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歓迎会

歓迎会の準備のされたフードコートの扉の前に着いた。


なんか緊張してきた。

実は歓迎会とかそういうものは初めてで、自分が主役だと思うと少し恥ずかしい。



「ねえ、葉月」



「なんでしょう」



「葉月って歓迎会とかそういうものってよく行くの?」



「……もしかして、緊張しているの?」



「そんなこと………あるけど……」



「意外に素直なんですね。てっきり否定して扉を開けるのかと思いました」



「葉月にはもう恥ずかしいところ見られているし、別に隠す必要もないかなって思ってね」



ガチお嬢様の前でお嬢様の真似をするなんて、今思い出しても顔が熱くなる。




「は、恥ずかしいところってええ!?まだ私、服の上から撫でるだけで決してめくって見たりなんてしてないのよ……でもこれってもしかして見て欲しいってサインなの?」



oh…

いい話っぽかったのが一瞬で吹き飛んだよ……




でも、一緒に緊張も吹き飛んだよ。



「ありがとう葉月、行こう」




「あああありがとうってそれはつまり今夜OKのサインなんですかいやいいに決まってる」




葉月がなにか言っていたようだけどよく聞こえなかった。




よく聞こえなかった。




扉を開けるとそこには沢山の料理と、弥生ちゃん達三人が待っていた。




「おっそーい!葉月に呼びに行かせてから何分待ったとおもってるの、三十分だよ!三十分!」




「ご、ごめんねー。ちょっと寝ちゃっててさー」



「そうなんです、ちゃんと起こしたのになかなか起きてくれなくて」




葉月はまず「ちゃんと」の意味を調べてこようか。



「そらなら仕方ないか、でも一つ忠告だ。いくら主役だからって遅れてきたらみんな帰っちゃうんだからな」



弥生ちゃんが急に真面目になる。


そんなに怒らせちゃったのかな?



「本当にごめんなさい。待っててくれてありがとう弥生ちゃん」



「わかればいいんだ、今度から気をつけてくれればそれでいい」



「それではぁ、主役の卯月さんも来たことですしぃ、皆さんすわりましょうかぁ」



「じゃあ私は卯月のとなりだ」



弥生はさっと卯月の横をキープする。



「わ、私も卯月さんのとなりにします」



葉月がものすごい勢いでとなりに来た。




「あらあらぁ、もう仲が良いのねぇ。吉澤さん」




「そうですね、葉月さまも普段より生き生きしているようにみえます」




大きな円形のテーブルに五人が座る。

順番は私から時計回りに葉月、メイドの吉澤さん、百合恵さん、弥生ちゃんの順だ。




「それでは卯月さまの歓迎会を始めます。卯月さま、一言お願い致します」



吉澤さん、そういうのは事前に伝えてくださいよ。



どうしよう。


とりあえずとなりの葉月に助けを求めよう。


葉月を見る。



葉月は両手で口を押さえて目をそらしている。



原因は葉月か!



おそらく葉月が事前に伝えるようになっていたのだろう。


ど、どうしよう。

とりあえず思っていることを言おう。



「えーと、本日は私の為にこのような会を開いてくれてありがとうございます。私は、田舎育ちで、都会の人と馴染めるか、仲良くなれるのか心配でした。でも、葉月に弥生ちゃん、百合恵さんに吉澤さんと、親切で優しい人に出会えて私は嬉しいです。改めてこれからよろしくお願いします!」




「素晴らしい一言、ありがとうございます。百合恵さん、次はいかが致しますか?」




「そうねぇ、折角料理があるのだし、いただきましょうかぁ。あぁ、そのまえに乾杯をしましょうかぁ」




右に置いてあったオレンジジュースのグラスをとる。




「それではぁ、卯月さんの入居を祝ってぇ、かんぱぁーい」



「「乾杯!」」



「ゴクッゴクッ………ぷっはー、体に染みる」



弥生ちゃんがすごくオッサンくさいんだけど。



「弥生さん、そんな飲み方をしているからと……」



「やめろーー!それ以上はやめてくれ!頼む!いや、お願いします葉月さまー」




なになに、一体葉月はなにを言おうとしたの?





しかし美味しい。

そしてなんだか懐かしい味もする。



「それにしても豪華ですね、こんなに沢山の料理を作ってくれてありがとうございます」



「あらぁ、別にいいのよぉ。温め直しただけだものぉ」



それは出来れば聞きたくなかったわぁ。



でもそうなるとあの立派な厨房はなんなの?

ただの温め機能だけなの?




