私の王子様
『――オレ、おっきくなったらヴィーをお嫁さんにする!だからそれまで、ヴィーのことずっと守る!!』
『――うんッ!約束ッ!!』
私がまだ子供だった頃、白馬の王子様というものに憧れていた。
私はお姫様で、いつか格好いい王子様が私の事を迎えに来てくれるのだと信じて疑わなかった。
――けれど。
いつまで経っても王子様なんて迎えに来てくれなかった。
だから私は、待つのはやめて自分から探しに行くことを決めた。
私だけを見てくれる、一番に考えてくれる、そんな王子様を探した。
――そして、現在。
「エストリーデ!俺はお前との婚約を破棄するッ!そしてここにいるアルヴィーヌを婚約者とするッ!」
私は王子様を手に入れた。
こぼれそうになる笑みを、扇で隠す。
「――殿下、私に婚約破棄される程の落ち度があるのですか?」
エストリーデ公爵令嬢がそう聞くと、殿下の隣の人物が答える。
「――ありますよ。貴女はこのアルヴィーヌ嬢を虐めたというではありませんか。そんな人が王子の妻になれるとでも…?」
「そうだぜ!虐めなんかする奴は人の上に立っちゃいけねェよ!」
答えたのは宰相子息であるレイド。
続いたのは騎士団長子息であるグレイ。
皆、私が籠絡した。
「――はぁ。こうなっては仕方ありませんね。
分かりました。ラルフ第一王子、婚約破棄承りました。」
エストリーデ公爵令嬢は深いため息を一つ吐き、そう言った。
「ふんッ!最初からそう言っておけばいいのだッ!」
「全く。これだから愚鈍な者は…」
「ざまぁみやがれってんだ!」
誰が私の王子様か。
理想の王子を求めた結果、最終的にこの三人が残った。
一人目はこの国の第一王子であるラルフ。
単純というかなんというか、はっきり言えば頭は良くない。籠絡するのは簡単だった。
王子である。この先何が起きても基本的には安泰だろうと思った。
だから選んだ。
二人目は宰相子息のレイド。
ラルフとは頭の良さは雲泥の差だ。
きっと今までかなりの時間を勉学に割いてきたのだろう。
その所為か女性に耐性というものがまるでなく、私でも籠絡できた。
だが私で女性への耐性がついた時、捨てられる恐怖があったから選ばなかった。
三人目は騎士団長子息のグレイ。
とても馬鹿。ラルフ以上の馬鹿。少し褒めれば簡単に籠絡出来た。一緒にいる時間は明るくなれた。
だが、その真っ直ぐさが私には眩しすぎて選べなかった。
王子であるラルフを選んだ時、他の二人にはラルフを選んだことを告げた。
二人とも悲しそうな顔はしていたが、それでもまだ、一緒にいたいと言ってくれた。
好きな人を諦められる様になるには時間が必要だ。身を以て知っている為、強く拒絶出来なかった。
そうして今、この場に味方として立ってくれているというわけだ。
私は物語の主人公のような存在で、これから幸せな未来が待っているんだと。
――そう、思っていたのに。
エストリーデ公爵令嬢が会場から出ていこうとこちらに背を向け歩き出す。
「――少し、待ってください。」
声が上がる。
エストリーデ公爵令嬢が上げたのではない。
声を上げたのはラルフとよく似た顔立ちをして、同じ髪色をした人物。
ラルフの弟でもある、カリウスだった。
「兄上。本当に虐めがあったかもしれないというだけで、婚約破棄をするのですか?」
「それのなにがおかしいというのだッ!お前は俺が生徒を虐めていたとしたら、虐めをする人物など王たりえぬと糾弾するだろうがッ!」
ラルフとカリウスは仲が良くない。修復不可能だ。カリウスにも粉をかけていた時期があったが、腹黒さが透けて見えていた為、ラルフに絞ったのだ。
「確かに私ならそうするでしょう。」
「ほら見ろ!分かったなら口答えするんじゃない!」
ラルフは得意げな顔をしてカリウスを見下す。
その視線を受け止め、カリウスもラルフを見返す。
