4.異星にひとり おまけ:文系ピープル向けの科学的な何か (2)地球は現在天の川銀河のどのあたりにあるか
その夜、美希はこの場所が確かに異星であることを知った。
電力に余裕があるとわかったので、玄関の前に椅子を出して空を見上げてみることにした。波音を聞きながら生暖かい夜風を受ける。念のために防虫スプレーも使った。
夜空の星の数は見たこともないほど多い。天の河も見える。街の明かりが届かない山中や洋上ではこんな風に見えると聞いたことがある。うっとりと一等星を探して星座の線を描こうとした。だが、北を見ていると思うのに、北斗七星のヒシャク型が見つからない。向かいにあるはずの目立つW字型、カシオペイアもない。あわてて全天を見回そうとするが、家の前にいるので60%ほどしか見渡せない。
「マジこれ? もしかして本当に異星?」
そう、そこは“本当に”異星だったのだ。呆然として寝室に入り、そのままうとうとと眠った。そして深夜、衝動に駆られて再び空を見上げた時、そこにはふたつの月が輝いていた。
「うわー、おかあさん、どうしよう。ここ、地球じゃないみたいよ」
困った時の美希の癖だ。つい返事を求めて亡くなった母に呼びかける。
M:アイザック、深夜にすいません
A:問題ない
M:空に、月がふたつあるのです
A:その衛星の命名権はミキにある
あまりといえば、あまりの返事ではないかと思うが、却ってそれが真実であることがジワリと身に染みた。慌てるな、ここがどこであろうとも日本のマンションに帰ることは契約で保証されているのだ、と自分に言い聞かせる。
M:え、はい、それは考えておきます
月がふたつあると、潮の満ち引きが複雑になるのでしょうね
冷静さを装うと、質問も変になるのだろう。こんなこと聞いている場合じゃないのに、と思いながらも、指がたどったキイはどちらかといえば今現在どうでもいいような内容ではあった。
A:およそ同じ大きさに見えるだろう? だが距離が違う
遠くにある方の大きくて近くにある方はより小さい
ふたつの衛星は軌道もずいぶん違うのだ
ちょうどミキが見たように同時に見える時には影響力が増すだろうね
M::そうでしたか。あまりに驚いて、深夜に突然連絡してしまい、
申し訳ありませんでした
A:問題ない
M:はい
A:もう一度寝てはどうか
M:ええ、アイザック、ありがとう
A:私にはよくわからないことだが、君達はひとりでは寂しいと思うのだろう?
M:ええ、確かに
A:いつでも話しかけてよい
M:アイザック、優しい方なのですね
A:こういう時、君達は“お嬢さん、オレに惚れるなよ”
とか言うのではなかったかね
M:まあ、アイザック、うふふ、ありがとう、気分が明るくなります
A:そうか、私の学習方向はこの場合正解か
M:正解です、ハードボイルド系のラブストーリーをお読みになったのですね
A::ああ、あれはラブストーリーというのだね
君たちには男性体と女性体があるのだからね
M:アイザックにはないのですか?
A:さあ、どうだろう、というのが正解かね?
M:そうです、すごく勉強したのですね
A:ミキの言うように、仕事だからね
M:うふふ、ではまた、朝に
読んでくださっている文系ピープルに、SFを楽しんでいただくためのツール~、その2
銀河系は、ちょっと現実感がないほどのスピードで回転しているし、地球は銀河を2億年以上かけて周回している:短いタイトルは、地球は現在天の川銀河のどのあたりにあるか
地球は、天の川銀河という名前の銀河系にあります
渦巻状銀河で、常にチョー高速で回転しています
もともと密度に差があるうえに、超高速で回転しているため、中身に偏りができる(というのは文系向きのわかりやすい言い方)ので、星の密度が高いところと低いところができて、
密度高めの所が「腕」、アームと名付けられています
で、渦巻飴とか、ヴォルテックス(渦)に見えちゃうらしくて(見たことないけど)、渦巻状銀河って種類分けされているらしい
主な腕は、二本で、ひとつが「盾・ケンタウロス・アーム」
もうひとつが「ペルセウス・アーム」
そこからいくつかのアームが分岐しています
太陽系は天の川銀河の中を泳ぐように移動していて、今現在はペルセウス・アームの分岐とされている、オリオン・アーム、という場所にあるそうです。何年先にどこにあるか、なーんてのもAI君がいれば計算してくれるんだって
ちなみに、太陽系が天の川銀河を一周するのに2億2500万年以上かかるそうです
地球にじーっとしていても、銀河一周旅行ができるわけだけど、かなり長生きしてもこのツアーには一部しか参加できないよね!




