花見のメインは花見ではないということ
四月のとある休日。
「花見行きたいね」
「卯月さん、花見の季節はもう少し前かと」
「確かに桜はもう散っちゃったけど、外でビニールシート敷いておにぎりとか食べたいじゃない?」
「ビニールシートって、なんで敷くんですか?」
「え?都会だとビニールシート敷かないの?直で座るの?」
「直?椅子には直で座りますよ?」
「椅子?あー、都会だと花見はキャンプ的なノリなのか」
「キャンプ?」
卯月と葉月の噛み合わない話をどうにか軌道修正するべく、吉澤さんが間に入る。
「葉月さま、卯月さま、少しよろしいでしょうか」
「どうかしましたか?」
「葉月さま、一般的な花見では、桜の木の下でビニールシートなどを敷いて、その上に座ってお酒や食事をするのです」
「そうだったんですか」
「まさか葉月が一般的な花見を知らないなんて。それじゃあ葉月のやってる花見ってどんな感じなの?」
「私は桜の木の下でお茶会ですね。ブルーシートではなく、テーブルと椅子ですが」
「それはなんかあれだね。花見じゃなくてお茶会だね。お茶会春バージョンだね」
「桜は見てますよ?」
「そこなんですよ!」
「?」
「花見っていうのはね、とりあえず春にみんなで集まってワイワイするのが目的なんですよ!桜はいわばオマケ!」
「なるほど」
「葉月さま、あくまでもそれは一部の意見です。桜を楽しんでいる方も大勢いますので」
「そんな訳で、桜はないけど花見しよう」
「ごめんなさい。私、これからやることがありまして。花見はまた後日ということで」
「そうなんだ、じゃあ来週とか...」
「来週も予定がありまして、本当は卯月さんと一緒にいたいのですけれど。ごめんなさい。それでは私はお先に失礼します」
葉月はそう言い残してこの場を後にした。
「あの、吉澤さん。葉月のことで少し聞いてもいいですか」
「いいですよ。私からも一つ、卯月さまにお話しておきたいことがありまして」
卯月と吉澤さんの話は次回になります。