「――虐めが本当にあった場合、ですが。」
ラルフが言葉に詰まる。
「――な、何を…。」
「証拠はあるのですか?エストリーデ嬢が、アルヴィーヌ嬢を虐めていたという証拠が。
――あぁ、勿論、アルヴィーヌ嬢が言っていただけとかいう意味のないものはいりませんからね。」
「カリウスッ…!言うに事欠いてアルヴィーヌまで侮辱するかッ!そこまで言うならいいだろうッ!」
そしてラルフは話し始める。
曰く、持ち物を隠された。
曰く、言葉遣い、マナー等を嘲笑された。
曰く、影で暴力を振るわれた。
無くなったもの、女子生徒に囲まれたこと、暴力が振るわれたことによる痣。
「極めつけはアルヴィーヌは階段から突き落とされたのだ!幸いにも大怪我に繋がりはしなかったが、これは立派な犯罪であろうッ!」
ラルフは鼻息荒く捲し立てる。
「――ということですが、エストリーデ嬢。身に覚えはありますか?」
エストリーデ公爵令嬢は一つため息を吐いて言う。
「――いえ、ありませんわね。」
「だそうだ。隠す?嘲笑?暴力?目撃者はいるのですか?」
声の上がらぬ会場。
「そこまでのことが起こっていてなぜ誰も見ていないのですか?」
「だ、だが階段から突き落とされたのは見たものが大勢いるぞ!」
「ふむ、では聞いてみましょう。この中にエストリーデ嬢がアルヴィーヌ嬢を突き落とした場面をみたものはいますか?」
「――俺は見たぜッ!」
一人、声を上げる。
騎士団長子息のグレイだ。
「アルヴィーヌが悲鳴を上げて階段から転がり落ちていたッ!いったい誰がと思って階段を登った先を見たら、エストリーデ嬢がいたんだッ!!」
「――ふむ。それで?」
カリウスは恐ろしく冷たい笑みを浮かべながら問う。
「だからぁッ!エストリーデ嬢がやったに決まっているじゃあねえか!」
「――私はエストリーデ嬢が、"突き落とした場面"を見た人物がいたのかと聞いているのですよ。」
「それは…見てねぇけどよ…」
グレイが口ごもる。
「アルヴィーヌ嬢が落ちてきた、落ちてきた先にエストリーデ嬢がいた。アルヴィーヌ嬢が階段を踏み外した場面に"偶然"エストリーデ嬢が居合わせた。
もしくは、アルヴィーヌ嬢がエストリーデ嬢を陥れる為に自分から階段を踏み外した。そう捉えられても仕方がないのでは?」
「――そんなわけがッッ…!」
グレイがなおも言い募ろうとするが、レイドがグレイの顔の前に手を出して止める。
「――確かにカリウス皇子の言う通りです。」
「「レイドッ…!」」
ラルフとグレイの声が重なる。
「二人とも落ち着いてください。確かにカリウス皇子の言う通り、そういった"可能性"はあるでしょう。
ですが、エストリーデ嬢が本当に落としたという"可能性"もあるのではないですか。」
「――その通り。」
カリウスの口角が上がる。
「だから今ここではっきりさせようじゃないですか。
かたや品行方正、学年首席の公爵令嬢、かたや婚約者のいる男性を複数人侍らせ、成績は特筆すべきことのない男爵令嬢。
――どちらが信用に足るのか、を。」
レイドが苦虫を噛み潰したような顔になる。
「――さぁッ!ここにいる皆様にお聞きしますッ!あくまで"可能性"の話となりますが、エストリーデ嬢が落としたと思う方は拍手をッ!」
拍手の出どころは2つ。ラルフとグレイだけ。
「エストリーデ嬢が偶然その場に居合わせた、
――いえ、男爵令嬢であるアルヴィーヌ嬢が自作自演、エストリーデ嬢を陥れる為に敢えて落ちたと思う方は拍手をッ!」
ぽつり、ぽつりと鳴り出す拍手。
その手は増え続け、気付けば会場全てで拍手が起こっていた。
「――どうやら決まりのようですね。」
カリウスは全員には聞こえないような声で、普段は見せないような黒い笑みを隠さずに言う。
「兄上。
――貴方が馬鹿で、助かりました。」
