双子と王立学園 4
入学式はつつがなく進行していく。
保護者席から離れたところに座る子どもたちが、一人ずつ壇上へ上がる。
保護者たちが緊張した面持ちで、我が子を眺めている。
この国では、魔力の量や属性の多い、少ないが子どもたちの将来を決める。
赤子の頃には魔力量が増えることもあるが、六歳くらいになると成人とほぼ同じになるという。
入学式で行われる魔力測定は、重要な儀式なのだ。
「……大丈夫でしょうか」
「魔力の出力調整は練習した。問題なかろう」
よほど強い魔力を持たない限り、保護者たちのほとんどは、子どもたちの魔力属性をこの場で初めて知る。
闇と光という希少な魔力を含んだ複数の魔力属性と、強すぎる魔力を待つことを公に知られないか心配されるルードとリアが特別なのだ。
メリッサは自分が魔力測定を受けるとき以上にドキドキとしていた。
ルードが壇上に上がる。
置いてある水晶に魔力を込めると、はじめ黄色に光り、次に赤く光った。
光はほどほどで、二属性あることで注目されはしたが、騒ぎを起こすほどではなかった。
「良かったわ……」
「そうだな……」
――ちょっと手加減しすぎたかも、という顔をしてルードが壇上から降りてくる。
続いてリアが壇上に上がり、水晶に手をかざした。
そのとき、上から何かがスウッと降りてきた。
「蜘蛛」
手を触れようとした直前、リアの前に蜘蛛が降りてきた。
――実はリアは、蜘蛛が大の苦手なのだ。
「ひっ、く……くくくくくくも!?」
涙目になったリアの手元で水晶玉が、まばゆく青と緑に光った。
――バリンッ。
水晶玉には、大きなヒビが入ってしまった。
直後、ヒビ割れた水晶玉は光を失い、会場は静寂に包まれた。
* * *
水晶玉の不具合で、魔力測定は中断した。
フェリオが急ぎ魔術師団に水晶玉を取りに行き、無事に測定を終えることができたが……。
二回目の測定、リアが手をかざすと水晶玉は青と緑にほんのりと光った。
会場中が、先ほどの光は水晶玉の不具合だったと思った。
だが、ロイフォルト一家は理解している。
水晶玉は不具合を起こしたのではなく、蜘蛛が怖くて全開で注ぎ込んでしまったリアの魔力に耐えきれなかったのだ。
「……気がつかれたな」
「……」
壇上から白い髭を生やした老齢の男性がルードとリアを見つめている。
彼はメリッサやフェリオが学生の頃からおじいちゃんであった。
「学園長はお変わりありませんね……」
「子ども時代に聞いた話に寄れば、父や母が学生の頃から変わらないらしい」
長年学園長を務める彼の年齢は誰も知らない。そんな彼が好奇心に満ちた視線を送るのはロイフォルト家の双子、ルードとリアだ。
メリッサは波乱の学園生活の幕開けを予感するのだった。
* * *
そのあとは入学式は大きな混乱もなく進行した。
学園長が立ち上がり、壇上から皆を見下ろした。
「では、今年度の一年生を担当する教師を紹介する」
一年生は担任制と教科制だ。
ルードとリアが所属するのはAクラス。
入学試験で優秀な成績を収めた子どもたちだ。
幼い頃から家庭教師を付けて学んでいる高位貴族の令息や令嬢が多く所属しているようだ。
担任の教師は眼鏡をかけ、ちょっとボサボサの焦げ茶色の髪をした男性だった。
若そうにも見えるが、なんせ分厚い眼鏡と前髪に阻まれて顔がよく見えないので判別が難しい。
続いて教科担任が壇上に上る。
「……えっ?」
「……ここにいたのか」
そこにはよく見知った顔があった。
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