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冬の唄  作者: 夜今宵
1/1

プロローグ

寒い雪の降る夜。

彼は、雪に紛れる様に立っていた。

2009年 4月

春の趣を感じさせる桜の花びらで、昼の公園の辺り一面が桃の色となっていた。その中心に生えている胴回りの広い、満開の桜の木に俺は、腰を下ろしていた。

今日も、こうやって桜をボーっと眺めて一日がただ、過ぎていくのを待つのだろうか。この過ごし方も自分では、それなりに満足をしているつもりだ。

でも、あの眠りから目覚めて俺は、記憶喪失と言うものになった。

だから、俺は、以前の幸がどんなやつだったのかも覚えていない。今はただ、幸という存在が頭に記憶していた物ではなく、身体に記憶させられていた事を実行する。

故に、そこには・・・・・・俺の意思などない。

それで、別にいいと俺は、思っている。

俺の意思が干渉できないのは、以前の幸がごく当たり前にしていた事。逆に言えば、以前の幸が “しないこと”については、今の幸の意思がある。

以前の幸がしないことについては、ごく自然と解った。

解った時、俺は、思った。以前の幸は、普通の人の振りをした “異常者”だったのだと。

あいつは、ごく普通の人であろうとした。

けれども、時たま、とてつもない殺人衝動に襲われる。

それでも、あいつは普通の人で在ろうと、その衝動に耐えて続けてきた。それは、してはいけない事だと彼ゆきは、殺らなかったしなかった。

だから俺は、あいつが、しようとしなかった物を、あいつじゃない俺が俺の意思で、出来るその時が来るのをジッと桜の木の下で待っている。

いつの日か殺せる相手を俺は、待っている・・・。



最近、私には。やる事が最近、やる事が一つ増えた。

そのやる事とは、二年程前私は、とある人に命を救ってもらった。

その人は、私を庇って、意識不明という重体を負った。

私は、せめて命を救ってもらった者として、できる限りその人の傍に居た。

そんな事を続け、私も中学生から高校生となった春。

突然彼は、目を開いた。

そして、二年間閉ざしていた口が開いた第一声は

「死の境を観た」

と彼は、言った。

その後、私は病室を出されて、家族以外の面会は禁止になって以降彼を見ていない。

そんな折、病院側から連絡があり彼は、もう退院したのだそうだ。

私は。お礼を言いたくて彼の屋敷を訪ねたのだが、彼は出かけて帰って来ない日もあるそうだ。

それでも待ちきれない私は、彼を捜しに早朝や学校の昼休みに外に出ている。

そんな感じの生活を始めて、今日は丁度一週間目。そして、今は昼休みの合間に学校を抜け出してきている。

「はーッ・・はー」

流石の陸上部に所属している私でも、お弁当の後の十五分間全力疾走は疲れる。それに、いつの間にか知らない場所まで来ていた。

疲れたので、すぐ近くに見える桜が綺麗に咲いている公園で一休みする事にした。

公園に近づく毎に吹き荒れる桜の舞が、より綺麗に見える。

公園の中心にある桜の木に腰を下ろしている、黒い塊を見つけた時私は、俗に言う ”デジャヴ”という物を感じた。

彼は、今のように降る物に紛れていた。

あの時は、雪で今は、桜。

私は、無我夢中で彼の所で走った。

そして、桜の幹に腰を下ろす彼の前に立つと彼は、俯いていた顔を上げて私に目を向けて言った。

「お前・・・誰だ?」

彼が、見つめる中、私はその問いに応える。

「わ、私は、奇咲 跡。周りの人からは、キセキって呼ばれています」

「ふーん。それで?」

そして、私は、満面の笑みを浮かべて言う。

「そして貴方に命を救われた者です」

自分で言うのもアレだけど、今の私は、可愛いと思う。



この作品は、時系列がバラバラです。

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