双子と王立学園 7
王立学園の研究室は、すでにラランテスらしい部屋になっていた。
天井から下がっているのは、四属性の魔石だろう。色鮮やかで、照明の代わりになるくらい美しく輝いている。
金色の魚はあいかわらず紫色の溶液の中にいるし、七色の糸でできた蜘蛛の巣は以前見た物よりもさらに大きくなっていた。
――部屋の中ではキラキラ、シャラランとあいかわらず不思議な音が響き渡っている。
「やあ……ロイフォルト伯爵。久しぶりだね」
「ええ、お久しぶりです」
「職場が変わった途端、他人行儀じゃないか」
「そうでしょうか」
あいかわらず、ラランテスとフェリオの距離感はよくわからない。
お互いを信頼し合っているのだろうが……。
「ラランテス先生」
「メリッサ君、挨拶が遅れたね。実は王立学園に所属することになってね」
「心強いですわ」
ラランテスが王立学園に所属したのは、ルードとリアのためではないか……メリッサはそう感じた。
事実、フェリオ不在の三年間、ラランテスは家庭教師としてだけではなく、護衛としてロイフォルト家に通ってくれていたのだ。
「――あの、ルードとリアのために価値のある物を頂戴いたしまして」
「礼は不要だ。材料費のほとんどはロイフォルト伯爵が提供した物で、ルード君とリア君が使ってくれることで初めて研究データを得ることができる。私にとっては利点しかない」
「……そうですね」
メリッサは、そう答えながらもラランテスが光と闇の魔力を打ち消す魔道具を譲ってくれたことにいつか恩返しをしなくてはいけないと考えた。
ラランテスはいつもそうだ……研究だといいながら、メリッサや双子を守ってくれる。
「う~ん……私は危ない橋を渡ることも多いから、ロイフォルト伯爵……メリッサ君をよく見張って無茶なことをしないようにしてくれたまえ」
「ええ、何かあったときには妻ではなく俺が恩返しするでしょう」
「真面目だな……真面目でむず痒い」
ラランテスは、口の端を片側だけつり上げると四人に背を向けてしまった。
彼はそう言いながらも、嫌がってはいないようだ。
「さて、入学早々ルード君とリア君は注目を浴びた。このあとは、細心の注意を払うように」
「「承知しました」」
「フィアーレ公爵家の令息や第三王子殿下も君たちと同じクラスに所属になる……。くれぐれも、光と闇の魔力だけは隠し通すように」
メリッサはフェリオに視線を向けた。
ルードとリアも真剣な表情を浮かべ頷いた。
魔術精霊主義の筆頭であるフィアーレ公爵家の令息が同じクラスであることを知らなかったのは、メリッサだけのようだ。
――今回も情報収集が不十分だったわ……まだまだね。とメリッサは反省する。
ルードとリアは、時々王太后ローザ・フレデリカに会いに行っている。
そのときに、情報を得たのだろう。
メリッサは、今後は貴族夫人のお茶会に積極的に参加しようと心に決めた。
彼女は気がついていないが、気合いを入れる様子をラランテスやフェリオ、双子は心配そうに見つめていた。




