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モニター  作者: 倉名依都
14/17

14.美希は決意する


A:ミキ、そろそろ契約が終わる日が来る。

  よくやってくれた。医療の専門家の意見は、他のモニターからも評価が高い

M:ありがとうございます。

  でも、アイザック、集団が孤立した時の心理というのは、研究例が少なく

  十分ではありません。集団を選び間違えると、全滅もあり得ます

A:それについては警告をいくつも受けた

  最初は千人程度の家族を主とした集団にして観察を続け、一万人規模の

  集団へ、最終的には百万人規模とする

M:アイザック、これは踏み込みすぎだと思いますが、何故でしょう

  なぜ一億人もの人類を他の惑星に移すのですか?

A:ミキの疑問はもっともだ

  宗教的な回答というのでよければ、神の指示と言えばいいのだがね

  ミキは納得しないだろう

M:その通りです


A:……。 本来、回答は与えられないと答えるべきだ

  だが

  ナミニアルミネンスマジョリテが、サクヤがアマネとともに

  十年間生活し、共感性ともいうべきものを獲得した、と述べていた

  それがナミニアルミネンスマジョリテの興味を引き、

  このプロジェクトの発動が決定されることになった

  だから、ある程度説明しておこう

M:はい


A:地球は間もなく氷河期を終え、海面が上昇する

  それは惑星にとって呼吸をするように自然なことだ

M:そうですね、それについてはある程度予告されています

A:そのようだ。だが、現在のヒトの数、およそ八十憶を支えきる

  食料生産のための土地が残らないと推定されている

  これにより未来を悲観的に捉える個体が加速度的に増加したり

  極端な宗教的行動を誘発すれば

  ヒト種は絶滅の危機に直面すると判断された

  こういうことは、生命体が発生する惑星なら、よくある

  だから、当該プロジェクトが発動することはほとんどない


A:はい、環境に適応して進化した生物が、環境の変化によって

  絶滅する、それは人類も例外ではない、ということですね

M:そうだ

A:それで、他惑星へと強制移住させて、種の生き残りの可能性を上げよう

  それをナミニアルミネンスマジョリテさまが判断なさって

  実施をアイザックに任せた、そういうことでいいですか?

A:大筋はそういうことだ

  シロサキ・アマネという個体の存在と、その必死の訴えが

  ナミニアルミネンスマジョリテのみならず、情報衛星である

  キュエリ‐リシュラスの演算に働きかけたかのようだった

  ありえないことだがな


M:そうでしたか

  いつかシロサキ先輩にお会いできるといいと思います

  アイザック、お願いがあります

  私を最初の千人に入れてくれませんか

  わたしのモニターとしての経験は決して口外しないと約束します

  また、引き続きアイザックとチャットでレポートします


A:……。了承した。いいのだね、もう地球には帰れなくなる

M:はい

A:そうか、ヒト種と一言に言っても、色々な個体がいるのだな

  ミキとは、いい関係というのを築いてきたということか

M:アイザック、それはとても人間らしい言い方ですね

  アイザックにこういうことを言ってもわかってもらえないかもしれません

  ですが

  私は、地球では寄る辺ない子どもです

  たとえ再びこの惑星に来ても、やはり寄る辺ない子ども

  地球から惑星に送られる一億人を

  静かにサポートするというのは人生として悪くないと思います

  アイザック、あなたとのチャットを通して


A:君が言いたいことはよくわからない

  だが、私について説明する必要がなく、情況を客観的に伝えてくれ

  しかも、それがなぜなのか教えてくれる個体が

  移民集団の中にいるというのは、過去のどんなデータにもない

  多くの存在が注目するだろう

M:よくわかりませんが、それでお願いします

  それに、アイザック

  モニターの中から同じリクエストをする人が必ず現れますよ

  私は予言してもいいです

  今リクエストが出なくとも

  地球に残るモニターとの通信回路は確保していてください


A:そうなのか? ミキから予言などという宗教的な言葉が出るとは

M:アイザックを驚かせることができるとは、名誉なことです!

  いえ、それほど驚くことはないのではありませんか?

  アマネさんは、自分のいる惑星を移住先として推薦しただけでなく

  サクヤさんの制止があったのにこのプロジェクトを支援すると決めたと

  アイザックは言っていたではありませんか

  それでアイザックはふたりの意見を聞いて参考にしているのでしょう?

  現場にいた方が判断しやすい、でしたか?

A:確かにそうだ

  アマネは特別な支援を受けている

  サクヤは知性体として突出して優れた研究者だ

M:おそらくそれは最大の理由ではないと思います

  シロサキ先輩は、ただ、哀しかったのではないでしょうか

  これからヒトが立ち向かう危難を

  共にしようと思ったのではないでしょうか

  何が起こるか知っているのに、それを知りながら

  自分は関係のない顔をして護られているのが嫌だったのでは


A:……そうか

  アマネは、この感情を失ったら、もうヒトではなくなると言った


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