みんなの能力値
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「お前は盗賊とか、そういった闇系の職業にしてやればよかったな」
妖精医師にすっかり体の構造を確認されたあと、乱れた衣装を着直した私は文句を言った。
いつも見ている体と大して変わらないのを確認したら、あっさり離された。なんだか悔しい。胸を増量しておけばよかった。
「剣士や弓使いだけじゃなくて、職業もたくさんあるんだ」
「用意したぞ。冒険者ギルドで転職も可能だ。
……そうだ、能力を見る方法を教えてやろう。『能力確認』と言ってみろ」
「『能力確認』?」
そう言ったシャグマの前に薄青い光が広がり、文字が書かれているのが見える。
アルバも興味があるらしく、二人で眺めている。
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【冒険者名】シャグマ
【職業】弓使い
【レベル】38
【能力値】
生命力388
精神力295
筋力45
体力48
俊敏46
知恵93
器用98
幸運35
【職業技能】
必中
【特殊技能】
医学知識 一意専心
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「俺、知恵と器用以外、全部平均なのかな」
「だいたいなんでも器用に出来る、が表現されているな」
現実世界の能力を物語世界の能力に変換するよう設定したので、この能力値は現実世界の彼を大まかに表しているものでもある。
他人の能力を見るのは楽しい。
アルバも興味が出たらしく、同じように能力を確認した。
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【冒険者名】アルバ
【職業】剣士
【レベル】68
【能力値】
生命力999
精神力999
筋力99
体力99
俊敏99
知恵93
器用87
幸運34
【状態異常耐性】
魅了(一部無効)
【職業技能】
痛打 連続切り
【特殊技能】
気配感知 方位感知 距離感知 登攀 集中 全武器装備可能 全武器使用可能 調理
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「能力値が最高まで行ってない?」
「可視化上限が低すぎるせいだな。上げてみるか。
……それよりもアルバ、お前の耐性、魅了『一部』無効なのか」
衝撃を受けた。
武術大会では『魅了の妖精』の全力を受けても、ものともしなかったのに……一部無効で耐えたなんて、信じられない。
シャグマはしかし、納得したように笑っている。
「君の魅了は耐えられないんじゃない?
いつもみたいに煽ってみなよ。状態異常が付いたりして」
「アルバ」
「やめてくれ」
恥ずかしそうにしているが、彼の前を飛ぶと、両手でスカートを下着が見えるギリギリまでめくり、上目遣いで見つめる。
いやらしい仕草をたくさん目に焼き付けてから彼の頬に口づけを送ると、耳元まで飛んで囁いた。
「帰ったら、いっぱいする? アルバのかっこいいところ見たら、また赤ちゃん欲しくなっちゃうかも」
耳まで真っ赤になったアルバの能力を問答無用で、権限で開く。
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【冒険者名】アルバ
【職業】剣士
【レベル】68
【状態異常】魅了
【能力値】
生命力1564
精神力1368
筋力125
体力105
俊敏103
知恵57
器用52
幸運31
【耐性】
魅了(一部無効)
【職業技能】
痛打 連続切り
【特殊技能】
気配感知 方位感知 距離感知 登攀 集中 全武器装備可能 全武器使用可能 調理
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「楽しいな! 私だけ魅了できるのか」
「アルバもラフィネルには弱いなあ、まんまと魅了されちゃうかぁ」
「後で覚えていろ」
冒険後に何をされるかはわからないが、とにかく今楽しいからいいのだ。結局夫といちゃついたところで、私に損はない。
ちなみに魅了は全ての能力が一時的に下がる効果を持たせた。下がってこの能力値なのだから、恐ろしい男である。
「君は能力確認できないの?」
「ない。その代わりなんでもできる。冒険中の不具合も順次直すからな」
「俺に特殊技能をくれたりも出来るの?」
「出来るぞ。冒険中だけになるだろうが、それでもよければ」
そう言いながら、シャグマの能力を見直した。
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【特殊技能】強制絶頂(使用可能)が増えました。
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「何この馬鹿っぽい能力」
「お前っぽくないか」
いつも酷い目に遭わされるのを表現してみた。こちらの元放蕩王子は器用で夜伽も上手なのだから、持っていてもおかしくない。
「まあいいや。使用可能、って書いてあるけど、使い方は?」
「対象を見つめて、『技能使用』と言いながら能力名を口にすれば良い。ほらほら、言ってみてくれ」
恥ずかしくて言えまい。
ほくそ笑んでいると、シャグマが私をじっと見ながら、不意に口の端を上げた。
「『技能使用 強制絶頂』」
とりあえず酷い目にあった。
ふらふらと力なく飛ぶのを、私と同じくらい赤くなったアルバが優しく受け止めてくれる。
腰が抜けて足が動かないので、遠慮なく手のひらの上に横たわった。
「俺が恥ずかしがるとでも?」
「君の下着を見ようと、最初に恥ずかしげもなく捲ってくるくらいだ。
楽しい冒険の技能と思えば、使ってくるだろう」
恐ろしい相手に、恐ろしい技能を授けてしまった気がする。
親指を枕に横たわっていると、ようやく息が整ってきた。
「と、とにかく、冒険だ。
何が出来るかは教えたから、まずは北の町に行ってみよう」
「そうだな、このまま平原にいても何も起こらないだろう。
忘れそうになったが、妖精のお姫様を救うためにも、早く進もう」
「……ところで、竜に攫われたお姫様って君じゃないの?」
「名前だけ同じ人形だな。
流石に私の似姿のものが竜の花嫁として手に落ちているのは、お前たちも気分が悪いし複雑だろうから、そこは配慮した」
「納得」
うちの夫たちの愛が深いのは知っている。
妻の似姿であっても竜に攫われた、なんて状況を長く放置しておけないだろうから、気にしないように配慮している。




