで見る影も無かった。
春眠のブレスで俊滅させられた大量のモンスターの灰が雪のように降りしきり、焼け焦げて真っ黒な地面を一面灰色で埋め尽くされていた。
「「……神だ」」
冒険者たちは心臓が止まったのかのように一ミリも動けずにいた。まさかたった一撃の見たことも無い魔法で、あの大量のモンスターを灰に変えてしまったのだ。なにか物語でも見ているかのようだった。救いの神だと春眠を拝み始める。
しかし、最強のKYさまは…… 大変満足した様子で、冒険者の反応など全く気にもしない。春眠は【限界突破】を使用した反動で体がだるくて眠たくて仕方なかったのだ。
「もうねるぅー!」
公前だろうと構いやしない。アイテムボックスから取り出したパジャマにその場で着替え始めたのだった。一部の冒険者は「おー!」と嬉しそうに声を上げたが、春眠の下着は男物でがっかりと肩を落としていた。ポンポン付きの帽子をしっかりと被って、汚れてもいい様に脱ぎ捨てた冒険者風の服の上に寝っころがった。
「おやすみー」
なんとその場で寝始めたのだった。いつもの声が聞こえてくる。
『ハルミ・マクラは、モンスターの群れを討伐しました』
『ハルミ・マクラはレベルアップしました ハルミ・マクラはレベルアップしました ハルミ・マクラはレベルアップしました ハルミ・マクラはレベルアップしました』
『ハルミ・マクラは、称号【雷神】【大量虐殺】【灰の女神】を得ました。ステータスに補正が付きます』
春眠のブレスが、次なる災厄である北の魔境で最悪のモンスターの目を覚まさせたとこの時は誰も知る由が無かった。
もはや死神の囁きと言っていい声はまだ続く――
『スキル【睡眠学習】を発動します』
『【睡眠学習】施行中の、ダメージは全て無効になります』
定期テスト・・・死にますた!!! 国語と数学以外、レッドポイント確実っすwww まあどうでもいいんですけどねっ! あははは(泣)
補習やだなぁーwww
そして、いまだに日刊ランクが一桁!? 何が起こってるんだろう。
あれ? 週刊もランクインしてるし!
読者様本当に感謝です!