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異常気象と人の心理

四月だというのに気温は二十五度を超え、夏日となっていた。

夏日だ。

な・つ・び・だ!


「な!つ!び!だ!」


「う!る!さ!い!」


「卯月と弥生、朝からずっとそのやり取りしてて飽きないの?もう昼休みだよ」


「ま!な!つ!び!だ!」


「う!そ!つ!か!な!い!」


「確かに体感だと真夏日も頷けるのですが、室内の温度計は二十四度ですよ。しかし、むしむししてますしブレザーくらいは脱いでもいいような...」


そういって桜はブレザーを脱ぎワイシャツとニットベストになる。


「あぁ...ぁ、涼しい」


桜は腕を上に伸ばし、上体を反らして伸びをおこなう。


「むにゅーん、むにゅーん、ぎゅむーん」


「卯月効果音口で言うのやめい!」


「ビシッ!」


「だからやめてって」


「ぶふっ...ぐふっ...ふ...」


「脱ぐしか...ない...」


南も桜に続いてブレザーを脱ぐ。


「ぺたーん」


「ぶふぅっ!」


「卯月...最期に食べたいもの...教えて?」


「南ごめんね?弥生ちゃんにも効果音付けるから許して」


「もうさっきツッコミに付けてたと思うんだが?」


「仕方ないなぁ、特別に私が脱がしてあげましょう。それー」


「うわぁっ!本当に脱がしに来るなぁ!ちょっ、どこ触って...あれ?急に動きを止めてどうしたの?」


「......絶壁ッッッ!!!」


「せめて効果音にしろアホォォォ!!」


「ゼッペキーン」


「うーん、あり...なのか?」


「効果音なら...いいんだ...」



翌日。


「四月という名の六月下旬」


「あーそれわかる。まさに六月下旬だよね」


「六月下旬といえば蒸し暑いよね」


「わかる。蒸し暑いといえば六月下旬だよね」


「まさに四月六月下旬だよね」


「四月六月下旬という名の四月だよね」


「四月という名の六月下旬」


「あーそれわかる。まさに六月下旬だよね」


「六月下旬といえば蒸し暑いよね」



葵、南、桜は卯月と弥生の謎の会話を遠目に眺めていた。


「あの二人、朝からずっとあの調子だよね」


「暑さで脳が蕩けてしまったのでしょうか?」


「蕩ける前に...脱ごう...」


「そうですね。私達まで蕩けてしまってはあのカオスな会話を止める者がいなくなりますし」


「「はぁ...涼しい...」」


「葵...脱がないの?」


「ああ、私は大丈夫だよ。うん、本当に。それよりあの蕩けた二人を何とかしないと」


「任せてください、私が二人を解放させてきますから」


桜が卯月と弥生の会話の輪に入る。


「四月という名の六月下旬」


「あーそれわかる。まさに六月下旬だよね」


「六月下旬と...」


「六月といえばジューンブライド!ウエディングドレス着てみたいですよね」


「ウエディングドレスって暑そうだよね」


「わかる。暑いといったらウエディングドレスだよね」


「まさに四月ウエディングドレスだよね」


「四月ウエディングドレスという名の四月だよね」


「四月という名のウエディングドレス」


「あーそれわかる。まさにウエディングドレスだよね」


桜は涙目で葵達の元へ戻ってきた。


「もう手遅れでした、私の大切な友達が...こんな早くに亡くなってしまうなんて...」


「何故殺した」



さらに翌日。


「心頭滅却すれば火もまた涼し!」


「心頭滅却すれば火もまた涼し!」


卯月に続いて弥生が復唱をする。


「夏といえば!」


「辛い物!」


「カレー!」


「坦々麺!」


連日の夏日。既に卯月と弥生を止める者はいなかった。


「それにしても、教室にカレーと坦々麺の臭いが充満して、心なしか気温が上昇しているような」


「臭い......」


「あっ、二人がカレーと坦々麺を凄い勢いで食べ始めた」


「見ているだけでこちらまで暑くなってきました」


「脱ぐ...」


「そうしましょう」


南と桜はブレザーを脱ぐ。

しばらくして卯月と弥生はカレーと坦々麺を完食した。


「暑い!」


「辛い!」


「心頭滅却しても暑いものは暑い!」


「心頭滅却しても辛い物は辛い!」


「いやいや、なんで二人はあえて暑くなるような事をしてるんだ」


「暑い日は辛い物ってネットに書いてあったし」


「そうだそうだ」


「あ、見て、私達以外みんなブレザー脱いでる」


「じゃあ私達もブレザー脱ごうか」


卯月と弥生はブレザーを脱いだ。


「ひゃー、汗で袖透けちゃってるね」


「あれ、葵は脱がないの?」


「私は別に...大丈夫だし...」


「汗、凄いよ?」


「こ、これはっ、冷や汗!そう冷や汗だよ!暑くはないから!」


「まあまあまあまあ......それー」


ガバッと葵のブレザーを剥ぎ取ると、そこには透け透けのワイシャツを纏った葵が現れた。


「きゃぁぁぁぁ!ちょっ、見ないでっ!」


「葵、私達より透けてるよね」


「ボディラインがくっきりだね」


「ジロジロ見るなぁ!」


「エロくて、つい」


「あーもう恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいぃ!」


葵は顔を真っ赤にさせて、自身の身体を抱きしめるようにうずくまった。


「それにしても葵はなんでずっとブレザー着てたの?」


「.........から...」


「え?」


「......しい...から...」


「もう少し大きい声で」


「汗っかきで恥ずかしいから!脱げなかったの!」


「汗っかきを気にしていたのですか。わかりますよ。私も胸の谷間が汗でぬるぬるして恥ずかしいです」


「なるほど、桜の胸の谷間は夏日にはぬるぬる」


「ちゃんと休み時間にトイレで拭いてますからね!」



(なんか、気にしてた私が馬鹿だったなぁ)


その後、夏日には葵もブレザーを脱ぐようになったとさ。






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