「カリウスゥゥゥッッ!!」
カリウスに飛びかかるラルフ。
「――兄上がご乱心だぞッ!衛兵取り押さえろッ!」
どこからともなく現れた全身を鎧で覆った衛兵。
ラルフは叶うはずもなく地面に組み伏せられた。
それでも暴れようともがくが、何もさせてもらえない。
「さて。兄上はこのあたりでよいでしょう。残すはあなた達の処分ですが――」
「――わ、私はアルヴィーヌ嬢に騙されていただけですッ!」
そう言い放ったのはレイドだった。
「怪しいと思っていたからこそ、考えを改め、拍手をしなかったのですッ!」
「そうですか。秀才と呼ばれる貴方にそう思わせられるとは、やはり私が正しかったようですね。」
顔に汗を浮かべ必死に弁明するレイド。
「えぇ!やはりカリウス殿下こそ王の器たるに相応しいです!」
そしてそんなレイドを一瞥するカリウス。
「――もし私が王になったとしたら、すぐに人を裏切る貴方のような人物を重要な役職に置くことなどありえませんし、そもそも必要ありません。
――貴方を宰相にするなど、ありえません。」
「そ、そんな…」
「お、俺はどうだッ!アルヴィーヌ嬢に騙されていたけど、それに気付いてもアルヴィーヌ嬢を裏切るのは騎士道に反すると思ったからこそ!拍手をしたんだッ!」
項垂れるレイド。
そんなレイドを尻目に自分をアピールするグレイ。
「確かに裏切ってはないですし、騙されたというのも貴方なら信じましょう。」
「――な、ならッ!」
カリウスの言葉に笑顔になるグレイ。
「――貴方の言う"騎士道"とは何ですか。」
「は…?」
わけが分からないといった顔をするグレイ。
「騙されていた、裏切っていない、それを理由に一人の女性を見捨てるのが貴方の言う騎士道ですか。」
「いや…そんな、つもりは…」
「そんなつもりがあろうが無かろうが、貴方のしたことはそういう事ですよ。
そして、そんな最低な騎士道を持つ貴方が騎士団長になったとして、誰が従うのですか?」
元気なことが取り柄だったのに、俯き何も発さなくなったグレイ。
「最後は貴女ですよ。アルヴィーヌ嬢。」
会場の視線が全てこちらを向く。
「いやね、私はこれでも貴女を評価しているんですよ。脇が甘かったとはいえ、一国の王子、宰相子息、騎士団長子息を陥落させた手腕は見事の一言に尽きます。令嬢ではなく、娼婦にでもなっていれば歴史に名を残せたかもしれたのではないかと思う程ですよ。」
会場からは失笑が漏れる。
中には下卑た視線を向けてくる男もいる。
「おっと、失敬。まぁ貴女の特筆すべきはその状況把握力、とでも言いましょうか。成績は特筆すべきものはないと言いましたが、相手の望む言葉、行動、そして今、自分が何をすべきかを推し量る能力というのは飛び抜けていると思いますよ。
現に今、王族の私から許可されるまでは発言出来ないと考え、一言も発していない。」
カリウスも私も似た者同士なのだろう。
私が向こうの考えていることが少し理解できる程度に、カリウスも私の考えを理解しているはずだ。
睨む。カリウスを。
それを受け余裕の笑みを浮かべられる。
「――いいですよ。発言を許可します。最後に何か言いたいことがあるならどうぞ。もうなにも、変わらないとは思いますが。」
いつだってそうだ。
白馬に乗った王子様なんていないのだ。
自分で戦うしか、ないのだ。
背筋を伸ばす。
カリウスを、正面に見据える。
雰囲気が変わり驚いた顔をする周囲。
いいじゃないか。最後に少しくらい、足掻いてみたって。
笑われようが、罵倒されようが、私はただ、私自身のために。
「――エストリーデ様。良かったですわね。ラルフ様と婚約破棄が叶って。」
ピクリと反応をするエストリーデ公爵令嬢。
「――どういう事ですの?」
「分かりますよ。エストリーデ公爵令嬢、いえ、公爵家がラルフとの婚約を破棄したがっていたことくらい。」
