表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界じゃないよ?  作者: 乱読家
異世界じゃないよ?
7/30

<湖で洗濯>


 あれから数日がたった。

 その間一度も医師からの連絡は無かった。

 勿論それ以外の誰からも連絡は無かった。

 もしかすると違法行為を行っている何者かからの脅迫なり何らかのアクションがあるかとも思ったがそれすらもない。

 一体何が起こっているのだろう?


 ログオフしたら絶対に病院側を訴えてやろうと思う。


 現実の身体が今どうなっているのかが物凄く不安だ。


 それにしてもこの仮想現実はやけにリアルで、ものを食べれば腹は膨れるし、食べたら出すものを出したくなる。

 もしモニターされているとしたら、と考えると物凄く恥ずかしかったが、どうしても我慢できなくなってしてしまった。

 手ごろな枝を折り取って穴を掘り、まるで犬猫のように……しかも遮る物はせいぜい小さめの藪くらいだ。

 自分の中の大切な何かが失われた気がする。


 手のひらくらいのサイズの大き目の柔らかい葉っぱのお世話になりました。

 この件も含めて絶対に訴えてやる。絶対にだ。


 この世界は温暖な設定なのか夜に凍えるようなことは無かったが、布団も無いところで寝るのはつらい。

 サバイバルの知識もないし、簡易的な家すら作り方がわからないので草原に寝転んで寝るか、木に寄りかかって寝るくらいしか出来ない。

 身体を覆えるような大きな葉っぱをつける樹木でもあればそれを布団代わりに出来たのだろうがそういったものも見当たらない。

開放的過ぎる環境でぐっすり眠れるほど自分の適応力は高くないようだ。


 疲労はあまり回復しなかった。


 それと困ったことにどれだけリアル志向なのか風呂に入りたくなった。

 端的に言えば身体がかゆい。


 そこで思い出したのは最初ふらふらしていた時遠くに見えた大きな湖か海っぽいもの。

 あそこで水浴びだけでもしようと思いのろのろと歩き出した。

 それに喉も渇いているので水も飲みたい。

 それほど動いては居ないし、果物からある程度水分は取れるがそれでもそろそろ限界を感じる。


 「ガサッ」


 たまに森の中から何かいるような音がする。

 一度もまだ姿を見ていないが動物も用意されているのだろう。


 そういえば、動物ではないが昨日へんなものを見た。

 遠くだったのではっきりとは分からなかったが影のような骨組みのようなよくわからない……モンスターなんだろうか?


 不気味なイメージだったので近づくのはやめておいた。


 だって、この世界のシステムは痛みのフィードバックまでリアルすぎるので、もし戦闘になったらと考えると、ね。


 実はリンゴっぽい果物を取っている時に一度枝に引っ掛けて腕に怪我をしたのだ。

 その時のリアルな痛みは一寸考えたくないほどだった。

 出来た切り傷は今はかさぶたになっていて触ると少しかゆみを感じる。

 何の目的でここまでリアルにしているのかはわからないが、いくらなんでもここまでリアルにする必要はないと思う。


 この世界は病院のシステムかと思ったのだがもしかすると外部サーバのゲームのどれかに繋がっているのかもしれない。


 早く家に帰りたい。


 今すぐログオフ出来るなら病院を訴えるのは止めても良いと思った。

 それくらい切実にログオフしたい。


 それにここ数日誰とも話せていないのもつらい。

 これは、あれか? 新手の拷問か?


 「……」


 そんな風にネガティブな思考を垂れ流しながら歩いていたらいつの間にか湖に到着していた。

 目の前の水を見ていたら無性に飲みたくなってしまった。

 入れ物も無かったのでしゃがみこんで手で掬い、少しだけ飲んでみたところしょっぱくなかったので湖なんだろう。


 久しぶりに水を飲んだ所為か、喉の渇きがはっきり自覚させられ、そのまま顔を湖に突っ込むような感じでごくごく飲んでしまった。

 まあ、VRの世界だし、腹を下すような事はないだろう。


 飲みたいだけ水を飲んでようやく満足し、暫く大の字に寝転がって一息つく。

 少しだけ落ち着いたところで今まで余裕が無かったので気にしていなかった周囲の景色を眺めて見た。


 そしてひとつ気になったのだが、湖の中央に見える巨大な岩の天辺に何か人工物があるのが見えた。


 あれはなんだろう?

 シルエットからすると機械の様だが。


 そんな事を考えていると背中が痒くなって無意識にガリガリ掻いていた。

 というか、体中が痒い、気持ち悪い。

 まあ、とりあえずは水浴びしよう。そうしよう。


 モニターしてるかもしれないとかそういうことはトイレの時で、もう吹っ切れた。

 素っ裸になって湖に飛び込んでばっしゃばっしゃ洗いまくった。

 顔を洗い頭を洗い思いつく限り体中を洗った。

 石鹸も何も無いので大して綺麗になるわけでもなかったが、それでも凄く爽快だ。

 ついでに服も洗濯した。といってもやっぱりただの水洗いだが。


 なんというか、疲れたがすごく気持ちよかった。


 仮想現実の中なのにまるで本当に運動したみたいだ。

 そういえば、最近まともに運動してなかったなと思いつつ湖から上がって手近な芝生の上で寝転んだ。


 服はすぐ横で自分と同じように芝生の上に広がっている。

 乾かしている間に風で飛んでいかれても困るので端にある程度の大きさの綺麗に洗った石を乗せておく。


 あー、ぽかぽかして気持ち良い。

 疲れたところに気持ちよい日差しを浴びてしまい我慢できなくなった。

 一寸だけ寝よう。一寸だけ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