<最後の人>
「えーと、つまり俺はすでに死んでいるってこと?」
宇宙船の人工知能という相手と会話したところ、なんだかとんでもない話が飛び出した。
「ゲームとしての設定の話ならそれはどうでもいいのでとりあえずログオフしたいんだが……」
船の人工知能:「降下艇に分解用ナノマシンに対して効果が高いと思われる生物種を優先して生成する指示をだしたところ、データ領域に存在していた高等生物は一通り作成されました。勿論記憶も含めて」
船の人工知能:「死んでいるのは貴方ではなく、その元になった人物です。貴方の記憶にその情報がないのは複製を取られた段階では貴方は死んでいなかったので当然です。また、複製後のオリジナルの記憶に関しては複製側には追記されませんので知る方法がありません」
船の人工知能:「なおログオフという言葉の意味は分かりかねます」
「ぽかーん……」
思わず、口で「ぽかーん」とか言っちゃったよ。でも、これくらい良いよね?
なんだこの状況。
聞いた話をまとめると、今話してる相手は静止軌道上にいる宇宙船の人工知能で、その目的は惑星の地球化だそうだ。
この地球化って奴は軌道エレベータがテロで破壊されたあと話題になってた奴のことだと思う。
たしかにあの計画には「データ化した地球上の全生命の情報を持っていく」とあったけどそれがこういった形だったとはねぇ。
それで、現在この地球化が「分解用ナノマシン」って奴の暴走でうまく行ってないのでその事態を好転させるために色々手を打った中に俺の再生も入ってたということらしい。
状況をもし受け入れたとしたら、つまり……。
もう、とっくに人類は滅亡してて、今いる星は地球化の途中で危険な「分解用ナノマシン」(これってあの影みたいな奴のことらしい)が地表にうろうろしててそれを排除したいから俺を作ったって事か……
そのまま10分くらい思考停止してしまった。
……
でも、まてよ。なんでもう人類いないのに地球化なんてやってんの?
◇ ◆ ◇
それに関して船の人工知能に説明を受けたところ、この宇宙船の目的は、
1.銀河中心方向へ向かう
2.選択可能な範囲内で出来るだけ地球化が容易な天体を発見し可能な限り地球化を行う
の二つらしい、で今は「1」が実行不可能な状態だそうで必然的に「2」を実行中だそうです。
「はぁーーー」
なんだか疲れた。
ほんと、現実として受け入れても構わないくらい確かに色々仮想としてはおかしかったけど、まさかこんな落ちが付くとはね。
じゃあ、もう家にも帰れないし定期購読してた電子データの続きも手に入らない……それどころかまともな食事とかももう無理なのか?
当然だけど気分転換にやってたVRゲームの続きももう無理か。
あ、でも俺のオリジナルは最後まで遊んだし、電子データも読めたのか?
頭こんがらがるわ。
とりあえず、宇宙船の設備を使って何が出来るのかを説明をしてもらった後、さっそく湖のそばに犬小屋付きの新しい家を一軒作ってもらった。
今日からは野宿しないで済むのはありがたい。
<最後の人>(後書き)
・・・
それに関して船の人工知能に説明を受けたところ、
の追記。