目を見開くエストリーデ公爵令嬢。
「貴女は私が現れたのをいいことに、ラルフを私に押しつけようとした。そしてラルフの有責で婚約を破棄しようと計画した。」
「――何を、馬鹿なことを。」
「だってそうでしょう。毎回私の物が無くなったり、困っていた時に必ず鉢合わせるラルフ。聞けばほとんど貴女か貴女の取り巻きの方に頼まれ事をされたって言うんですもの。」
私なんかが、そこまで頭を回すわけないと思っていたのかもしれない。
「でも、感謝してるんです。問題を起こしたとて王子は王子。ラルフと一緒になれば恐らく今後、生活には困らなかったと思います。
まぁ、ラルフからの決定的な一言が欲しかったのか、事情は分かりませんが、階段から落とされた時はびっくりしましたが。」
王命であった婚約は基本的には破棄することなど出来ない。
だからこそ、少し強引な手を打ったのかもしれない。
エストリーデ公爵令嬢は少し申し訳なさそうに目を伏せる。
「ようは既定路線だったんです。この婚約破棄は。だからこそエストリーデ公爵令嬢も破棄された時、自分への非があるかどうかの理由だけ聞いてすぐに引いた。」
改めてカリウスと目を合わせる。
その瞳が映すのは困惑。
「だからカリウス殿下。貴方のしたことは、余計なお世話でしか無かった。」
「――そんな…馬鹿な…」
困惑するカリウスを尻目に言葉を続ける。
「好きな人を手に入れる為に何でもする気持ちは分かりますが。」
「な、な、何をッ――」
動揺した時の反応は兄弟一緒だ。
なのに、どうしてこんなにも性格は違ってしまったのだろう。
「欲しかったんでしょう?エストリーデ公爵令嬢が。
兄を蹴落とす為、私を断罪するため、そんなものが理由な訳じゃなく、ただ単にエストリーデ公爵令嬢と一緒になりたかった。だからこそ、この事態を引き起こした。」
「ち、違うッ!そんなことはないッ…!」
そう言いながらエストリーデ公爵令嬢の方を気にするカリウス。
答えを言っているようなものだ。
「――まぁ、最後に何か言いたいことがあればどうぞというなら、欲しいものを手に入れる為に何でもする気持ちは分かりますが、それが手に入らないからといって、その人の私物を盗んだりする気持ちは、私には分かりかねますね。」
誰のだろう。ヒュッと息を呑む音がした。
「黙れ…!」
「ラルフ達に好きになってもらう為、色んな場所や時間で動いてました。そうしていると誰もいない教室でコソコソしてる人なんかを見ることもありました。」
「黙れッ…!!」
「何に使うのか知りませんが、嬉しそうに頬ずりなんかした後に、自分の懐にしまうなんて――」
「黙れえええええええぇぇッッッ!!!」
激昂するカリウス。
高まる魔力。
こちらに向けられる手のひら。
――あぁ。これはもう、駄目だ。
迫る炎を前に、まるで世界は止まっているかのようだった。
これが走馬灯ってものなのかな。
目を瞑る。
いい人生なんかじゃ無かった。
愛も、希望も、期待も、何も無かった。
でも、初めから持って無いと嘆くのは違うと思った。
だから、求めた。探した。
自分の力で。
でも、ここが限界だったんだ。
――そうして、諦められたら楽だったのかなぁ。
死にたくない。
死にたくないけど、
祈ることなんてしない。
王子様なんて来ないから。
『――オレ、おっきくなったらヴィーをお嫁さんにする!だからそれまでヴィーのことずっと守る!!』
『――うんッ!約束ッ!!』
――でも。
――それでも。
「――助けてよ…。」
動き出す時間。
響く轟音と衝撃。
生温かい液体がかかる感覚と鉄の匂い。
どのくらい経ったんだろう。
一向に来ない痛み。
痛みを感じる暇もないくらい一瞬の事だったのか。
いや、それならどうして考えるなんてことができる?
