10.アイザックに「米」と「籾」について説明する
M:アイザック、米は精米してあります。精米というのは、
稲という植物の実の、殻と胚芽を取り除いて食べやすくすることです
だから、精米した米を植えても稲にならないんです。
最初に少し籾、籾というのは、稲の実のことですが、
籾があれば、それを育てて種にできますけど、その最初の籾が
A:ふむ。花屋で、種として売っているかね
M:ああ、なるほど、アイザックはそう考えるのですね
私は農業の専門知識はありませんから、確実なことは言えませんが、
今日本で育てている稲は、年月をかけて品種改良を進め、寒冷地でも
育つようにしています。非常に人手も費用もかかっています
米は日本では主食ですし、現在では米の粉でパンも作れるようになって
いますから、品種改良した米は、国家的戦略物資なのではないでしょうか。
農協や研究機関以外で簡単に手に入るとは思えません
A:ミキの言いたいことはわかった
それは、もしかして、麦もそうなのか?
他の国でもそうなっているか
M:わかりません
ただ、麦には大麦、小麦、ハト麦、ライ麦などの種類があります
パン作りに使うのは、粉に挽いた小麦ですから、食料品店では種は売って
いないでしょう
A:これは盲点だった、私の勉強不足だ
他の国のモニターから、これが上がってこないのは何故だ
M:他の国からもモニターが出ているのですか?
A:ああ、ミキを含め十か国から、十人のモニターが、十の惑星に出ている
美希は自分の脈拍が異常値にまで上がっていることに気が付いていた。音声通信でなくて本当によかった。余分なことを言わないで済む。
冷静であるよう努力しよう。動揺を悟らせてはいけない。アイザックにとっては当然の事だから、気付いていないだけなのだ、ここで自分の推測が当たったという表現をしてはならない。アイザックが知る必要のないことなのだ。
いや、こう言う方がいいだろう、アイザックにそれを気付かせてはならない、と。
M:驚きました。でも、ひとりじゃないと知って心強いです
アイザックは、その人達ともチャットしているのですね。
A:そうだ、情報を処理・統合して、プランを改善している
M:本当に大規模な計画なのですね
最終的にどのくらいの人類が送られるのですか?
A:最初は実験的におよそ千人の集団
最終的には各惑星に一千万
それでもたった一億だ。結果観察により二次計画もありうる
M:そうでしたか、責任重大です
A:間違っていない
美希はその日、空に向かってバカヤローと叫ぶ余裕もなく、母の死に直面して不眠症になった時に使って以来、久しぶりに睡眠導入剤を飲んでベッドに潜りこむと、無理やり眠ってしまった。




