<要救助者>
船の人工知能は現在の状況を分析していた。
ぬいぐるみ達はこのままだと数的優位を覆される可能性があるが今のところはまだ問題になるほど損害は出ていない。
降下艇から生成した生物群は戦力としてみた場合ほとんど役には立たなかったが一部の大型動物は分解用ナノマシンとも十分渡り合えることが分かった。
監視衛星群からは資源として取り込み可能な新しい小惑星発見の報告は入っていない。
現状採れる選択肢はそれほど多くないが、何か別の方法も検討しておこう。
それとは別に最悪のケースを想定して分解用ナノマシンが爆発的に増殖した場合のシミュレーションも実行しておく。
◇ ◆ ◇
その時地表の降下艇より奇妙な報告があった。
降下艇:降下艇の船体側面に設けられていたメンテナンス用エアロックを操作して開放した者がいる。
※エアロックは外部からカバーをあけてハンドルを廻して引っ張るとオープンするタイプ
船の人工知能:人間(と認識する)相手なら外部からの要救助者扱いで問いかけを行うこと。
降下艇:外部からの要救助者扱いで問いかけを行った所「自分は人間で、今病院の検査を受けているがログオフしたい」と判断できない内容を告げられた。
船の人工知能:口頭での要求内容に関しては回答を保留し、個人特定の目的でDNA採取を求めよ。
降下艇:個人特定の目的でDNA採取を求めたところ了承され、現在対象者は降下艇内の遭難者用のブロックへ誘導済み。
船の人工知能:DNAパターンの登録後、当船に対する保護の申請を行うか問いかけよ。
降下艇:保護の申請を行うかの問いかけに「保護の申請を行う」と回答。
船の人工知能:緊急時の要救助者扱いで重要ブロック以外への利用許可と資機材の使用許可を発行。
降下艇:了承
船の人工知能:この時点で宇宙船の乗組員の一部として登録(不慮の事故で船員がいなくなることも想定されている為ある程度の権限は自動的に付与される)
降下艇:了承
船の人工知能:船員扱いとなったので、宇宙船内に唯一の生存者と認定され、現在該当人物に全てのシステムの使用権を付与。
以上の流れは本来この地球化を目的とした宇宙船にとっては起こりえない(もともと乗組員登録されたものは一人もいなかったので)やり取りであったが、地球文明規格の宇宙船は全てこの「遭難者の救助」に関するルールが設定されていたためこのやり取りが発生した。
結果、救助された(?)地球人はこの時点で宇宙船の全ての機能を自由に使う権利を手に入れた。
◇ ◆ ◇
なんだかよくわからないが岩山の天辺にあった着陸ユニット(?)の側面に設けられていた非常用と書かれた出入り口から入ったところ質問攻めにされいつの間にか宇宙船の全設備を使用できるとかいわれました。
どーなってんの?
ログオフしたいだけなのに!!!