手を握りしめてみる。
動く。
足踏みをしてみる。
動く。
恐る恐る瞼を開ける。
周囲は魔法の影響か、煙が立ちこめていた。
徐々に晴れる煙。
目の前には私を護る様に鎧が立っていた。
それはラルフを抑えていた衛兵の一人。
衛兵が兜を取る。
特別整っているわけでもない普通の顔立ち。
昔と変わらぬ無愛想な顔と、声で、彼は言葉を紡ぐ。
「――待たせて、ごめん。」
王子様なんて、いないはずだ。
「――今更、今更ッ……!
遅いのよッ…!馬鹿ァ…!!」
それは私がずっと前に諦めた恋。
私が求めた王子様。
子供の頃から一緒だった彼と離れなければならなかった時、一緒に逃げてほしいと、連れ去ってほしいとお願いした。
でも彼はそうはしなかった。
だからもう期待するのは止めたのに。
「ヴィーとの約束を守るため、やっと、学園の衛兵になれて、貴女に近づけたと思った。だけど、貴女はもう、王子達と仲良くなっていた。だから、諦めていた。」
護ってくれた衝撃で忘れていたが、確実に血は流れていたはずだ。
私のじゃないなら誰の――
「貴方ッ…!腕がッ…!!」
見れば鎧は溶け、露出した肌には酷い火傷を負っていた。
もう剣を握ることも叶わないかもしれない。
彼は首を横に振る。
「いい。この腕一本で、ヴィーを手に入れることが出来た。
誰かを手に入れる為、欲しいものを手に入れる為には何でもする。
――それは俺も、同じだ。」
彼は私に近づき首に手を回してくれ、と言う。
少し恥ずかしかったが、しっかりと手を回す。
そしえ私の腿の裏の辺りに手を通して片手で私を持ち上げる。
俗に言うお姫様抱っこと言うやつだ。
「しっかり、掴まっていてくれ。片手だと、不安定だ。」
そしてそのまま外に向かい歩き出す。
「ま、待って!まだ、周りが――」
ピタリと止まる足。
そして私の眼を見をじっと見つめる。
「――俺は、ヴィーを、連れ去りに来た。だから、周りの事は、知らない。」
そしてまた歩き出す。
こんどは止まらず、振り返らず。
壊れた様に笑うカリウスの声だとか、他にも被害を被った生徒の悲鳴だとか、そんなものは気にせず進む。
「ヴィーは、まだ、約束、覚えてる?」
子供の頃の約束だ。
覚えていないほうが当たり前なのかもしれない。
『――オレ、おっきくなったらヴィーをお嫁さんにする!だからそれまでヴィーのことずっと守る!!』
『――うんッ!約束ッ!!』
でも、覚えている。
ずっと心の片隅に留めている。
だから頷く。
そして恥ずかしさから上気する頬を見られたくない為、目を逸らして言う。
「守ってもらう約束と、もう一個の方も絶対破らないでよね…!」
「――うん。」
さっきまでの出来事を忘れるくらいの平和な時間。
物語に出てくるような王子様と比べると、平凡な顔つきだし、身分だって高貴でも何でもない。
白馬にだって乗っていない。
ただ、他の誰よりも私の事を考えてくれて、一番に想ってくれる。
「でもそんな事言ってないでまずは病院に行きなさいよねッ!!」
――私だけの、王子様。