「申し訳ございません。本日は夜を貸し切りにしてもらうために他の方の夕飯を少し早めにしてもらっていたので料理人の方が忙しく、こちらの料理はデリバリーになってしまいました」



「いや、全然気にしてないですよ!むしろわざわざ貸し切りにしてもらってすいません」



そういうことなら納得だ。

逆にもうしわけない。



「ではぁ、そろそろアレを始めましょうかぁ」



アレってなんだろう。



「アレってなんだ?」



弥生ちゃんも知らないようだ。



「ついに来たのね、この時が」



なんか葉月が燃えている。



「もって参りました」



吉澤さんが持ってきたのは五つのお寿司だ。



「寿司ですね」



「これはただのお寿司じゃないのよぉ。その名もぉ、ロシアンルーレット寿司ぃ」



これはあれか、バラエティーとかでよく見る一つだけわさびが大量に入っているものだ。




「吉澤さん、説明をお願いしますぅ」




「はい。ロシアンルーレットとは、皆さんご存知、わさび等の刺激物を大量に入れたアレです。今回はゆりのささやき特別製となっております」



特別ってなに。

怖いよ葉月。



「うっふっふっふっふ…………」



間違えた、葉月が怖い。



「なにが特別製かというと、それは中身です。本日はわさびの他にチョコレート、青汁の粉末が二つ、葉月さまのリクエストのもの。以上の五つになります」



それのどこがロシアンルーレットなの!

全部実弾じゃない!

空砲をくださいお願いします!



「あらぁ、卯月さん心配しないでぇ。可能性は低いからぁ」



一体なにが低いんですか百合恵さん。

まさか生存率ですか!生存率なんですか!



「それではぁ、主役の卯月さんから反時計回りでお願いしますぅ」



私からか、一体なにを選べば………



「こ、これにします」



とりあえず真ん中をとった。



「皆さん一緒に食べるのでぇ、待っていてくださいねぇ」



「わかりました」



「次は私だな、うーん…………これだ!」



「私ぁ、これかなぁ」



「私はこれにします」



「残り物には福があると、私は信じます。これで計画通りなら………うふふ」




葉月がさっきから壊れてるよ。




「それではぁ、いただきますぅ」




「「いただきます」」




「んぐ!?これはっ、生臭い魚の味とチョコレートの甘さが合わさって不味い。なんかリアクション取りずらい感じに不味い」




「ごぼっ、んーーーーーー!んーーーーーー!!!」




「弥生ちゃん!しっかりして!早くオレンジジュース飲んで!」




これはわさびじゃなくて良かったかもしれない。

あれ、他の三人はとくに何もない?




「あらぁ、青汁の粉末は意外といけるわねぇ」




「そうですね」




百合恵さんと吉澤さんは青汁の粉末か。



となると葉月は自分のリクエストになるのか。




「って、葉月!大丈夫!?泡吹いてるよ!」




「…………」




一体なにを入れたの。



「吉澤さんお願いしますぅ」



「はい」




ギュッ、ドサッ、ズルズルズルズル



吉澤さんが葉月の首根っこを掴んで引きずっていく。



これ大丈夫なの!?

扱いがすごい雑だよ!

ご主人様の扱いすごく雑だよ!



「あ、あれは大丈夫なの?」




「まあ問題ないと思うが」




その後、料理を食べ終えても葉月は現れなかった。




「それではぁ、そろそろお開きにしましょうかぁ。片付けは私と吉澤さんでやるのでぇ、二人は先に部屋へ戻っていて構いませんよぉ」




「じゃあ、ごちそうさま」




「ご、ごちそうさまでした!」




弥生ちゃんに着いていく。



「今日は楽しかった」




「こちらこそありがとう!」




「いいんだ。それで…………その……」




「どうしたの弥生ちゃん?」



「その…………と、友達だよな?私達、もう友達だよな?」



「え?」



私はもう友達のつもりだったけど弥生ちゃんは違ったのかな?




「違うのか………そうだよな、私なんて……」




「え!?違うよ、違うから!友達だよ!私は会った時から友達だと思ってたよ!」



さっきまで泣きそうだった弥生ちゃんが笑顔にもどる。



「本当だな!信じていいんだな!」



「う、うん!信じていいよ」



「卯月ーー!」



「うわっ!」



弥生は卯月をギュッと抱きしめる。




「これからよろしくな、卯月」



「よろしくね、弥生ちゃん」



こうして私は弥生ちゃんと本当の友達になったのだった。




誤字脱字があったら教えてもらえると助かります。

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