紅様と葉月様の仲を見守り隊隊員活動記録
これは、ノーマル一般人、秋野楓が、どのような経緯で見守り隊隊員になり、百合に染まっていったかをまとめた活動記録の一部である。
今から約一年前、楓が一年生の頃の話。
五月の中頃、新しい環境にも慣れ始めた私は、クラスの友達と楽しい学校生活を送っていました。
そんななか、私は数日前から気になっていることがありました。
気になること、それはクラスの数人が、二人の生徒を遠巻きに見ながら、ひそひそと話をしていることです。
「なんであの二人観察されてるの?」
私は友達の妙ちゃんに話しかける。
「なんでって、アレでしょ。やっぱりお嬢様と騎士的な?」
「お嬢様……。でもなんで騎士?」
「やっぱりお嬢様の恋の相手は王子か騎士の二択じゃない」
「そうかな?普通に一般人との禁断の恋とか……」
「細かい事は置いといて。まあなんで観察されてるかなんだけど、それは普通にあの二人のカップリングを妄想してるんだと思う」
「カップリング?女の子同士だよ?変じゃない?」
「しょうがないなぁ。では、百合について教えてあげよう」
「それって植物の方じゃないやつの事?」
「もちろん」
「いや、別に意味はわかるから遠慮して……」
「意味がわかってるだけじゃ駄目なんだよ。現に楓は偏見の目で見てるでしょ」
「偏見ってそんな、一般常識から見て変だと言っただけ……」
「まあとりあえず聞いとこうよ、ね?」
「う、うん」
それから一時限目の授業が始まるまでの時間と昼休みになるまでの休み時間ひたすら百合について妙ちゃんが語った。
「私が間違ってたよ。ごめんね妙ちゃん」
「いいの、楓の百合への偏見がなくなっただけで私は満足」
「もしかして妙ちゃん、私のことをそういう目で見てたの?」
「えっ……。それは、その……。えっと……」
「私、百合を見るのはいいけど、自分がその対象になるのは嫌だなぁーって」
「そ、そうだよね……。わ、私もそうだよ?うん……」
「よかったー。もし妙ちゃんが私を好きだなんて言ったらどうしようかと思ったよ。私と妙ちゃんはずっと友達だよね!」
「……うん、ずっ友……だね」
「あれ、妙ちゃん泣いてるの?大丈夫?」
「大丈夫……、大丈夫だよ。目にゴミが……、入っただけだから」
「あっ、私目薬持ってるよ!貸してあげるね」
目薬を妙ちゃんに渡す。
「ありがとう楓」
妙ちゃんが目薬をさし、私に目薬を返す。
妙ちゃんの目は少し充血していた。
「目、大丈夫?痛くない?」
「もう大丈夫だよ。それよりあそこの見守り隊の人に話しかけてみようよ」
見守り隊。それはさっき妙ちゃんが百合について語っていた時に言っていた、北村紅と大森葉月のカップリングを遠くから見守っている人の事だ。
「そうだね、私もあの二人のカップリングは興味あるし」
こうして秋野楓は見守り隊隊員になったのである。
秋野楓が隊員として活動するのはまた別の話。