双子と王立学園 6
波乱はあったものの、入学式はつつがなく終わった。
ルードとリアは、会場から出るまでは優雅な歩みだったが、メリッサとフェリオの姿を見るや駆けてくる。
「お父さま、お母さま……」
リアが俯いた。
メリッサは彼女を抱きしめる。
「大丈夫、心配ないわ」
リアは自身の魔力を上手く隠せなかったことを気にしているようだ。
メリッサにできることは少ないだろう。
だが、彼女の心に寄り添うことはできるはずだ。
「ルード、リア。今後もしも魔法を使わねば困難を乗り切れないときは全力で使え」
「お父さま……でも」
メリッサから離れ、リアはフェリオと向き合った。ルードもリアの隣に並ぶ。
「君たちの安全が一番だ。まずは身を守れ。あとは俺がどうにかする」
フェリオはそう言うと、ルードとリアを抱き上げた。
「君たちに、頼ってほしい」
「「はい!! お父さま!!」」
二人はうれしそうに返事をした。
フェリオの笑みは優しげだ。
メリッサまで、フェリオがそう言ってくれるなら、と安堵した。
魔術師団長であり、ロイフォルト伯爵家の当主でもあるフェリオは、力も財力も権力も持つのだ。
それに彼ならば、家族を何としても守るだろう。メリッサはそう信じている。
「私のことも頼りにしてね?」
「「お母さま……」」
ルードとリアが目を潤ませた。
フェリオの腕から降りて、二人はメリッサに抱きついた。
「ありがとうお母さま。でもね、もうずっと守ってもらってる」
ルードが決意を込めた視線を向けながらそう言う。
「大好きなお母さま。私たちにも守らせてね」
リアも真剣な目でメリッサを見つめながらそう言った。
「ありがとう、二人とも」
「もちろん俺も君を守る」
「まあ……」
確かにメリッサは、魔力を持たないから、武力という点ではルードとリアにすら遠く及ばないだろう。
だが、守るとは武力によるものだけではないのだ。
まだ、メリッサは自分にできることは何か、探している段階にしても……。
「ありがとう。私もフェリオ様とルードとリアが大好きよ。愛しているわ」
メリッサがルードとリアを抱きしめながらそう言うと、先ほどのように色とりどりの花弁が三人に降り注ぐ。
マーサとメアリー、そしてダリアが近くにいるのかとメリッサは周囲を探したが、三人の姿はない。
「どこにいるのかしら……」
きっと、これはメアリーの風魔法を使っているに違いない。
いつだって三人は、ロイフォルト一家を見守っているのだ。
花吹雪はまるで『私たちにお任せください』とでも言っているようだった。
花吹雪が消えると、フェリオが声をかけてくる。
「さて、帰る前に寄るところがある」
「そうですね……」
ロイフォルト一家は、会場を去り校舎に向かった。
もちろん、王立学園を新たな職場にした彼に会うために。
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